2017年 5月29日
共同声明
市民社会を抑圧する「共謀罪」法案に反対
私たちは、環境・開発・人権・平和などの分野で活動してきた NGO ・市民団体として、いわゆる「共謀罪」法案(「テロ等準備罪」を新設する組織的犯罪処罰法の改正案)は、市民社会を抑圧するものとして強く反対します。
今国会で議論されている「共謀罪」法案は、 277 の罪が対象となっています。対象法案には著作権の侵害や、開発事業に反対する座り込みや労働組合の活動などが対象になることが懸念される威力業務妨害罪他、森林法の保安林の区域内における森林窃盗、種苗法の育成者権等の侵害なども含まれています。これらがテロの防止に関係があるでしょうか?
そもそも政府は、国連越境組織犯罪防止条約を批准するためにテロ等準備罪が必要と説明していますが、この条約の対象はテロではない上、この法がないと条約に加盟できないわけではありません。テロ防止関連条約は既に締結していますし、国内法でもすでに、殺人や強盗、爆発物使用などの着手以前の段階の行為を処罰するさまざまな法律が整備されています。
法案では「組織的犯罪集団」が対象とされていますが、それを判断するのは捜査機関であり、一般市民も対象になり得ます。何が「組織的犯罪集団」か、定義されていないのです。団体の性質が変わった段階で、「組織的犯罪集団」とみなす、との答弁もなされています。捜査機関の拡大解釈を防ぐ準備はまったくなされていません。
私たちは、国内外で、「国家」の名のもとに、環境が破壊され、人権が侵害される事業に関して、警鐘をならし続けてきました。また、福島原子力発電所の事故を教訓として、国策である原子力発電所の海外輸出に反対している団体もあります。このような政策提言は、政府の政策を批判したということだけで、組織犯罪の準備とみなされ、監視される可能性も否定できません。法案が通れば、密告などによって捜査の対象となり、それら団体の社会的信用を落とすことが可能になり、政府機関に対する市民の活動は萎縮させられてしまいます。
私たちだけではありません。「ふるさとの自然を守りたい」--ただそれだけの想いで開発事業に反対し、座り込みをしている住民たちもいます。「共謀罪法」で合法化された警察権力による監視は、こうした人たちの行為をも、情報の恣意的な切り取りにより、「組織犯罪の準備」にみせかけることが可能です。何よりも、罪に問われることを恐れ、政策に批判することができなくなる、そういった萎縮効果が必ずあらわれるでしょう。
世界には、言論の自由が著しく制限されている国や、結社や集会の自由を制限する法を持つ国、軍事政権下にある国もあります。その状況下でも人権問題や環境問題の解決を訴える活動地域の人々は運動を続けており、時には刑法で処罰を受ける場合もあります。このように人権や環境のために立ち上がった市民を支援することが、海外の犯罪者との共謀とみなされ、処罰の対象とされる可能性もあるのです。
また、この法案が成立することで、準備行為を把握するために捜査機関がメールや電話を監視していくようになることも懸念されます。米国では、国家安全保障局( NSA )が一般の国民のメール、インターネット上の情報交換を監視していることが暴かれました。英国の政府通信本部( GCHQ )は、人権 NGO や調査報道を行うジャーナリストを国防上の脅威とみなし、メール等を監視していたことも報道されています。私たちのような市民団体だけでなく私たちと情報や意見を交換する市民・研究者・企業関係者・政府関係者まで監視対象となる可能性もあります。民主的な国家に不可欠な、言論や内心の自由が侵害される恐れがあります。
国際的にも懸念が表明されています。国連プライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏が、 5 月 18 日、共謀罪法案はプライバシーや表現の自由を制約する恐れがあると懸念を示す書簡を安倍首相に送付し、国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関しての情報や、法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうか等、日本政府に情報提供を求めました。
しかし、 22 日、菅官房長官は、これらの疑問に具体的にこたえることもなく、特別報告者があたかも個人の意見を表明したかのように記者会見で述べ、さらには見当違いの批判だと抗議した、とも発言しています。政府は国連の条約に加盟するための法整備を主張しているのに、国連が人権遵守のために任命した特別報告者の担う機能を無視するかのような矛盾した対応です。 私たちは、この危険な法案が十分な審議も尽くされず、衆議院で強引に採決に持ち込まれたことに強い危機感を抱いています。市民社会を抑圧し、民主主義を窒息させる「共謀罪法案」の廃案を強く求めます。
(連名団体)142団体、14か国
国際環境 NGO FoE Japan 、メコン・ウォッチ、ピースボート、アジア太平洋資料センター( PARC )、国際青年環境 NGO A SEED JAPAN 、辺野古リレー、特定非営利活動法人 ふくしま地球市民発伝所、ジュゴン保護キャンペーンセンター、原子力規制を監視する市民の会、美ら海にもやんばるにも基地はいらない市民の会、日本国際ボランティアセンター( JVC )、高木仁三郎市民科学基金、 P-nong Learning Center 、 WE21 ジャパンいずみ、ラムサール・ネットワーク日本、 TPP に反対する人々の運動、エナガの会 戦争しないさせない市民の会・柏、地雷廃絶日本キャンペーン、アーユス仏教国際協力ネットワーク、 WE21 ジャパン、アフリカ日本協議会、 WE21 ジャパン・たかつ、 APLA 、気候ネットワーク、アジア女性資料センター、基地のない平和で豊かな沖縄をめざす会、多文化共生フォーラム奈良、I女性会議、戦争への道は歩かない!