気候ネットワークの設立趣意書です。
私たちがなぜ気候ネットワークをつくり、これまで活動してきたのか。
その思いに共感していただければこれにまさる喜びはありません。
特定非営利活動法人気候ネットワ-ク 設立趣旨書
1997年12月に京都市で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において、先進国全体で2008年から2012年までの第1期目標年に、1990年比で少なくとも5%(日本は6%)の温室効果ガスの排出削減を行なうとして京都議定書が採択された。
しかし、条約の究極の目標及び世界の科学者によるIPCCの警告に照らして、この目標数値は極めて小さな一歩であるとともに、排出権取引等の京都メカニ ズムなどについての協議を必要とするものであった。今後、京都議定書の抜け穴を塞ぎつつ、早期発効を求め、第1期目標の達成への取組みを進めていかなければならない。
さらに、将来世代に対する気候変動による悪影響を防止していく地球規模での取組みは、大量生産・大量消費・大量廃棄の20世紀文明から脱却し、持続可能な社会を構築していくプロセスでもあり、京都議定書の採択はその重要な一歩としていかなければならない。
このように、文明史的転換点とすべく期待されていたCOP3で意義ある議定書が採択されるよう市民の側から働きかけるために、日本の広範な市民・ 環境 NGOは連携して、1996年12月1日に気候フォーラムを発足させた。最終的には環境団体だけでなく、女性団体、生協、農業団体、青年会議所など224 の幅広い活動に取組む団体が参加し、多彩な観点から気候変動問題への市民の関心を高め、さらに世界の市民・環境NGOの参加を支えて、議定書の採択に大きく寄与した。
しかしながら、この過程において、私たちの活動は、日本の温暖化防止政策を大量生産大量消費から持続可能な社会づくりへと転換させ、政府にCOP3の成 功へのリーダーシップを発揮させるには至らなかった。また、京都議定書の採択を受けて行なわれた国内法整備はCOP3以前の政府の対応を踏襲するに止まっている。
今後、気候変動問題に関する政策決定過程への実質的な市民参加を高めていくことは、日本の民主主義の進展のためにも焦眉の急といえよう。また、京都議定書の発効に向けての国際交渉では、抜け穴の拡大が懸念されている。
気候フォ-ラムは1998年4月19日、その予定された使命を終えて解散したが、同日、気候フォ-ラムの後継団体として気候ネットワークが発足し、政府の政策の監視・提言並びに全国各地で市民の継続的気候変動問題への取組みを支援するための活動を開始した。
温暖化の悪影響を防止していくためには、100年先の地球環境をも見据えて、広範な市民・事業所の自主的取組みの積み重ねや、これらの取組みを効果的に推 進する国や自治体の制度整備を図っていくことが不可欠であり、ここに気候ネットワークが果たすべき役割は極めて大きいものがある。
気候ネットワークではこれまでも、条約及び議定書交渉の過程や気候変動に関する重要な情報をわかりやすく市民に伝えるとともに、国の温暖化防止政策への 提言を行ない、地域での戦略的取組みを支援するための調査研究を行なってきた。今年4月に地球温暖化対策推進法が施行され、全国および都道府県の地球温暖化防止活動推進センターが設立されるなど、市民活動をとりまく環境も整備されつつある。
ここに、特定非営利活動促進法が制定施行されたのに伴い、特定非営利活動法人として法人格を取得することにより、温暖化防止にむけての市民・NGOのネットワークをさらに拡大し、市民の役割を高めるために、特定非営利活動法人気候ネットワークを設立する。
1999年5月17日