最近、念願だった高気密高断熱住宅を買いました。さらに引っ越しから4カ月後の5月に太陽光パネルと蓄電池を取り付けました。この間の経験は学びがたくさんあり、現在も試行錯誤で家での脱炭素を目指している最中です。

 住宅購入や太陽光パネル/蓄電池の設置を検討されている方の参考になればと思い、導入までの選択のプロセスやこの半年での光熱費削減・CO2削減効果など、ブログにまとめたいと思います。

1.家の条件と不動産屋の情報

理想の住まい

 気候変動関連の仕事について20数年。当時から住宅の性能によって冷暖房などのエネルギー効率が大きく変わり、暮らしの中でのエネルギー消費量が大きく違ってくることはわかっていました。ただ、当時では「せっかくZEH(ゼロエミッションハウス)にしたのにかつて住んでいた家よりも電気代が高くなった」「結局家が寒いんだけど」とか、そういう話もあり、実際どうなんだろうかとよくわからなかったものです。

 この数年でわかってきたのは、断熱性能の鍵が、壁の断熱はもちろんのこと、窓、天井、床にあるということでした。これがわかってから理想の家のイメージは固まってきていたものの、費用はかかるし、ひとまず”我慢の省エネ”でしのげるので、家を買うことにはまったく踏み出せずにいました。

住宅購入のきっかけ

 2021年1月、大転機が訪れます。2母が突然くも膜下出血になり、生死も危うい状態から生還しました。半年の入院期間を経て、要介護5になって帰ってきた母は、ほぼベット上での生活になり、外階段が8段もあるこれまでの家には住み続けにくくなりました。

 また、昭和50年代に建築された当時の実家は、無断熱で、冬寒く・夏暑い、耐震性もなく、太陽光パネルを載せる強度もありませんでした。この数年の間に、左右両隣、裏の家が次々新築になり、エアコンの室外機からの風が三方から吹き付けてきて、冬の寒さはさらに寒く感じ、夏の暑さは高温化も重なって尋常ではなくなっていました。

 母の真冬の明け方に突如くも膜下出血が発症したのは、このような家の中で、温かい布団から外に出ようとしたときに急激な温度差によるヒートショックも一因しているのではないかと疑っています。

新しい家の条件

 さて、これから家をどうするか、①今ある土地で家を立て替える、②新築の住宅を買う、③中古の住宅を買う、と大きく3つの選択肢がありましたが、”エコ”な家というよりは、バリアフリーが重要な要素になっていました。そこで、以下の条件を満たすところを考えていきました。

①高気密高断熱(家の中での温度差ができない)
②バリアフリー(車いすで移動できる)
③1FにLDK+部屋(両親二人のベットを1階に配置しキッチン・トイレもある)
④これまで住んでいた場所から離れていない場所(病院や介護施設を変えない)、
⑤外から車いすでフラットに入れる(玄関と道路の段差が少ない)
⑥南向き+屋根も南側に傾斜がある
⑦耐震構造(太陽光パネルを設置できる強度)

 まず、今ある土地で家を立て替えることについては、高気密高断熱を売りにしているハウスメーカーさんに設計をお願いしたものの、③と⑤の条件を同時に満たすことができず断念しました。

 いくつかの新築・中古の物件も見学しました。問い合わせたいくつかの不動産屋さんに条件を伝えて他も探してもらったものの、なかなか良い物件はみつかりませんでした。私があげた条件は組み合わせとして難しいということもあると思います。比較的築年数が新しい高断熱の家だと、断熱材で壁に厚みが出るためか、通路が古い家よりも狭くて車いすのUターンができなかったり、坂だらけの横浜ではフラットで入れる南向きの家はほとんど見つかりません。その上、高気密高断熱とか南向きに屋根が傾斜しているとか、そんなことを条件にしてくる人はほとんどいないのでしょうか。物件リストにはそういう情報は含まれていません。

太陽光パネルにまつわる情報

 太陽光発電に関しては、かなりいい加減な情報を提供されることが多かったです。ひどいときには太陽光を載せても意味がないとか、電気代でもとが取れないとか、メーカーがパネル設置を推奨していないとか言われます。 「うちも載せてるんですけど、電気代が月3万にもなって太陽光発電のせても効果がない」という人もいました。

 太陽光の廃棄時には処理ができないんですよとか、太陽光パネルの製造にウィグル自治区の人権が侵害されてるとか、都知事が裏で取引してて太陽光設置を義務化するがあんな制度はとんでもないとか、まさかここでこの話を聞くことになるとは、というアンチ太陽光の人たちの言い分をそのまま不動産屋さんから聞くことになり、本当に驚きました。

 こうした情報に対しては、「これ(パンフレット「太陽光発電のギモン解決!よくある質問15選」)を見てください!」と言いたいところでしたが、その時に持ち合わせておらず「それはデマもありますね」と簡単に伝える程度にとどめました。非常に残念でした。

