パリ協定の合意を反映せずに「温暖化対策計画」を閣議決定

~実効ある排出削減計画への改定が不可欠~

2016年5月13日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 淺岡美惠

 本日5月13日、2030年までの国の温暖化対策をまとめた「地球温暖化対策計画」が閣議決定された。「京都議定書目標達成計画」の計画期間終了後の2013年以降、政府の計画がないまま3年の歳月が流れていたが、今回その空白期間にようやく終止符を打つことになった。しかし、決定された計画は、パリ協定がめざす「気温上昇1.5~2℃未満」と整合しない不十分なものであり、改定が必要である。

 近年は、地球平均気温が観測史上最高を記録する年が続いており、北極海の海氷やグリーンランドをはじめとする各地の氷河が大規模に溶け、世界各地で集中豪雨や洪水、熱波や干ばつなどの被害が報告されている。この危機に対して、昨年のCOP21パリ会議では「パリ協定」が採択され、世界のすべての国が「1.5~2℃目標」や2050年以降温室効果ガスの排出を実質ゼロにする長期目標に向けて対策を強化し続けることを約束した。世界第5位の排出大国である日本がやるべきなのは、このパリ協定の含意を踏まえ、脱炭素化のための長期的な道筋を描き、実施していくことである。

 しかし、残念ながら今回決定された計画は、2050年80%削減という長期目標や排出量取引の検討はかろうじて保持したものの、大排出源である産業界の自主行動計画を従来通り推奨し、原子力や化石燃料(特に石炭)に偏重するエネルギー政策を追認した、時代錯誤で不十分な内容である。パブリックコメントでは、市民から、「温室効果ガス排出削減目標を引き上げるべき」、「石炭火力発電への規制を強化するとともに、省エネルギーや再生可能エネルギー普及策を強化すべき」、「2014年度は原発利用率ゼロにもかかわらず近年で初めて国の総排出量が減っている。原発なしで温暖化対策を進めることは可能であり、そうすべき」などの意見が多く提出されたが、これらの意見は全く反映されていない。気候変動対策に反対してきた経済団体の意向を踏まえた本計画は実効性に乏しく、継続的な排出削減が困難であるばかりか、再び排出増加に転じる懸念すらある。さらに、再エネが爆発的に普及し、排出量取引制度などによって脱炭素のグリーン経済が広がる世界において未だに化石燃料に拘泥する日本は、今後ますます孤立し、巨大なビジネスチャンスを失うことになる。

 今後は、早期にパリ協定を批准し、気候変動・エネルギーの法制度の骨格を見直し、2030年目標を「1990年比40~50%削減」と引き上げるとともに、その達成を担保する石炭火力発電規制、温暖化対策税の抜本強化、キャップ・アンド・トレード型排出量取引制度の導入などに向け計画の改定が必要である。

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