7月3日、気候ネットワークは、中国電力株式会社が計画している「三隅発電所2号機建設変更計画環境影響評価準備書」に対する意見書を提出しました。

「三隅発電所2号機建設変更計画 環境影響評価準備書」に対する意見書

意見 1:石炭を燃料とする問題
燃料を石炭にすることは、周辺への大気汚染に加え、CO2の大量排出によって気候変動に甚大な影響を及ぼし、施設の稼働そのものが著しく環境を破壊するものである。また、石炭火力発電は今後、気候変動対策の強化や市場動向の変化、再生可能エネルギーなどの他の電源との競争によって採算が取れなくなり、座礁資産となる可能性が指摘されている。2017年1月に関西電力が気候変動対策等を理由に兵庫県赤穂市の火力発電所の燃料を石炭に転換する計画を断念したことを受け、環境大臣がその決定を歓迎し、「石炭火力は将来性に乏しい」として他事業者にも石炭火力発電所建設の再考を促している。
本準備書では将来の中国地方の電力需要は低調な伸びであると見込んでおり、過去5カ年の販売電力量を見ても約600億kWh(2011年度)からには560億kWh(2015年度)に減少している。さらに、40年を経過する経年火力が増えることを本発電所建設の実施理由としているが、建設予定地である三隅には1998年に運転開始した設備容量100万kWの1号機が稼働中であり、少なくとも同エリアには新規の石炭火力発電所は不要といえる。また具体的な発電所の廃止計画は示しておらず、その点でも新規発電所の計画を進めるべきではない。
本計画は、昭和57年(1982年)に環境アセスメントを行ったものの30年以上未着工であった計画である。その理由として中国電力は、電力需要の伸びの鈍化とともに低炭素社会の実現に向けた対応の必要性をあげていたが、パリ協定の発行により脱炭素化の潮流は近年ますます強まっている。
こうした状況からも、時代錯誤な石炭を燃料とする大規模な火力発電所を新たに建設することは 認められない。本計画では運転開始時期を 2022 年としているが、2050 年を超えて CO2排出を固定化させかねない本計画は撤回し、再生可能エネルギーへのシフトを求める。

意見2:LNG 火力及び低炭素社会実行計画における目標値の約2倍にのぼる排出源単位
気候変動対策の観点から見れば、今後建設される発電所は、少なくとも LNG 火力は達成している約 0.35kg- CO2/kWh の水準を満たすべきである。本計画では、USCを採用することによってCO2の排出源単位を低減するとしているが、予測される原単位は 0.767kg-CO2/kWh と LNG の約 2倍にのぼる。ましてこの数値は、約20年前(1998年)に営業運転を開始した1号機の CO2排出源単位0.782 kg- CO2/kWhと比べてわずか2%しか改善しておらず、これを持って「環境負荷の増加は実行可能な範囲で低減されている」と結論づけることはできない。さらに「低炭素社会実行計画」で示された「2030 年度に排出係数 0.37kg- CO2/kWh」とする目標に対しても約 2 倍と大きく上回り、目標の達成を困難にするものである。また、バイオマス混焼を計画するとされているが、燃料や量は未決定であり、CO2削減効果は明らかではない。
このように本計画における排出原単位は非常に大きく、本計画が稼働すれば、年間約 537.7万tもの CO2が30~40年にわたって排出されると見られ、大量のCO2排出を固定化する事業は実施するべきではない。

意見 3:「パリ協定」及び「日本の長期目標」との整合について
2016 年 11 月、地球の気温上昇を 2℃未満にすることを目標とし、今世紀後半にはCO2排出を実質ゼロにすることとしたパリ協定が発効した。本計画では、施設の稼働による温室効果ガス等(CO2)への環境影響を低減するために環境保全措置を講じるとあるが、研究機関 Climate Analytics によるレポートでは、パリ協定の達成のためには、日本は 2030 年までに石炭火力発電所を無くす必要があるとされている。実際に、前田建設株式会社が大船渡市に計画していた火力発電所の燃料に石炭を用いることを先般やめ、バイオマスに変更した理由として「パリ協定」に言及している。
また日本政府は、第四次環境基本計画(2012 年 4 月 27 日閣議決定)において、2050 年に温室効果ガス排出量を80%削減させる目標を掲げている。しかし、本計画が実行されれば、排出は減らず、むしろ増えることになる。
新たな発電所が少なくとも 30年~40年程度稼働することを考えると、「パリ協定」の合意に反し、国の目標とも整合しないため、本事業の正当性は認められない。

意見 4:低炭素社会実行計画について
中国電力は、京都議定書第一約束期間において、原発停止とそれによる火力発電所の稼働増加により目標を達成できなかったとし、また経営状況が苦しいことを理由にクレジット購入による達成も行わなかった。現在は、電気事業連合会加盟 10 社、電源開発株式会社、日本原子力発電株式会社及び特定規模電気事業者有志と共に、「電気事業における低炭素社会実行計画」を2015年7月に策定し、その目標達成を目指すとしたが、未だに排出原単位目標をどのように達成するかを説明していない。本計画では少なくとも天然ガス火力発電の排出源単位から超過するCO2排出分にどう対応するのか明確に示すべきである。それをせずに本計画を実施しようとするのであれ、過去を顧みず、反省のない無責任な態度である。

意見 5 :石炭灰の処理について
本準備書によると、石炭灰はセメントや路盤材に利用する計画としているが、現在1号機からの石炭灰は灰捨て場に埋め立てをしており、その灰捨て場も7割以上埋まっているためかさ上げを行うとしている。このような状況下で本事業(2号機が稼働した場合)によって排出される石炭灰を再利用できるかは疑わしく、廃棄物を大量に排出するだけである。灰捨て場の利用終了年度を平成68年としているが、平成34年に運転開始を予定している本発電所が40年稼働したとすると、灰捨て場の利用期間が終了した後はどうなるのかも示されていない。また、セメント事業者による有効利用を掲げているが、その処理能力は不確実であり、大量に排出される有害物を含む石炭灰の処理は不透明だと言わざるを得ない。

意見6:情報公開について
環境アセスメントにおいて公開されている準備書は、縦覧期間が終了しても閲覧できるようにするべきである。縦覧期間後に非開示とする理由を企業の著作権保護のためというのは理由にならず、一般的な書物で著作権があるからといって開示すらしないなどという書籍はありえない。そもそも環境アセスメントは住民とのコミュニケーションツールであり、できるかぎり住民に開かれたものであるべきである。縦覧期間後の閲覧を可能にするほか、縦覧期間中もコピーや印刷を可能 にするなど利便性を高めるよう求める。
また、環境監視計画で大気中や水中への排出物を測定し、年次ごとに取りまとめて公表するとしているが、その項目にCO2を含むべきである。さらに、排出に関するデータは即時公開するよう求める。

以上

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「三隅発電所2号機建設変更計画 環境影響評価準備書」に対する意見

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