声をあげよう女の会、原子力公害に取り組む札幌市民の会、放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会、インドネシア民主化支援ネットワーク、取手革新紺、さっぽろ自由学校「遊」、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、虹とみどりの会、緑ふくしま、ふろむあーす&カフェオハナ、名前のない新聞、太田川ダム研究会、沖縄の高江・辺野古につながる奈良の会、9条改憲阻止共同行動、福島バッジプロジェクト、資料センター《雪の下の種》(イタリア)、広島瀬戸内新聞、親子で憲法を学ぶ札幌の会、TPPを考える市民の会、こおりやま「楽笑村」、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)、日本ソーラーエネルギー教育協会、日本オーガニックガーデン協会、株式会社 きのした、東北アジア情報センター(広島)、火曜朝スタンディング@栃木、脱原発の日実行委員会、基地のない平和で豊かな沖縄をめざす会、八ッ場あしたの会、生命(いのち)を考える福島と鹿児島の会、ユニオン未来、江戸川・生活者ネットワーク、AMネット、民主主義とくらしを考える会、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、水牛家族、高尾山の自然をまもる市民の会、奈良脱原発ネットワーク、安保関連法廃止!市民の集い、春を呼ぶ会、電力改革プロジェクト、東京の水連絡会、さくら・市民ネットワーク、ピースニュース、神奈川の自然と環境を守る連絡会、山ゆりの会、ちくりん舎、江戸川区スーパー堤防問題を考える協議会、NPOごみ問題5市連絡会、高田家、ネットワーク『地球村』、伊万里・有田九条の会、オルタナティヴ・ピース・アクション、井上家、奈良ガイア村、自然の歩、アジア開発銀行福岡NGOフォーラム、関東『地球村』、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)、八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会、一般社団法人 アクト・ビヨンド・トラスト、北限のジュゴンを見守る会、はるさえん、えことぴぃ長崎、公共事業改革市民会議、道路住民運動全国連絡会、高尾・浅川の自然を守る会、公害・地球環境問題懇談会、三陸の海を放射能から守る岩手の会、共謀罪NO! 熊谷の会、ミナセンなかどおり-女勝手連おされ部、不戦へのネットワーク、市民連合@国分寺、ソーラーネット、一般社団法人ワーカーズ・コレクティブぷろぼの工房、ワーカーズ・コレクティブ及び非営利・協同支援センター、グリーンピース・ジャパン、日本環境法律家連盟(JELF)、樹花舎、沖縄とつながる岩手の会、沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志、リニア新幹線を考える登山者の会、国際協力NGOセンター、みどり奈良、小平・環境の会、hanna(ハナ)、ティープラスアルファ、電力改革プロジェクト、Sayonara Nukes Berlin(ドイツ)、自転車スイスイ、WE21ジャパン・ほどがや、子どもの未来を楽しくする会 飯能、WE21ジャパン海老名、いのち未来うべ、Bangladesh Environmental Lawyers Association(Bangladesh), Consortium for Sustainability and Resiliency Inc(Philippines), Episcopal Diocese of Southern Philippines (EDSP)(Philippines), TRIPNET(MYANMAR), Both ENDS(Netherlands), Spirit in Education Movement(Thailand), Thai Volunteer Committee for Fukushima Booklet Translation and Publication (Thailand), Tonle Sap Lake Waterkeeper(Cambodia), Project SEVANA South-East Asia(Thailand), Ecological Alert and Recovery - Thailand (EARTH)(Thailand), Focus on the Global South (Asia), Global Justice Now(United Kingdom)、Friends of the Earth Indonesia(Indonesia)、Thai Climate Justice(Thailand)、Sahabat Alam Malaysia - Friends of the Earth Malaysia(Malaysia)、Consumers Association of Penang (Malaysia)、Oxfam Mekong Region, Legal Rights and Natural Resources Center,.--Kasama sa Kalikasan/Friends of the Earth Philippines (LRCKSK/FoE Phils)(Phillipines )、Center for Environment(Bosnia and Herzegovina), People and Nature Reconciliation(Vietnam)
( 14 か国)
日本、バングラデシュ、フィリピン、ミャンマー、オランダ、ドイツ、イタリア、タイ、カンボジア、イギリス、インドネシア、マレーシア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ベトナム
問い合わせ先
メコン・ウォッチ 〒 110-0016 東京都台東区台東 1-12-11 青木ビル3F
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