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メコン・ウォッチ
昨日の環境大臣記者会見(注1)において、小泉環境大臣は、海外の石炭火力発電事業への公的支援に関する日本政府の「石炭火力輸出支援4要件(注2)」の方針見直しについて、今年6月までに関係省庁で議論し、インフラ輸出戦略の骨子において一定の結論を得、エネルギー基本計画とも関連づけていく方針を示した。一方で、小泉環境大臣は予てから日本の石炭火力発電事業の輸出について懸念を示してきたが(注3)、関係各省との調整の結果、ベトナムで進められているブンアン2石炭火力発電事業(以下、ブンアン2)は日越首脳レベルで協力の確認がなされた案件であるため、公的支援が実施されるものとの認識を示した。そして、その認識をすぐさま反映するかのように、同日、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)がブンアン2の環境アセスメント報告書等を公開し、支援の検討に入っている(注4)。これまで本案件の問題提起をしてきた私たちは、4要件に係る議論も、気候危機の回避に向けた誠意ある議論も尽くされぬまま、JBIC・NEXIが支援の検討に入ったことに強く抗議する。
注1:
小泉環境大臣会見、令和2年2月25日<https://www.youtube.com/watch?v=zL69YyEAK30>
注2:
第5次エネルギー基本計画に記載されている石炭火力輸出に関する4要件: 1. エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国、2. 相手国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合、3. OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合、4. 原則、世界最新鋭である超々臨界圧(USC)以上
注3:
小泉環境大臣会見2020年1月21日<https://www.youtube.com/watch?v=uZ3c4768RBI>
注4:
<https://www.jbic.go.jp/ja/business-areas/environment/projects/page.html?ID=61715&lang=ja>、及び、 <https://www.nexi.go.jp/environment/info/a/2020013103.html>
共同声明本文
【共同声明】 ベトナム・ブンアン2石炭火力発電への公的支援は許されない
日本政府は計画中の案件も含めた方針見直しを(PDF)
昨日の環境大臣記者会見において、小泉環境大臣は、海外の石炭火力発電事業への公的支援に関する日本政府の「石炭火力輸出支援4要件」の方針見直しについて、今年6月までに関係省庁で議論し、インフラ輸出戦略の骨子において一定の結論を得、エネルギー基本計画とも関連づけていく方針を示した。一方で、小泉環境大臣は予てから日本の石炭火力発電事業の輸出について懸念を示してきたが、関係各省との調整の結果、ベトナムで進められているブンアン2石炭火力発電事業(以下、ブンアン2)は日越首脳レベルで協力の確認がなされた案件であるため、公的支援が実施されるものとの認識を示した。そして、その認識をすぐさま反映するかのように、同日、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)がブンアン2の環境アセスメント報告書等を公開し、支援の検討に入っている。これまで本案件の問題提起をしてきた私たちは、4要件に係る議論も、気候危機の回避に向けた誠意ある議論も尽くされぬまま、JBIC・NEXIが支援の検討に入ったことに強く抗議する。
これまで推進一辺倒であった日本政府が、石炭火力輸出政策の見直しに取りかかるという点は前進の兆しがあると言えるものの、計画中の案件に目を瞑るというのでは、不十分ある。気候危機を回避するためには今後世界中で一基たりとも石炭火力の新設を容認する余地はないという科学の要請と、気候変動の緊急性に向き合ったものではない。日本政府は「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」で、「海外におけるエネルギーインフラ輸出を、パリ協定の長期目標と整合的に世界のCO2排出削減に貢献するために推進していく」と定めているが、これとも矛盾する。
現在計画中の案件を見直すことなく、日本政府が公的支援を付与し、石炭火力発電所の建設の後押しをするならば、日本は依然として温室効果ガスの排出抑制に真剣に取り組む姿勢がないと受け取られるであろう。また、相手国の温室効果ガス排出を何十年にも亘ってロックインすることに対しても懸念を持っていないというメッセージを発信することに他ならず、国際社会の批判は増すだけだ。
ブンアン2について、小泉環境大臣は日越首脳レベルでの協力の確認がされているとするが、例えば2017年6月6日及び2018年5月31日の日越首脳共同声明は、日本の公的金融機関による金融的な支援を約束したものでないことは明らかで、これら合意を前提として公的支援を容認することは根拠を欠いている。
なお、JBICやNEXI、国際協力機構(JICA)など公的機関が支援を検討する際には、環境社会配慮面や経済財務面等に関して独立した審査体制が整備されている。これは、「支援」の名の下に遂行される大規模開発プロジェクト等が現地の環境や住民に負の影響をもたらしてきた事例の反省に立ち、グローバルスタンダードとして備えられてきたセーフガードである。例えば、石炭火力発電所による大気汚染や住居移転・生計手段への影響などに対する回避・軽減措置が適切でなく、各公的機関の環境社会配慮ガイドラインの関連規定が遵守されていない場合、公的支援は行なわれてはならないと規定されている。今回のブンアン2に関する日本政府の姿勢は、こうした公的機関の審査プロセスの形骸化を誘発するものとして大変憂慮される。ブンアン2については、これまでにも環境社会問題が指摘されてきており、JBIC及びNEXI自身がもつ環境社会配慮ガイドラインに則った適切な環境レビューと融資・付保決定判断がJBICとNEXIに求められる。
したがって、気候変動及び環境社会問題の観点から、ブンアン2石炭火力発電事業への公的支援は行うべきではない。
加えて、国内の新設計画を容認せず、既存の発電所のフェーズアウト計画を立案することも、パリ協定に整合した施策として日本が国際的に求められている緊急性の高い行動の一つである。
以上
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