4月12日(火)、気候ネットワークは中国電力が計画している「三隅発電所2号機建設変更計画 環境影響評価方法書」に対する意見書を提出しました。
三隅発電所2号機建設変更計画 環境影響評価方法書に対する意見書
環境影響評価方法書についての環境の保全の見地からの意見
1.石炭火力発電の計画全般について
本計画は、30年以上も前の昭和57年(1982年)に当時のレベルでの環境評価手続きを終えたが、何度も計画の見直しがなされてきたものである。既に運転開始している1号機の計画変更を含め、当初計画と大きく状況が異なってしまっている。
新規計画として、気候変動をめぐる世界情勢が脱炭素化に向かっていることや、人口減少化社会の中において電力過多になっている現状などふまえ、建設の是非を判断しつつ、配慮書から構成される現在の環境アセスメントの手続きをとるべきである。
さらに、高効率の最新技術(USC)の利用とはいえ、天然ガスの約2倍ものCO2を排出し、将来の気候変化へ甚大な影響を及ぼすものである。環境保全の観点から本計画には反対である。
2.石炭種について
CO2排出原単位や総排出量、石炭種など、算出の前提となる情報を明示すべきである。熱効率は(発電端、送電端とも)環境保全の見地から検討するにあたって重要な情報であり、開示すべきと考える。今後、使用石炭種を変える場合、あるいはその可能性があるのであれば、個々について産炭地毎の評価を実施すべきである。
3.二酸化炭素削減の評価手法について
4.2.2「調査、予測及び評価の手法」の第4.2.2-8表に示された「評価の手法」として、他社の発電所計画とまったく同文の「発電所から発生する二酸化炭素に係る排出が、実行可能な範囲で回避又は低減されているか」とあるが、石炭を燃料とすること自体が「実行可能な範囲で回避・低減」できていない。二酸化炭素の排出が大きい石炭を燃料としない方法にすべきである。
4.「パリ合意」との整合性に関する評価について
昨年12月、COP21において「パリ協定」が合意され、地球の平均気温を1.5~2℃未満にすることを目指し、今世紀後半にはCO2排出が実質ゼロとすることが決まった。方法書に引用されている国の削減目標やエネルギーミックスは、「パリ合意」に合うものでもなく、長期目標も示されていないため、今後の見直しが迫られる。
方法書では、「国の『エネルギー基本計画』において、『地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量あたりの単価も化石燃料で最も安い』ことから、『安定供給性と経済性に優れた重要なベースロード電源』と位置づけられており、その開発意義は十分にある」と、国の方針を根拠に事業を推進しているが、「パリ協定」をふまえた観点からも、事業者として、環境リスクのみならず、事業リスクもふまえるべきである。評価の手法には、「パリ協定」の内容の観点からも計画を、撤回も含め、見直すべきである。
5.水銀の複合的周辺環境影響について
水俣条約の批准に伴い、石炭火力発電所からの水銀排出が大きな問題となってきている。大気放出については、環境省で規制の方針が検討されている。今後運転を開始する発電所としては、環境保全、汚染防止の観点から、予測レベルと放出削減の方策を明示すべきである。
6.情報公開について
環境アセスメントにおいて公開される資料は、縦覧期間が終了しても閲覧できるようにすべきである。また、期間中においても、印刷が可能にするなど利便性を高めるよう求める。
これについては、環境省が平成24年「環境影響評価図書のインターネットによる公表に関する基本的な考え方」において、インターネットでの公表について「法定の公表期間後であっても、対象事業に対する国民の理解や環境保全に関する知見の共有・蓄積といった観点から、インターネットを利用した公表を継続することが望まれます。」と記述しているとおり、継続した情報提供の必要性を示している。
同書では「インターネットにより公表されている環境影響評価図書の閲覧及びダウンロードに要する 費用は、無料とします。また、法定期間後も継続してインターネット上で公表する図書など、 自主的にインターネットで公表する図書の閲覧及びダウンロードに要する費用も、無料とすることが望まれます。」としているとおり、方法書などの環境影響評価図書のダウンロードを無料で行うことも推奨している。
さらに、インターネットの公表期間を限定し、ダウンロードやコピー機能にも制限をかけているが、地図の引用元である国土地理院は著作権上の問題について「認めるか認めないかは作成者が決めること。承認は必要無い」としており、インターネット上の公開については問題ないはずである。
意見書
三隅発電所2号機建設変更計画 環境影響評価方法書に対する意見書
関連リンク
中国電力プレスリリース「「三隅発電所2号機建設変更計画 環境影響評価方法書」の届出・送付および縦覧・説明会の開催について」(2015/03/10)