<プレスリリース>

COP25に向けて:今、日本がすべきは本腰を入れた気候政策強化だ

2019年11月22日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)の開催が10日後に迫っている。直前にスペインのマドリードへと開催地が変更されたものの、ほぼ予定通りに開催される。今年のCOPは、2020年からパリ協定を本格始動させるため、実施指針で積み残した議題を仕上げるとともに、パリ協定の1.5度目標の達成に求められる水準まで行動を強化し、各国の本格実施に備えることである。

日本政府は、今年9月の国連気候行動サミットで要請された行動強化への取り組みと準備に大きく遅れるばかりか、逆行すらしている。最たる例は、国際社会から厳しく批判を受けながら、石炭火力発電を国内外で推進し続けていることである。気候危機が深刻化し、世界中の科学者が緊急の警告をする中、世界第5位の排出国である日本にパリ協定に整合する行動が求められていることはいうまでもない。会議に出席予定の小泉進次郎環境大臣は、以下の項目につき、COP25で具体的に表明するべきである。

  • 国別約束(NDC)の引き上げへのコミットメント:これまでのCOP交渉から、NDCの温室効果ガス排出削減目標を引き上げて2020年までに再提出することが求められている。目標引き上げは、脱原発を前提に、その水準は、パリ協定の5度目標と整合的に、少なくとも2030年45~50%削減、2050年にネットゼロを明示し、再エネ導入目標も引き上げる方針を明確に示すべきである(エネルギーミックスにおける再エネ割合を2030年50%以上、2050年100%とする必要がある)。仮にNDCの提出期限に目標引き上げが間に合わない場合であっても、少なくともNDC引き上げのためのプロセスと期限、さらに目標の引き上げ水準の目安を示し、その意思を示す必要がある。
  • 石炭火力発電の新規建設計画全ての中止と、2030年フェーズアウト方針へのコミットメント:石炭火力発電は日本の最大のCO2排出源であり、福島原発事故後に15基の発電所が稼働し、現在も発電の3割を占める。加えてさらに15基もの新規の石炭発電所が現在建設中である。しかし、パリ協定1.5℃目標の達成のために、国連事務総長からも、2020年以降の石炭火力発電所の建設を止めるべきと指摘されている。COP25で、他の多くの国々と同様に、新規計画を全て中止すること、そして既存の石炭発電所についても2030年にフェーズアウトする方針を明確にし、脱石炭に向けたグローバル連盟(Powering Past Coal Alliance)に参加すべきである。
  • 国内政策の抜本見直しへのコミットメント:上記を含むCOP25でのコミットメントの実現のために、国内でNDC引き上げのプロセスをすみやかに開始し、より意欲的なNDCを再提出する方針を示すべきである。なお、地球温暖化対策計画及びエネルギー基本計画の見直しがそれぞれ予定されているが、これらの前提となっている長期エネルギー需給見通しを含め、パリ協定と整合するよう統合的に見直すとともに、全ての部門の対策を強化すべきである。

上記に掲げた項目を避けたままでは、小泉環境大臣はCOP25でリーダーシップを示すことはできず、日本は再び厳しい批判にさらされることになるだろう。

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【プレスリリース】COP25 に向けて:今、日本がすべきは本腰を入れた気候政策強化だ(2019年11月22日)

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