<声明>

気候変動の課題に向き合わないままに国会閉会

~参議院選挙では気候変動対策を主要争点に~

2016年6月1日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

本日6月1日、第190回国会が閉会した。この国会は、化石燃料依存型システムを終焉させて脱炭素社会の構築を目指す「パリ協定」に世界が合意した翌月に開会された。日本でもこの歴史的合意をふまえ、国会では抜本的な政策転換に向けて重点的に議論が行われるべきであったが、非常に残念なことに、今国会で審議されたのは「地球温暖化対策推進法」の僅かな改正案にとどまり、「パリ協定」を踏まえた法的措置は何一つとられなかった。また、この会期中に閣議決定された「地球温暖化対策計画」は、従来の産業界の自主行動計画の継続を認め、原発・石炭に偏重したエネルギー政策を追認した内容で「パリ協定」とは大きくかけ離れたものとなった。

一方で、気候変動政策の鍵ともなる再生可能エネルギー固定価格買取制度については、今国会で、再エネの導入量を頭打ちしかねない条件を盛り込んだ改正案が可決成立した。さらに、気候変動を加速させる石炭火力発電所については、この数年で48もの建設計画があるが、環境省は環境アセスメントで「是認しがたい」としていた立場を一転させ、建設計画を事実上容認した。今年5月に行われたG7伊勢志摩サミットでは、G7諸国が脱石炭に向けた政策を次々と打ち出す中で、日本が唯一石炭火力発電を推進して孤立している現状が浮き彫りとなり、海外メディアに大きく報じられることになった。

国会閉幕にあたり、全ての国会議員、そして参議院議員選挙に備える各党、各候補者には、日本の気候変動対策がこのままでよいのかについて再考を求めたい。気候変動のリスクは、環境悪化だけでなく、インフラや経済にも悪影響をもたらすものとして、広く共有されるようになった。国際的には、再生可能エネルギーの導入が加速し大幅なコストダウンが見られ、炭素価格の導入による新たなグリーン経済が構築されてきている。日本の気候変動政策は周回遅れとなってしまった。今年7月の参議院議員選挙では、これからの日本の経済や雇用、そして持続的で豊かな暮らしについて考えるにあたって、気候変動問題の解決をその中心に据え、その解決を図ることを通じて日本の繁栄を考える必要がある。選挙に向けては、以下を含む政策議論を交わすことを要請する。

  1. パリ協定の2016年中の批准と国内法の整備
  2. 2030年中期目標の(現行の「2013年比26%削減」からの)大幅引き上げ
  3. 炭素への価格付け制度(地球温暖化対策税/排出量取引制度など)の導入
  4. 新設の石炭火力発電の規制と既存発電の利用抑制制度
  5. 気候変動対策に必要な情報の開示と政策決定プロセスへの市民参加の確保

プレスリリース(印刷用)

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