京都事務所の伊与田です。
先日、気候ネットワークでは、2016年度の年次報告書を公開しました。それは、こちら。
*この年次報告書は、気候ネットワークのウェブサイトでも閲覧・DLできます。
NPOが年次報告書をつくる意味とは
いくらでもしなければならない勉強、来週に迫る助成金申請、あさってのイベント準備、1時間後に迫る原稿〆切…。常に人手不足のNPOが年次報告書をつくるのは大変です。
そんな中、NPO法に基いてつくることになっている事業報告書とは別に、「年次報告書(Annual Report)」を作成する団体もあります。NPOが年次報告書をつくる意味は、大きく2つあると思います。
1.NPOのメンバーが自分たちのミッション、活動、成果を見つめ直す
目の前の仕事でおおわらわなNPOメンバー。自分たちが今やっていることが、本当にミッションに沿ったものなのか、進んでいるのか、課題の本質はどこにあるのか、改めて見つめ直すきっかけになります。
報告書づくりのため、NPOのメンバー全員で一緒に振り返ることにも意味があります。自分たちの昨年度の成果や課題がどこにあったのか、その何がすごかったのか、社会に説明する際の共通言語をもてるようになると思うのです。
2.自団体の成果と課題を社会に対してわかりやすく説明して理解と信頼を得る(そしてご支援いただく)
NPOは公益のために活動しているわけですから、対外的に、社会的意義のあるミッションをもって、そのために適切かつ戦略的に活動を進め、成果を出しているということを説明する責任があります。
また、十分にその活動や成果、課題を説明し、その意義について十分に読者に伝えることができれば、さらなるご支援をいただくこともできるかもしれません!
NPOが年次報告書をつくるときの5つの工夫
今回、年次報告書の編集作業をする中で、NPOが年次報告書をつくる上でいくつか、工夫したいと思った点がいくつかあります。
1.だれに、どういうふうに読んでほしいのかを明確にする
誰に読んで欲しいのかは重要です。気候ネットワークの場合、会員や寄付者の方、ファンダー、協力して活動しているNGO/NPOや研究者、弁護士、記者の方、主催イベントの参加者の方を主な読者と想定しています。
ただ、今回は資金不足のため、印刷はあきらめて、ウェブ閲覧オンリーになりました。想定される読者の目の前までどうやって年次報告書を届けるのかは大きな課題です。
2.「何をしたか」に加えて、「何が成果か」を伝える
報告書では、「X月Y日、Z市にて、▲▲シンポジウムを開催しました」というように、「何かをした」という話が多くなりがち。ですが、「何をしたか」だけでなく、「どんな成果があったか」を示すことが重要でしょう。適切に「数字」を使うことも大切です。
赤穂、市原の石炭火力発電所の計画中止
例えば、気候ネットワークは、数年来、石炭火力の問題を提起し続け、全国各地の地元の住民とともに計画反対の声をあげてきました。2016年度には、ついに、赤穂と市原での石炭計画が中止になったのです。
もし赤穂と市原の発電所が動いたら、年間1,320 万 tものCO2の排出が増えることになったと推計されます。これは、一般家庭 264 万世帯の CO2 排出量に相当する、莫大な量です。このことは、成果として、報告書に記載しています。
3.課題の本質を特定する
成果があったとしても、そう簡単にミッションが実現できるわけではありません(もしミッションが果たせたなら、NPOは解散すればよい話なわけです)。そうなったとき、次なる課題の本質が何なのか、明確に特定してみせることは重要だと思います。
4.ヴィジュアルに見せる
「ミッションの実現に向けて活動が行われている」という光景が思い浮かぶような写真を使うべきです。報告書では、シンポジウムの会場で、「たくさんの後頭部がずらーっと並んでる写真」はありがちですが、あまり魅力的ではありません。普段から、フォトジェニックな写真をたくさんキープしておくべきです。
5.事務的な見出しはやめる
忙しい人は、見出しをざっと眺めて、本文を読むかどうかを判断します。こういう報告書では、しばしば、「背景」「目的」「結果」「イベントの様子」などの事務的な見出しが使われますが、おそらく、中身がわかる見出しのほうが、読む意欲が湧くでしょう。
以上、今回の報告書ですべて成功しているわけではありませんが、念頭においていた工夫のポイントでした。
良い年次報告書をつくる上で1番大切なこと
ただ、上に書いたような工夫よりも、もっともっと大切なことがあります。
それは、ミッション実現のための活動をしっかりとやり、成果をあげていること。
それがなければ、いくらおしゃれでおもしろい報告書ができたとしても、何の意味のない、空疎な報告書になることでしょう…。
全国のNPOのみなさん、一緒にがんばりましょう!
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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