国会で気候非常事態宣言が可決
1.5℃目標に向け、ただちに気候・エネルギー政策の転換を
2020年11月19日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
本日11月19日、衆議院において「気候非常事態宣言」が採択された。明日は参議院でも採択の見通しとされる。現在、温室効果ガスの排出を主因とする気候変動により、高温や熱波、集中豪雨や高潮の被害など日本においても気候危機のリスクが高まり、私たちの生活や将来世代の環境が脅かされている。すでに日本国内でもいくつかの自治体が気候非常事態を宣言している。なかには、気候危機を訴える市民や若者たちが地方議会に働きかけ、宣言に至ったものもある。対策の前進を望む市民の声、気候変動に対する危機意識は高まっている。こうしたなか、国会としての気候非常事態宣言は、気候リスクを認識し、気候危機を回避するための政策を実現するための第一歩とならねばならない。
これまで日本では、本来実行すべき効果的な気候政策がほとんどとられてこなかった。例えば、中長期目標を法律に定める気候保護政策の法制化は実現されてこなかった。大量に温室効果ガスを排出する産業界は自主的取り組みでの対応に限定され、削減が停滞している。また、炭素税や排出量取引制度など有効性が確認されているカーボン・プライシング政策も導入されていない。エネルギー政策においては、原子力・石炭火力発電をベースロード電源と位置づけ、旧来からの依存を続け推進するなど、気候危機と向き合うことなく、抜本的な政策変更を行うことはなかった。
国会での気候非常事態宣言をもとに、ただちに日本の気候・エネルギー政策を抜本的に見直すことが求められる。第1に、2050年温室効果ガス実質ゼロの目標を、日本が目指す目標として法律に位置づけることである。第2に温室効果ガス削減目標をパリ協定の1.5℃目標に整合する水準へと深堀することである。そのためには少なくとも2030年に1990年比50%削減以上、2050年に排出ゼロを目標として位置付けることが不可欠である。第3に、エネルギー政策を抜本的に見直すことである。原発や石炭をベースロード電源とする古い考え方を止め、これらを2030年までに全廃するとともに、省エネの徹底、再エネ100%への移行を中心とした政策の大転換を行い、エネルギー基本計画に位置付けるべきである。第4に、炭素税などカーボン・プライシング政策を抜本的に強化し、温室効果ガスの削減にインセンティブをかけていくことである。
なお、これまでの気候変動政策は経済産業省の審議会にほとんどが委ねられ、産業界を中心とするメンバーにより検討が行われてきた。また、国会においても政府の不十分な気候政策を見過ごし、十分な議論を尽くさないまま、一部の産業界の意向をうけて重要な政策が決められてきた。今こそ、国会でしっかりとした審議を重ね、中身のある気候変動・エネルギー政策がとられることに期待したい。
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【プレスリリース】国会で気候非常事態宣言が可決 1.5℃目標に向け、ただちに気候・エネルギー政策の転換を(2020/11/19)
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