NGO共同声明:明治安田生命の石炭火力発電の新方針、気候変動問題対応への実効性が課題
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
350.org Japan
明治安田生命保険相互会社が、気候変動への影響を考慮し、石炭火力発電所の建設プロジェクト向け新規の投融資を取りやめると明らかにしたとの9月11日の報道(注1)を受け、この問題に取り組むNGOは以下の共同声明を発表しました。
明治安田生命による石炭火力発電プロジェクトに対する投融資取りやめの方針が明らかになり、日本の老舗の生命保険会社三社の方針が出揃ったことを歓迎します。
しかし、今回の同社の石炭火力発電プロジェクトに対する投融資取りやめの方針は、国内外の新規の石炭火力発電所計画を対象としており、従来より10-20%温室効果ガスの排出が少なく高効率とされる超々臨界圧方式(USC)を取りやめ対象から除外しています。このため、結果的に現在国内外で計画が進んでいる多くのUSCによる新規建設計画にはまったく影響を与えず、気候変動の主要な原因である石炭火力の利用削減に対して実効性がないと言わざるを得ません。石炭火力は、最新鋭のUSCであったとしても、最も温室効果ガスを排出する発電方法です。
気候変動対策に関する国際的枠組みであるパリ協定には、「資金の流れを脱炭素化の道と整合させる」旨も明記されていますが、日本の金融機関の取り組みはOECD諸国の中でも非常に出遅れています。第一生命や日本生命の方針から遅れての表明にも関わらず、両生保がUSCの除外に言及していないことと比べて、後退している点は大変残念です。
また、最新の調査では、明治安田生命は国内の石炭火力発電所の新増設計画に関わる上位19企業の株式や債券を国内投資家として約7億3900万米ドル(約823億円)を保有していることが判明し(国内第4位)、むしろ保険会社として非常に重要な機関投資家の役割の中で、新設計画を支えている立場にあると言えます(注2)。
この夏の西日本豪雨災害では多くの命が失われ、猛暑により何千という人々が救急搬送されたこと、これらの事象と気候変動との関連が科学者にも指摘されていることを鑑みれば、人々の暮らしに寄り添う生命保険会社は、石炭火力発電プロジェクトへの融資撤退のみならず、石炭火力発電を計画している企業からの投融資撤退に踏込みこむべきです。私たちは、今後3保険会社やメガバンクをはじめとする日本の金融機関のなかで、「資金の流れを脱炭素化の道と整合させる」ために実効性ある動きが広がることを求めます。
注1:2018年9月11日付の日経新聞オンライン版
注2:350.orgが2018年9月10日に発表した報告書『Energy Finance in Japan 2018 民間金融機関の化石燃料及び原発関連企業への投融資状況2018』