2025年11月22日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
ブラジル連邦共和国のベレンで開催されていた国連気候変動枠組条約第30回締約国会合(COP30)は会期を1日延長した11月22日(現地時間)に閉幕した。
COP30は、各国が2035年の排出削減目標を含む次期NDC(国が決定する貢献)を提出、あるいは強化するための機運を高めることができるかが課題であった。また、緩和の分野においては、化石燃料からの脱却に向けたロードマップ、及び森林保全・回復のロードマップ策定が合意されるかどうかが注目を集めていた。
次期NDCについては、これまでに122ヵ国が国連に提出したことが報告されるとともに、提出してない国は可能な限り早く提出するよう呼びかけられた。1.5℃目標達成のために残されたカーボンバジェットがわずかであることや一時的なオーバーシュートにも触れられた。これらを踏まえ、対策実施強化のために、議長イニシアチブの“Global Implementation Accelerator”や“Belém Mission to 1.5”の立ち上げが決まったが、その実効性については今後の課題である。
化石燃料からの脱却に向けたロードマップの策定についても、最終的に合意文書に盛り込まれず、当初期待されていたような、化石燃料からの脱却を大きく進展させる合意とはならなかった。しかし、今回の合意は、化石燃料からの脱却が合意された第1回グローバル・ストックテイク(GST)からの積み重ねであることが記載されている。多くの締約国から支持されていたにも関わらず、結果として化石燃料からの脱却及び森林保全・回復のロードマップ策定のいずれも合意できなかったが、別途、議長が両ロードマップ策定に取り組むことを約束した。
各国での脱化石燃料の動きは確かに広がりを見せている。このCOP期間中に石炭火力設備容量が世界第7位の韓国、産油国であるバーレーンがPPCA(脱石炭国際連盟)への加盟を発表し、カンボジアは「化石燃料不拡散条約」イニシアチブへの参加を発表した。また、21日にはコロンビア主導で「化石燃料からの脱却に関するベレン宣言」が発表され、2026年4月に脱化石燃料に関する国際会議を開催することを宣言した。
公正な移行作業計画(JTWP)では、市民社会が要請していた公正な移行の実施を支援するための新しいメカニズムの設立が決まった。また、合意文書に人権に関してこれまでより踏み込んだ記載が見られたり、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」が盛り込まれるなど、移行プロセスにともなう人権問題にフォーカスした内容が合意され、大きな一歩を踏み出した。
日本は2025年2月に次期NDCを提出した。これからNDCの実施にあたって問われるのは、排出削減目標や対策の内容の妥当性である。石原環境大臣はCOP現地での取材に対し、水素やアンモニア活用による脱炭素火力と置き換えることが日本の方針であると答えたと報じられているが、COP28で確認されたIPCCの削減水準に照らしても極めて低い目標である。また、アンモニア混焼やCCSは石炭火力の延命につながり、排出削減効果に乏しいことも国際社会の共通認識となったといえる。こうした対策を脱炭素の切り札とするのではなく、COP30での議論や結果を受け、化石燃料から再生可能エネルギー100%社会への公正な移行を国内外で進めていくことが日本の政府や企業、自治体といったあらゆるアクターに求められる役割であろう。
以上
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