 おそらく家探しをしている人が、「絶対に太陽光パネルを載せる」と決めていなければ、不動産屋の情報で簡単に太陽光発電はあきらめてしまうでしょう。本来は事業者側から正しい情報が提供されることが望ましいと思いますが、実態はそうではないことを痛感しました。

住宅性能の情報について

 住宅の性能については結構表示があいまいで統一されていません。自分が求める水準にあるかどうか判断が非常に難しかったです。

 物件探しの際、比較的築年数が短い「高い省エネ性能」をうたっている中古物件があって、そこは悩んだ物件の一つでした。現地を見学しましたが、床暖房がある家で、窓は一部がペアガラスで樹脂サッシ、はめ殺しの窓がいくつかついていて、高いところにあるため構造がよくわかりませんでした。まだ導入したばかりというハイブリッド給湯機がついていましたが、床暖房とは切り離されていました。高い省エネ性能といっても、参考にできる数値の表記もありません。住んでみてからわかるのでは、ハズレた時に大後悔ではすまない大きな買い物で、とても慎重になりました。

 中古物件の住宅性能は、当時の設計図からわかったりしますが経年劣化も踏まえる必要があります。不動産屋さんによっては、詳しい設計図を見せてくれないところもあります。建築した住宅メーカーがわかれば、築年数を見て、そのメーカーの当時の標準設計を調べたり、その時代の最も高いとされる省エネ基準や耐震基準で把握する程度しかできません。そのランクは以下の表のとおりです。省エネ基準達成と書いてあれば、断熱等級4クラスの設計になっていたということになると思います。

 <耐震や省エネ基準の経緯>

 耐震基準省エネ基準等 
*地域6の場合
1950年
(昭和25年)
震度6で倒壊の危険(無断熱)
1980年
(昭和55年)
 【旧省エネ基準】
 断熱等級2程度
 UA値:1.67(Q値:4.8)
1981年
(昭和56年)
震度6強~7程度に耐える 
1992年
(平成4年)
 【新省エネ基準】 
 断熱等級3程度
 UA値:1.54(Q値:4.5)
1999年
(平成11年)
 【次世代省エネ基準】
 断熱等級4程度
 UA値:0.87(Q値:2.7)
2000年
(平成12年)
地盤調査が義務化住宅性能表示制度制定
2003年
(平成15年)
 換気システム義務化
(主にシックハウス対策)
2009年
(平成21年)
 長期優良住宅制定
2012年
(平成24年)
 低炭素住宅認定制度
2013年
(平成25年)
 省エネ法→建築物省エネ法
【25年省エネ基準】
 断熱等級4程度
 UA値:0.87(Q値:2.7)
2015年
(平成27年)
 ZEH基準設定(断熱等級5)
2016年
(平成28年)
 【28年省エネ基準】
 断熱等級4程度
 UA値:0.87(Q値:2.7)

欲しい情報が足りない

 新築の建売住宅も何件か見て回りましたが、新築なのに太陽光搭載を前提にしておらず、断熱性能は数値化されていないためよくわからず、見た目でわかる窓ガラスやサッシの種類などである程度の判断をするしかなく、結果的に選択肢から落ちていきました。また、このタイミングでちょうど建築物省エネ法の議論があり、断熱等級5~7という新たな等級がつくられるタイミングでしたが、新築物件で「省エネ等級最高ランク」とうたっている物件もほとんど断熱等級4でした。熱伝導率の高いアルミサッシも一部で使われていました。

 断熱性能を表すQ値、気密性脳を表すC値あるいはUA値などで表示されている物件には結局出会えずじまいでした。多くの人は、住宅を選ぶ時に、価格、場所(駅からの距離)、部屋の間取り、収納、デザインなどで選んでいるのではないかと思います。しかし、こうした値が電気代などに直結することを考えると参考情報としてあると便利です。ただ、やっかいなのは、測定は結構高額になること。一度、住宅性能評価をしてくださいと頼んでみたところ、測定器が少なく50万円くらいかかると言って断られました。

 最終的に、2009年築の中古物件が見つかり、そこに決めました。高気密高断熱を長年売りにしてきたハウスメーカーの家です。希望してた条件は基本的に全て満たしているところでしたが、「 ⑤車いすでフラットに入れる」については、完全なフラットではなく、玄関まで4段の階段がありスロープを取り付ければ車いすで入れます。また、「⑦太陽光パネルを載せられる」については、2週間以上かかりましたが大丈夫だとの確認がとれました。あと、「④これまで住んでいた場所から離れていない場所」については、若干想定していたエリアから離れてしまい、最寄り駅が変わってしまったのは妥協点でもあります。

 住宅を選ぶ側にとって、目で確認できないような住宅性能情報がいかに足りないかを感じた家探しでした。また、再エネに対するマイナスイメージを不動産屋が客に与えているという問題もつくづく感じた家選びでした。

つづく→2.高気密高断熱住宅について

この記事を書いた人

Momoi