はじめまして。今年6月から気候ネットワークで働いている森山です。今年の夏も猛烈な暑さが続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

気候変動による猛暑と気候災害の増加

最近の夏の異常な暑さや、集中豪雨や台風による被害の増加で、気候変動の影響が日本でも身近に感じられるようになってきました。気候変動の最大の原因となっているのが、化石燃料を使うことで排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスです。CO2の排出が今のまま続けば、夏はさらに暑くなり、異常気象による災害も増えると予測されています。

環境省の「COOL CHOICEウェブサイト」で紹介された「2100年未来の天気予報」。このままCO2排出を続ければ、日本各地で夏の気温は40℃以上に。

私は最近の夏のあまりの暑さに耐えかねて、2年前から日傘を使うようになりました。

男性の日傘はまだまだ少数派で、ちょっとだけ恥ずかしかったりしますが、暑さがかなり軽減されるのでお勧めです。このまま温暖化が進めが日傘なしには外出できなくなる?

とはいえ、日傘を使っていても、家から最寄り駅まで歩いただけで汗が滝のように流れてしまう厳しい暑さ。命の危険を感じるような暑さの日も増えていて、日中はなるべく外出を避けたいところ。幸いにも、今はコロナ感染予防のため自宅からのリモートワークを続けており、暑い時間に外出する機会は減っています。1日中家にいるので、買い物で外に出るとき以外、ほぼ24時間エアコンつけっぱなしな今日この頃….

え、環境団体の職員が1日中エアコンつけっぱなし?
環境団体って節電が第一で、エアコン使ったら怒るような人たちじゃなかったの?

いえいえ、そんなことはありません!(これ言ってクビになったりしませんよね…?)
私も数年前までは、睡眠の質を犠牲にしつつ、夜だけはエアコンを使わず我慢したりしていたのですが….

「地球の環境を守る=電気を使わない」も大切ですが、実は、「どんな電気を使うか」が重要。クリーンな電気を選べば、エアコンの我慢などの節電より、ずっと大きなCO2削減効果があるんです!家庭でそのための「パワーシフト」について、改めて紹介したいと思います。

家庭から排出するCO2の多くは電気から

CO2は発電所や工場だけでなく、私たちの家庭からも排出されています。そして家庭から排出されるCO2のうち半分ほどは、照明や家電製品、エアコンなどの電気を使うことで排出されています。私たちが使う電気を発電する火力発電所が、大量のCO2を排出してしまうからです。

逆に言えば、家庭でも照明をこまめに消したり、エアコンの設定温度を控えめにしたりといった省エネの努力をすれば、CO2の排出削減に貢献できます。だけど、冷暖房を無理に我慢して体調を崩すのはよくないし、暮らしには電気が必要。そんなときに考えてほしいのが、クリーンなエネルギーへの「パワーシフト」です。

クリーンな電力へのパワーシフト

パワーシフトとは、再生可能エネルギーを中心とした持続可能なエネルギー社会に向けて、より地球にやさしい電力会社を自分で選び、電力(パワー)のあり方を変えていくこと。2016年から、日本でも電力小売自由化によって、一般家庭も電力会社を選べるようになりました。化石燃料や原子力を中心に発電するこれまでの電力会社から、再生可能エネルギーを使い、自然環境や地域社会やさしい電力を作る電力会社に切り替える動きが広がっています。

家庭から排出するCO2の約半分は電気から。つまり、クリーンな電力にパワーシフトすれば、それだけで家庭からのCO2排出を半分に減らすことができます(オール電化の家庭ならもっと減らせます)。クリーンな電力を選べば、省エネを無理にがんばるよりも、ずっと大きな効果があります。

パワーシフトは簡単

パワーシフトの方法は簡単です。まずは、毎月家に届く電気使用量の検針票を用意して、そこに書かれている「お客様番号」を確認。次に、選びたい電力会社にウェブサイトや電話で申し込みして、「お客様番号」を伝えれば完了。

今までの電力会社の解約手続きは、新しい電力会社が代わりにやってくれます。工事もいらないし、一戸建てでも集合住宅でも申し込みできます(ただし、マンションが一括受電の場合はマンション全体での契約変更が必要です)。

再生可能エネルギーで発電する電力会社はたくさんあって、ポイントがたまったり、電話やインターネットがセットで安くなるサービスもあります。そんな中でもおすすめしたいのが、「パワーシフト」のウェブサイト(https://power-shift.org/)で紹介している電力会社です。再生可能エネルギーの発電所の中には、発電所建設で地域社会と対立したり、森林伐採などを引き起こしているものもあります。「パワーシフト」のウェブサイトでは、ただ再生可能エネルギーで発電するだけでなく、自然環境や地域社会に配慮した経営に取り組む電力会社を紹介しています。

環境にやさしい電気は値段が高いのでは?と思う方もいるかもしれません。でも実は、パワーシフトすることで電気代が安くなるケースも多くあります。各電力会社のウェブサイトでは、電力の切り替えで電気代がどう変わるかシュミレーションすることもできます。まずは気になった電力会社のウェブサイトを確認してみるのがおすすめです。

パワーシフト・キャンペーンでは、YouTubeでもパワーシフトの方法について紹介しています。

ほかにもある家庭からのCO2排出削減方法

家庭からのCO2排出源で、電気の次に多いのが冷暖房。冷暖房によるCO2排出量は、家庭全体の約4分の1を占めています。とはいえ、CO2排出削減のために、夏の暑さや冬の寒さを無理に我慢するのは健康に良くありません。

そこで考えてほしいのが、住宅の断熱対策です。壁や床などに断熱材を入れ、窓を2重ガラスにするなどの断熱対策を施せば、控えめな冷暖房でも、夏は涼しく、冬は暖かく、快適に過ごすことができます。

日本では2013年に施工された「改正省エネルギー基準」によって、新しい基準の断熱がすべての新築住宅に義務化されました。日本の住宅は諸外国に比べて断熱性能が非常に低く、日本の住宅の約8割は断熱不足と言われています(平成30年総務省「住宅・土地統計調査」)。断熱対策のリフォームや断熱性能の高い家への引っ越しは、費用などの点で、個々人ではなかなか取り組みにくいかもしれません。断熱性能の高い住宅の普及のためには、補助金など政策によるバックアップを政治に働きかけることも必要です。

ほかには、家電や照明を省エネ性能の高いものに買い替えることも効果的です。最新の冷蔵庫やテレビは、10年前の製品と比べて40~50%近く、LED照明は一般電球と比べて約80%もエネルギー消費が少なく済みます。

「ステイホーム」が増えた今だからこそ

今回紹介したように、「コツコツ節電」するだけよりも、もっと簡単に、そしてもっと効果的にCO2排出を減らし、しかも快適に暮らせる方法があります。コロナ禍でステイホームが増えた今だからこそ、家庭のエネルギー消費を見直してみませんか。

ちなみに私はこれまで電力会社を2回変更して、今はパワーシフト・キャンペーンでも紹介している「みんな電力」を利用しています。電力の切り替え手続きは携帯電話の乗り換えより簡単でした。すでにパワーシフトしている人も、その時々の生活スタイルに合わせて、いろいろな電力会社を試してみるのも良いかもしれません。

パワーシフト・キャンペーンでは、インスタグラムでも役立つ情報やイベントのお知らせを発信しています。ぜひチェックしてみてください。(https://www.instagram.com/powershift_energy/)

この記事を書いた人

森山 拓也
森山 拓也
気候ネットワーク東京事務所職員。