2002年7月19日
2000年度温室効果ガス排出量発表と
「地球温暖化防止行動計画」破綻確定にあたって
気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵
またもや排出増
本日発表された2000年度の温室効果ガスの総排出量によると、京都議定書対象の6つの温室効果ガス排出総量は基準年比8.0%増加した。CO2排出量は90年比10.5%増加、一人当たり排出量は7.6%増加した。
部門別では、
・発電などエネルギー転換は11%増加(石炭火発の増設などが要因)
・産業部門は1%増加(バブル崩壊・建設縮小による生産減によっており効率は著しく悪化)
・運輸は大幅増(自動車の大型化と輸送割合増加)
・オフィスや家庭も大幅増(電気製品の大型化・保有率上昇、断熱効率の強化なし) となった。
「2000年目標」失敗は政策の失敗
92年に採択された気候変動枠組条約は、「2000年までに温室効果ガスの排出量を90年レベルに戻す」努力目標を先進国に課していた。また政府は90年に決定した「地球温暖化防止行動計画」で、「2000年までに一人当たりCO2排出量を安定化(90年レベルに戻す)」と公約していた。
しかし今回の排出量の発表で、「条約」の目標も「計画」の目標も達成できなかったことが正式に確定した。
破綻の原因は政策の失敗にほかならない。「計画」にあった政策・措置は、道路・原発など各省庁の既存の政策を温暖化対策という名目にして寄せ集めただけのものであり、新しい政策の追加はほとんどなかった。また逆に、石炭火発増加政策などの排出量を増加させる要因となる政策が極めて多く、政策全体の一貫性もなく、また環境政策の位置づけが弱く他の政策が環境の視点から見直されることもまずなかった。計画については過去10年間、定量的レビューも政策の追加もなかった。
「大綱」に引き継がれる、失敗した「計画」の政策
「計画」の政策決定プロセスや内容の問題は、適切なレビューシステムがないため に、98年6月に策定された「地球温暖化対策推進大綱」にそのまま受け継がれ、今年 3月の改定時でもほとんど変更されず継続されている。新しい「大綱」も、産業の自 主計画や家庭の啓発に頼った実効性のない政策のままであり、炭素税や効率規制強化 など実効性の高い政策は先送りされている。
このままでは「大綱」も、10年前の「計画」と同様に破綻してしまうことは明白で あり、法的義務のある京都議定書の目標までも達成できないという国際的に不名誉な 結果を招く恐れもある。
政策の失敗の原因解明と抜本的政策転換を
政府は、2000年目標の破綻が確定した今、破綻要因について十分に検証・総括し、現在の排出増加傾向を一刻も早く変え、国内対策で京都議定書の目標を確実に達成することができるよう、温暖化防止に本気で取り組み、関係する政策を削減効果のあるものに抜本的に改めるべきである。また環境政策以外の政策も温暖化防止の観点から総点検し見直すべきものは見直す必要がある。
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