5月某日、都内の某所にて。マンションのベランダに太陽光パネルを設置するとの情報を聞きつけ、その現場を見に行きました。
太陽光パネルをベランダに
気持ちよく晴れた絶好の太陽光発電日和に、そのマンションの一室に到着すると、ベランダにパネルが取り付けられているところでした。その様子がこちら。

今回設置したのはこのパネル一枚(220W)。パネルからケーブルを室内に引き込み蓄電池(3000W)に充電する仕組みです。
(この10年で、パネルの面積当たりの発電能力が格段に上がっていることに筆者は改めて驚きました)
設置作業をしているのは、三鷹で気候危機の問題に地域で取り組む小笠原俊文さん。エネルギーの自給拡大を目指し、少しずつ町中に太陽光発電を増やしてきました。

この太陽光パネルは、一家で使う電力をすべて賄うには足りません。電力の部分自給を目指して、発電された分を蓄電池で充電し、パソコンと卓上灯、テレビなどの家電を動かすために導入されました。
なぜベランダに太陽光パネルを設置しようと思ったのか、住民のAさんに聞いてみました。

なぜベランダに太陽光パネルを設置しようと思ったのですか?

ドイツでソーラーパネルがベランダに並んでいる写真を見て、どうやったらできるのか?と気になっていました。
海外では、プラグインソーラー(太陽光で作った電力を直接おうちのコンセントに差し込み利用できるようにすること)が続々と法整備化されていますが、日本ではまだ認められていません。Aさんは日本でプラグインソーラーの設置が制度化されないことをもどかしく思っていました。そして、プラグインまではできなくても、集合住宅でもベランダで何かできることがあるのではないか?と考えたようです。

海外でできるのになぜ日本ではできないのか?と考える人は増えています。どのような方法だったら日本でも可能になるのだろうと思っていたところ、小笠原さんに出会いました。
エネルギーは自分で作る時代へ 主体として選択肢をもつということ
小笠原さんは、三鷹市内の環境NPO「みたか市民協同発電」のまちかどRE100キャンペーンを支えてきた職人です。まちかどRE100キャンペーンとは、町中にミニ再エネスポットを増やして、身近に太陽光発電をしている人を増やすことを目的にしています。
毎日使う電気の一部、お店の看板、庭先のイルミネーションだけでも再エネにできたら…。
そうして「みんなでちょっとずつ」を積み重ねたら、火力発電所1基分とかの脱炭素も可能なんじゃない?
そんな夢に向かって、みたか発電はまち中あちこちにミニ再エネスポットを増やしていく「まちかどRE100キャンペーン」を始めました。
窓の傍に、庭やベランダの一角に、ソーラーパネル1枚つけるだけで始められます。住宅、事業所、商店など、どなたでも、ぜひいっしょにやりましょう!
ドイツなどのようにプラグインソーラーが制度上可能になっていなくても(可能になるべきですが)、バッテリーがあれば、作った電気を貯められ、夜でも天気が悪くても使うことができます。
小笠原さんに、どのような思いでこのように地道にパネルを設置しているのか聞いてみました。

なぜ、ベランダなどでの発電をすすめているのですか?

今までは電気がどこでどう作られていたかなんて誰も考えず、まるで雲の上から与えられるものと捉えられていたと思います。これは生活の中心に置く価値観の問題です。与えられた生活、与えられた目標、与えられた幸福の基準…に対して、選択肢を自分自身でつくるためのアイテムが一つでもあったなら、ひいては生き方自体を広げるきっかけになるでしょう。
ベランダソーラーはささやかではあるけれど、0と1は違う。単なるエネルギーの消費者から、未来に責任の持てる方法を自分でつくるという考え方へ、客体から主体への変化につながると考えています。
自分でエネルギーを作ると、何にどのくらいエネルギーがかかるのか知れて、どうエネルギーを使うと効率的か考えるようになります。自分の生活を、エネルギーを軸に自分で収支立てて考えることができるのです。また、どんなエネルギーを使いたいか周りに示すきっかけを得ることにつながるのではと思います。太陽光発電はエネルギーを自給することで、停電などへの備えにもなります。
どうやったらできる?ベランダソーラー
日本ではまだまだマンションへの太陽光発電設置にポテンシャルがたくさんあります。課題をクリアすれば、Aさんのようにベランダに設置することが可能です。
前提として、工事には扱う電圧が高い場合や配線の方法によっては電気工事士の資格が必要です。
そしてまずは、共用部である避難経路をきちんと確保しておくこと。マンションのベランダには上下の階へ脱出するための扉があると思います。ここをふさがないよう、きちんと空けておく必要があります。念のため管理組合に確認を取っておきましょう。
また、風にも気を付けましょう。今回のAさん宅のパネルは台風にも耐えられるよう工事されましたが、同様に強い風に耐えられるようにするか、風の強い時に屋内にしまえるようにすると良いでしょう。

とはいえ、小笠原さんのような方が身近にいるならともかく、利用者にとって最適な方法で太陽光パネルを設置するには専門知識が必要になります。小笠原さんのような方を増やすにはどうしたらいいのか聞いてみました。

小笠原さんのような、個別に太陽光パネルの最適利用を考えてくれる方を増やすにはどうすればいいのでしょう?

それこそ行政の仕事ですよね。職人のグループを地域の担い手として作るべきです。私のところにもし弟子にしてくれという人が来たら喜んで受け入れますが、個人では限界があります。担い手がいないと広がりません。ドイツには再生可能エネルギーの専門学校がありますが、そのようなものが必要では。
小笠原さんの根底には、人が手を使って仕事をすることへの強い思いがありました。小さい時から職人の手を見るのが好きだった小笠原さんは、バブルの時代にたたき上げの職人がロボットのように使われ過労死していくのを目の当たりにし「こんな世の中でいいのだろうか?」と強い違和感を覚えたようです。何より人を大切にし、人間から人間へ技術を伝え、人間の仕事に価値を置くこと。小笠原さんのこのような思いが背骨となり、職人としてエネルギー自給を進める活動を支えているようでした。
小笠原さんは「パネルをつけたい方がいれば、どこでも行きますよ!」とおっしゃっていました。三鷹に近い方がいれば、ぜひまちかどRE100キャンペーンを見学してみて、おうちの太陽光パネル設置を検討してみてください。
「とはいえ太陽光発電、お高いんでしょう?」とお思いの方に向けて、Aさんからメッセージももらいました。

消費行動のなかで、例えば衣類などの買い物でコスト回収の計算はしません。自分にとっての価値に費用を払っています。電気はコスト回収が必須の要件のように位置づけられ、再エネではとくに経済性が問題にされるのに、他の電源(原発や火力など)が補助金満載であることにはふれられないことが多い。以前はともかく、近年では(太陽光発電のような)小規模自家消費型は経済面も含め、総合的に合理的な選択でもあるという理解が広がるといいのではと思っています。
太陽光発電はお天気次第ではありますが、自然とはそういうものなので、その前提でうまく暮らす工夫をするのがいいと思います。今は蓄電池がそのサポート役になる時代となりました。発電と消費状況をみると、パネルをもう1枚追加するとより使い勝手がよくなりそうです。
工事完了後、できたてほやほやの太陽光発電システムを眺める小笠原さんとAさんの満足げな笑顔が印象に残りました。
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