<声明>
釧路石炭火力発電所の本格稼働に対する抗議声明
2020年12月22日
NPO法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
12月4日、釧路市の釧路石炭火力発電所(釧路市興津)が営業運転を開始すると、複数のメディアが報じました。その後、地元で活動する市民グループ「釧路火力発電所を考える会」によれば、煙の排出状況、石炭の搬入状況などから、実際には石炭を燃やして発電していないだろうとのことでしたが、20日、ついに本格的に動き出したと伝えられました。これを受け、気候ネットワークは、釧路火力発電所の本格稼働に対し、以下の観点から厳重に抗議します。
1)2050年温室効果ガス排出実質ゼロ目標に逆行
菅首相による10月の2050年温室効果ガス排出ゼロ宣言に続き、11月には国会でも衆参両議院で気候非常事態宣言が採択されたばかりです。国連のグテーレス事務総長もパリ協定に基づき1.5℃目標を達成するには、2020年以降いかなる石炭火力発電所の新規稼働も認められないと警告しています。こうした中での新規の石炭火力の本格稼働は、国内外の動きに逆行しているもので、到底認められるものではありません。
2)「アセス逃れ」の非効率石炭火力発電所
同発電所の設備容量は11.2万kWと、国の環境アセスメントの対象となる11.25万kWをわずかに下回る、いわゆる「アセス逃れ」の設備であり、しかもその発電技術は亜臨界圧(Sub-C)の非効率石炭火力です。釧路火力発電所建設事業環境影響評価書(北海道)によれば、輸入バイオマスを30%程度混焼するとしていますが、CO2の年間排出量は51.2万t-CO2にものぼり、地球温暖化の加速に加担するものです。
3)地元住民が不安を抱えたままの本格稼働
同発電所の稼働をめぐっては、12月3日に「釧路火力発電所を考える会」が、商業運転開始に対して反対声明を発表し、(1)近隣の騒音問題の未解決、(2)公害防止協定上の大気汚染物質排出基準値が高く、脱硝装置の未装備や、低い煙突に起因する住民の健康被害、(3)気候変動対策への逆行などを指摘していました。しかし、残念ながら地元住民の声すら聞き入れることはありませんでした。
4)先の見えない不確実なCO2の回収利用固定化(CCUS)
釧路火力発電所の稼働に並行して、釧路コールマインによるCCUSに向けた動きも報じられています。しかし、今、稼働する石炭火力から排出されるCO2に対応するものではなく、釧路火力発電所を動かす理由にはなりえません。CCUSは未だ実証試験の域を出ない不確実な技術であり、排出削減が強く求められる状況において、優先される対応、技術ではありません。今後、数十年にわたる排出を固定化しないこと、稼働させないことが重要です。
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