2005年8月17日
地球温暖化防止情報公開訴訟第2弾
東京地裁に大口排出事業所の開示請求!
気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵
本日、気候ネットワークは国に対し、中部及び近畿経済産業局管内を除く非開示の大口排出事業所のうち、12の代表的事業所について、非開示処分の取消と開示の義務付け(改正行政事件訴訟法第3条及び第37条の2)を求める訴えを、東京地裁に提訴した。
東京地裁に、全国の代表的大口事業所のエネルギー消費情報の開示を提訴
地球温暖化による悪影響は既に現実のものとなっている。実効性ある温暖化対策の策定、実施、評価、見直しを継続して行い、その目標を確実に達成するために、主要なCO2排出源からの毎年の排出実態を把握することがまず必要である。
気候ネットワークでは情報公開法に基づき、2004年8月に、省エネ法第1種事業所の2003年度エネルギー消費(熱と電気)に関する定期報告の情報の開示を求め、2005年3月にかけて、全国5037の対象事業所のうち4284事業所(85%)については開示されたが、753事業所(15%)について開示されなかった 。非開示事業所全体で日本のCO2排出量の約4分の1に及び、うち高炉による鉄鋼、石油精製、セメント製造業の上位約80事業所からの排出が19%を占めると推定される。これらの事業所を含む高々200程度の大口排出事業所からの排出が日本全体のCO2排出量の約半分を占めている。
非開示とされた事業所のエネルギー消費情報は実効性ある温暖化対策に不可欠の情報であることから、今後、毎年、事業所ごとに、エネルギー消費によるCO2排出情報が開示されていくためのモデル訴訟として、本年7月29日、近畿経済産業局管内の7事業所についての大阪地裁への提訴及び中部経済産業局管内の9事業所についての名古屋地裁への提訴に引き続き、本日、東京地裁に、その余の経済産業局管内の12の代表的大口排出事業所について、非開示処分の取消と開示を求める訴訟を提訴した。地球温暖化対策の強化は急務であり早期に排出情報が開示されるために、これらの訴訟では非開示の全国753事業所の業種、排出規模、同業他社の開示状況等を勘案して対象事業所を絞ることにしたものである。
温暖化防止への司法の役割は大
各経済産業局が非開示とした理由として掲げるところは、「通常一般には入手できない当該法人の事業活動に関する内部情報であり、当該情報を競合他社が入手し、パンフレット等により生産量等の情報を知りえた場合は、製品当たりのエネルギーコストが類推可能となり、競合他社の競争上の不利益や販売先事業者との価格交渉上の不利益が生じること等が想定され、当該法人の権利、競争上の地位、ノウハウ等正当な利益を害するおそれがあり、情報公開法第5条第2号イに該当する」というものである。
しかしながら、情報公開法による非開示情報とは、競争上の地位が当該情報の開示によって具体的に侵害されることが客観的に明白な場合に限定されるのであり、燃料や電気の使用量からエネルギーコスト等を推測することはできず、ましてや製造コストは類推可能ではなく、競争上の地位の具体的侵害が客観的に明白とはいえない。また、これらの情報は「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」(同法第5条第2項但し書き)であり、開示すべきである。
7月29日のプレスリリースでも指摘したように、製造コストに占める燃料コストの割合が比較的高い業種でも、ほぼ全事業所について開示された業種がある一方で、その割合が低くてもほぼ全事業所が非開示とされた業種もある。このように、今回の各経済産業局の開示・非開示の判断は、事業者あるいは業界の意思によるものといわざるをえない。2005度通常国会で地球温暖化対策推進法が改正され、事業所ごとの温室効果ガスの排出情報の報告・公表制度が導入されたが、ここには事業者の申出によって公表対象から除外するための規定が盛り込まれており、本訴訟は同法の運用にも重大な影響をもつものである。
京都議定書の発効によって、日本は第1約束期間(2008年~2012年)に90年の排出水準から6%削減する法的義務を負った。非開示とされた特定事業所と経済産業省の秘密主義を排し、京都議定書の目標の確実な達成のために、今、司法の役割が問われている。
東京地裁訴訟代理人 弁護士 三宅弘(原後総合法律事務所 TEL 03-3359-5974)他
発表資料
「2003年度省エネ法のエネルギーデータの分析(暫定版)」(PDF 116KB)
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