東京事務所の鈴木です。

いきなりですが、日本の気候変動対策は世界的にみてどのぐらいの順位だと思いますか?

英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、世界の国々が気候変動対策について議論していた最中の9日、ドイツのNGOジャーマンウォッチが主要排出国60カ国の気候変動政策の評価ランキング「気候変動パフォーマスインデックス2022(原題:Climate Change Performance Index 2022, CCPI)」を発表していたので、紹介します。

温室効果ガスの排出削減目標など気候変動対策を評価した国・地域別をランク付けしたこの分析で、日本の順位は、総合45位!

これを予想以上に低いと思う人がいるかもしれませんが、順位は昨年から変わっていません。世界的に見れば、日本の対策は「世界をリードする」というレベルには至っておらず、まだまだ不十分だと見なされているのです。

CCPIの4つの評価カテゴリー

CCPIは、4つのカテゴリーで各国のパフォーマンスを評価し、ランク付けしています。これらのカテゴリーごとの日本のランキングは以下のようになっていました。(カッコ内の%は評価における比重)

  • 温室効果ガス(GHG)排出量(全体評価のうちの40%)39位(相対評価=低)
  • 再生可能エネルギー(20%)45位(相対評価=低)
  • エネルギー利用(同20%。一人当たりのエネルギー使用量で比較)28位(相対評価=中)
  • 気候政策(20%)43位(相対評価=低)

より詳しい評価基準を知りたい方は、CCPIの方法論のウェブページをご覧ください。

この4つのカテゴリ―の評価をまとめた結果、日本は第45位だったのです。

他の国はどんな順位だったのか?

出典:The Climate Change Performance Index 2022: Results

総合ランキングの1~3位は、対策が十分な国・地域はないとして該当国なしでしたが、上位3カ国は北欧諸国が占めています。第4位はデンマーク、第5位はスウェーデン、第6位はノルウェーでした。(以下はグラフをクリックしてご確認ください)

COP26期間中、気候変動対策において2020年代が「決定的に重要な10年」であるとの認識のもとで協力関係を強化するとの共同宣言を発表して話題になった米中の順位は、米国が55位(昨年から5位アップ)、中国が37位(昨年から4位ダウン)でした。

米国はバイデン政権になって昨年より順位を上げたものの、1人当たり排出量が多いことで低評価に。中国は、世界最大の二酸化炭素排出国であり、排出量の多さとエネルギー効率の低さが問題視される反面、再生可能エネルギーの拡大に向けた取り組みは評価されたようです。

しかし、深刻な電力難に直面している中国は、11月後半になってオーストラリアからの発電用石炭輸入を再開しています。今後、どのような対策を進めていくのか気になるところです。

世界の中の日本

気になるのは、世界最大の二酸化炭素排出国の中国よりも順位が低い日本のことです。排出量が多い中国よりも日本の順位のほうが低いっておかしくない?と疑問に思われる方もおられるでしょうが、国としての排出量だけではなく政策・対策の状況など複数の要素を評価したランキングであることを忘れずに。日本の気候対策と再エネの低さは……

CCPIの専門家は、日本が2030年までにGHG排出量を2013年比で46%削減し、2050年までにネットゼロ(実質ゼロ)を目指すとの長期目標を掲げたことを評価しつつも、これらの目標の達成に向けた明確な計画、および具体的な方針がないことを問題視しています。

しかも、日本の2030年GHG排出目標でも温度上昇を2°Cより十分に低く抑えるためには不十分な上、2030年の電源構成に依然として石炭が含まれていること(2030年度の時点で発電量の19%を石炭火力で賄うとしていること)も問題として指摘されています。今もなお新規石炭火力発電所の計画・建設を進めている日本は、一体どうやって脱炭素を実現するつもりなのでしょう。

気候変動政策評価ランキングで日本の順位をあげるためには?

日本の再生可能エネルギー普及率が依然として非常に低い状態であることも踏まえ、日本が中長期的な目標を達成するためには、炭素価格(カーボンプライシング)などの政策の導入、再生可能エネルギー電力および送電網(グリッド)への投資の増加、石炭火力発電所の新増設計画の中止および石炭火力のフェーズアウト(段階的廃止)のタイムラインの設定を行うように提唱しています。

COP26では二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電の縮減が大きな論点になりましたが、日本は石炭の開発と資金調達を段階的に廃止していこうとする国際的な取り組みを阻んでいると見られています。各国が取り組みを進める中、日本が2050年ネットゼロの目標をいかに具体化させていくか、どのような石炭火力のフェーズアウトのロードマップを描くかによって来年以降の順位は変ってくるはずです。

関連情報

ジャーマンウォッチ:The Climate Change Performance Index 2022: Results(ここにダウンロードサイトへのリンクが記されています)https://germanwatch.org/en/21110

ジャーマンウォッチによるプレスリリース
Race Towards Climate Neutrality Is Underway: CCPI’s top countries lead the way https://germanwatch.org/en/21141

この記事を書いた人

Suzuki