プレスリリース
みずほフィナンシャルグループの株主として
日本初の気候変動に関する株主提案を提出
2020年3月16日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
気候ネットワークは13日、日本の会社法に準じて、株主として、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)に対し、気候関連リスクおよびパリ協定の目標に整合した投資を行うための計画を開示するよう求める株主提案を提出しました。気候変動に関する株主提案は日本では初めてのことです。みずほFGは本日16日に提案を受領する見込みです。
気候ネットワークによる株主提案は、みずほFGに対し、同社が賛同する気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に従って、パリ協定の気候目標に整合した投資を行うための経営戦略の計画を開示するよう求めるものです。計画が開示されることにより、投資家は、気候関連リスクを適切に評価し、価格付けすることが可能となります。
現在のみずほFGの融資状況は、気候リスクの管理を行っているとは言えません。特に石炭に関しては、石炭関連産業に関係する世界的な金融機関をまとめた2019年12月のレポートにおいて、みずほFGは石炭火力発電を拡大している企業への世界最大の融資機関と指摘されています。みずほFGの石炭火力開発企業への貸付(全額)は、2017年から2019年までに168億米ドルに及びます。
現在も、ベトナムで計画されているブンアン2(Vung Ang 2)石炭火力発電所計画を含め、みずほFGは、国内外の石炭関連事業のプロジェクトファイナンスに関与し続けています。みずほFGの現行方針は、融資を超々臨界圧発電方式(USC)を採用している石炭火力発電事業に限定するというものですが、実際にはどこででも石炭火力発電事業に資金提供できるような抜け穴があります。
海外に目を向けると、2019年4月に、シンガポールのDBS銀行、オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)などが石炭火力発電事業への支援を中止すると表明しており、さらに新興市場で大きな影響力を持つイギリスのスタンダードチャータード銀行も、先般、パリ協定と整合的に石炭火力発電事業への支援を段階的に廃止することを目指す方針を発表しています。みずほFGはこのような動きに大きく出遅れています。
気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「世界最大の資産運用会社ブラックロックの最高経営責任者(CEO)ラリー・フィンク氏が『気候変動リスクは投資リスクである』と指摘するように、石炭火力発電事業に世界で最も多額の融資をしているみずほFGは、非常に大きな気候リスクに直面していますが、投資家はみずほFGの現在の投資状況を適切に把握できていません。投資家は、みずほFGがいかに気候変動リスクを管理し、どのようにパリ協定の目標と整合的に事業を行おうとしているのかを知る権利があります。」と述べています。
みずほFGは、TCFDに賛同し、国連責任銀行原則(PRB)にも署名しています。気候ネットワークは、みずほFGがすでに賛同しているTCFDの提言に沿ってパリ協定の目標に沿った投資を行う経営戦略を記載した計画を開示するよう、多数の投資家の方々に、株主提案に賛同していただけるようお願いしていく予定です。
株主提案
みずほフィナンシャルグループへの株主提案(日本語PDF)
The Proposal for Mizuho Financial Group(英語PDF)
投資家向け説明資料:みずほフィナンシャルグループへの株主提案(日本語PDF)
Investor Briefing | Shareholder resolution filed with Mizuho Financial Group(英語PDF)
連絡先
気候ネットワーク www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
E-mail: tokyo[@]kikonet.org
担当者:平田仁子
E-mail: khirata[@]kikonet.org
参考資料
気候リスクについて
- イングランド銀行前総裁マーク・カーニー氏は、投資家にとって、企業による気候変動によるリスクの開示は不可欠であると述べている。カーニー氏は「自らがソリューションの一部を担うことで、非常にうまくゼロ・カーボン社会へのシフトを進めている産業、セクター、企業もあるが、遅れている部門もあり、そのような事業者らは損失を被るだろう。」と述べている。さらにカーニー氏は2019年7月のインタビューで「リスク対応をしない企業は間違いなく破綻に追い込まれることになるだろう。」とも述べている。
- 日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者(CIO)は、気候変動を「我々の投資全体に影響を及ぼすシステミック・リスクであり、単なる投資の分散化では排除できないリスクである」と話している。
株主提案の事例
- 気候変動問題についてこのような株主提案が日本で提出されるのは初めてのことである。
- 一方、世界の多くの国では、株主提案は、株主がより多くの情報開示と気候リスク管理への取り組み求める手段として効果的な方法となっている。提案が年次総会で可決されなかったとしても、投資家と経営者に有意義な議論の機会を提供し、気候変動分野においても、株主提案を通じて企業の姿勢を大きく変えることに繋がっている。
以下に事例を示す。
ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell plc):同社は2019年の株主提案によって、気候変動に関する短期目標の実現を目指した取り組みを行うことに合意。これはそれまでの数年におよぶ株主年次総会における決議がもたらした結果。
エクソンモービル株主総会(Exxon Mobil):2017年5月、石油大手エクソンモービル社の総会で、同社の事業に対する気候関連リスクを開示するよう求める株主提案に62%の投資家が賛同している。同社の事業への気候リスクに関する情報開示を求めたもの。
コモンウェルス銀行(Commonwealth Bank):2019年、投資家に強く後押しされた気候関連問題に焦点を当てた株主提案が提出された後、コモンウェルス銀行は、気候リスク分析の一環として、2030年までに一般炭への資金提供をすべて廃止することに同意した。オーストラリアの「4大銀行」のすべてに石炭への貸付から撤退することを促し、気候リスクの開示を改善させた主な要因は、投資家の圧力だった。
バークレイズ銀行(Barclays PLC):今年、バークレイズ銀行は、化石燃料の貸付をめぐり株主からの反対に直面しており、上位25の投資家が5月に予定されている年次総会で株主提案に賛同することを表明している。
ブリティッシュ・ペトロリアム(BP):2019年5月、複数の株主が、BP社の事業がパリ協定の目標にどう整合しているかについての情報開示を求める決議に賛成票を投じた。
J.P.モルガン(JP Morgan):「As You Sow」グループは、2019年に米国の金融大手に向け、気候変動に関する株主提案を提出。銀行は、2020年2月に、北極での石油掘削のための化石燃料融資を終了させ、新しい気候イニシアティブの下で石炭採掘のための融資を段階的に廃止することに合意した。
※米国で進行中および過去の気候変動に関する株主提案は、米国非営利団体CERESのデータベースで検索できます。オーストラリアの株主提案の記録は、Australasian Centre for Corporate Responsibility (ACCR)より入手可能です。