日々、猛暑だ、酷暑だと注意報が発令され、台風は過去にない進路で日本に上陸。野外作業を担う現場では暑さによる労働損失と労働者の健康維持に頭を悩ませ、異例のコースをたどった台風は未曾有の水害を引き起こした。にもかかわらず、野外での活動制限と冷房の設定温度といった熱中症対策やエアコンの電気代の話から気候危機の話に議論が広がっていかないのは何故?
残念ながら来年の夏が涼しくなる見通しはまったくない。このまま年々暑くなっていったら2050年にはどのようなことになっているのか―8月3日に公開された「2050年の天気予報」を見ながら想像してみよう。
個人ができる対応は超えている
イラン情勢による燃料調達の問題や価格の高騰、夏の電力需要の高まりに対して、日本政府は節電要請などを発しているが、日本同様にエネルギーを輸入に依存するアジア諸国では在宅勤務や労働時間の短縮、電力使用の制限などより幅広い対策が取られている。温暖化という世界的な異常事態に直面しているのに、なぜ日本政府は個人に危機対応を求めるのに留まるのか。過去においては「省エネ」で対応できていたから、これからも対応できると思っているのか。これだけ熱波やゲリラ豪雨などに見舞われているのに、個人による対策で何とかなると思っているのなら、早急に考えを改めてもらいたい。「危険な暑さから身を守ってください」とか「命を守るため、避難してください」と頻繁に言われるようになるなど、誰も想像していなかったはずだ。
日本の炭素集約的な電源構成
確かに、かつての日本の「省エネ」は世界に誇れるものだった。しかし、昨今では電力の「脱炭素」における日本の遅れっぷりが悪い意味で注目されている。国際エネルギー機関(IEA)によれば、燃料燃焼によるCO2排出量の世界ランキング(2023年)で日本は、中国、米国、インド、ロシアに続く5位である。日本は独自解釈の「脱炭素」策を推し進めてはいるものの、2025年時点での電源構成は、年間発電電力量全体の約3分の2にあたる64.5%を化石燃料に頼っている。細かく見れば、LNG28.9%、石炭28.4%、再生可能エネルギー26.1%、原子力9.4%となっていた。どう見ても炭素集約的だし、この割合がいきなり大変動するとは思えない。
温暖化を加速させる日本の発電事業
電気を化石燃料から作り続ける限り、排出量の削減はできない。単純明快。今の日本の発電事業者の掲げる「脱炭素ロードマップ」ではCO2排出の大幅削減は望めず、結果として温暖化は止まらない。エアコンを使うには電気が必要だというのは分かるが、その電気を石炭やLNGで作っていたのでは「薪を抱きて火を救う」か「火に油を注ぐ」である(昔の人の表現力は素晴らしい)。環境省がいかに「日本の温室効果ガス(GHG)排出は着実に減っている」とアピールしても、CO2を出し続ければ気温上昇は止まらない。汗も止まらない。石炭火力を廃炉にせず、今以上にLNG火力を増やそうとしているのに、脱炭素を実現できると言い切る自信がどこから出てくるのか。まったく分からない。国際的な気候政策評価プロジェクトClimate Action Trackerに、日本の政策と実行は「不十分」と評価されても聞く耳は持っていないらしい。
こっちの化石燃料が足らないから、あっちからもらおう作戦は日本を救えるのか
日本政府は、イラン戦争によるホルムズ海峡閉鎖で原油やLNGが足りなくなるなら、別のところから石炭を輸入して補おう、他のエリアからもLNGを輸入できるように事業を拡大しようとの作戦に出た。政府はこれを「エネルギー安全保障」と言うが、どの化石燃料をどこから輸入するにしても他力本願なのは変わらないのに、どこが「安全」なのか。世界では燃料の供給如何で自国の経済基盤が揺るがないように再生可能エネルギーや蓄電が急速に拡大しているのに。しかも、「日本は再エネポテンシャルがある」と評価されているのに、化石燃料依存から抜けられない。他国の人に、日本の電力会社が再エネの出力抑制をしておきながら、電気が足らなくなるからと火力発電所を増やそうとしていることを話すと大概は「なぜ?」と聞かれる。そりゃ、そう思うでしょう。変動電源である再エネを活用しきれないのは送電網の問題なのに、国が主導して変えていこうとしているようには見えない。そのかわりに、化石燃料を擁護するような制度を次々に打ち出してくる。「命に関わる危険な暑さです」と言うばかりで、エネルギー政策自体を変えてCO2排出を削減しようとは言わない。「なぜ?」である。制度とインフラが変わらない限り、国内の再エネの急拡大は期待できない。輸入燃料に頼らない再エネ拡大こそ「安全保障」のはずなのに。
早くも登場頻度高めの「酷暑日」
2026年4月から、気象用語に最高気温が40℃を超す「酷暑日」が追加された。40℃以上になる日が増え、これまでの「猛暑日(35℃以上)」を超える危険度合であることを適格に伝え、警戒するために新たに追加された。既に2025年の夏も高温を記録していたが、極端気象アトリビューションセンター(WAC)は、2025年の記録的高温は地球温暖化なしにはほぼ起こり得なかったと分析。同様に2026年7月の記録的高温も温暖化なしには起こり得なかったと発表している。7月下旬には東海地方を中心に5日連続で酷暑日が観測された。8月に入ってからも暑さが続いているので、今夏の酷暑日の記録はまだまだ増えていきそうだ。
「2050年の天気予報 Ver.2」
このジリジリ暑い中、8月3日に「暑すぎる夏を終わらせるWEEK」の一環として、動画「2050年の天気予報(Ver.2)」が公開された。この動画は、2014年に公開した前作(Ver.1)に描かれた気温予測が現実となってしまったことを受け、最新の科学と複数の研究機関の協力のもと、NHKエンタープライズ、気象キャスターネットワーク、JCLPなどで構成する製作委員会がリニューアル版を発表したものだ。

この動画には、熱中症だけでなく酷暑がもたらす持病の悪化やメンタルヘルスへの影響といった二次的な健康被害の危機にも言及しているが、既に連日のように熱中症警戒アラートが発令され、外出自粛や野外での運動中止などの事実上の行動制限が求められるようになっている。7月13日~19日に熱中症で救急搬送された人の数が、今年初めて1万人を超えたが、それ以降も大幅には減少していない。7月22日にはさいたまで行われた野球の試合が猛暑の影響でノーゲームとなった。「2050年の天気予報」の片鱗は見えている。動画の中では、気象予報士の井田寛子さんと東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授が、「気温の上昇を0.1度でも低く抑えることが私たちの命を守ることにつながります」、我々の命や次世代の命を守るには「CO2が出ないことが当たり前になるような仕組みを作ることが大切」と訴えている。
この動画は、科学的見解を踏まえて作成されたものだが、「このままのペースでCO2を出し続けた場合に2050年8月に起こりうる気象の姿です」との警鐘は、是非(政治家も含めて)多くの人に見てもらいたい。
かつて(●年前)の夏はこうだったというのを記憶から引っ張り出しながら、「2050年の天気予報」の夏と比べてみてはどうだろう。酷暑の中でも冷や汗が出てくるかもしれない。
「暑すぎる夏を終わらせるWEEK」公式HP
「暑すぎる夏を終わらせるWEEK」の公式SNS:リポストなどにご協力を
X; https://x.com/Japan88project/status/2084133192160903316
Instagram:https://www.instagram.com/p/DbkIqV0i-sJ/?hl=ja
その他の参考
ウェザーニュース:40℃以上の酷暑日が相次ぐ2026年夏、この暑さは「温暖化なしでは起こり得なかった」?
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