東京事務所の桃井です。”カーボンニュートラル”という言葉を聞かない日はないくらい、最近、よく耳にする言葉になりました。これを聞いて気候変動対策は加速化していると思う人はどれくらいいるのでしょうか。
さて、今国会では、気候変動問題に関連する重要法案が多数上程されました。中でも省エネ法改正案については、これまでの省エネ法から大きく形を変え、非化石エネルギーをエネルギーとして位置づけて推進していくという目的の変更を伴う大改正です。また温暖化対策推進法(温対法)改正案も昨年に続き、今国会でも審議されました。
省エネ法等改正案について
今回、省エネ法、エネルギー供給構造高度化法、JOGMEC法などの束ね法案が経済産業委員会で審議されました。問題は、「非化石エネルギー」として水素・アンモニア燃料を位置づけ推進するという点で、衆参両院の審議で論点になりました。特に、原料に化石燃料を使い、製造時に大量のCO2排出を伴うグレー水素・グレーアンモニアはCO2削減効果がほとんどないばかりか、水素・アンモニア混焼によって既存の石炭火力の延命になり、大量のCO2排出を固定化するため、カーボンニュートラルの方向性にも合致しないものですが、政府はこれも含めて非化石エネルギーとして位置付ける方針を示したのです。
これまで政府は、エネルギー基本計画にもこうした水素・アンモニアやCCUSの推進を位置付けるほか、グリーンイノベーション基金を創設して2兆円の予算をつけ、様々な関連のプロジェクトが実行されていますが、これを省エネ法、高度化法などによって法的に位置付けることでさらにその体制を盤石なものとすることがねらいです。
法案の審議にあたって、参議院経済産業委員会では、浅岡代表が参考人として招致され、問題を指摘しています。
2022年5月11日参議院経済産業委員会 省エネ法改正案参考人質疑
参考人:浅岡美恵(気候ネットワーク代表)
温暖化対策法改正案について
温暖化対策法改正案は、これまで環境省が行っていた地域脱炭素投資促進ファンドを財投を活用した新たな出資制度として新たに位置づけ、(株)脱炭素化支援機構を創設することを新たに位置付けるものです。地域の脱炭素支援は重要ですが、政府のエネルギー政策に問題があり、再エネなどにブレーキがかかっている現状では、地域の脱炭素化にもブレーキがかかりかねません。
参議院環境委員会では私桃井が招致され、意見陳述しました。水素・アンモニアの問題についても触れたところ、議員の皆さんからはいろいろなご質問をいただき、討議する良い機会になりました。いずれにしても”カーボンニュートラル”という看板をかかげながら、CO2の削減につながらず、国民負担が増えていくという構造そのものが問題だと思っています。国政の場で、この問題についてもっと議論を深めてもらいたいものです。
2022年5月19日参議院環境委員会 温暖化対策推進法改正案参考人質疑
参考人:桃井貴子(気候ネットワーク東京事務所長)
参考
【プレスリリース】改正省エネ法等法案は石炭火力温存へのミスリード~水素・アンモニアを非化石エネルギーと位置づけ推進すべきではない~(2022年3月1日)
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