京都サンガF.C.の挑戦
2025年12月、サッカーJリーグのクラブ・京都サンガF.C.の選手が小学校3校で環境学習を実施しました。実施に当たっては、気候ネットワークがこれまで環境教育事業で培ってきたノウハウを活かして冊子の監修や、学習会の支援を行いました。「将来サッカー選手になりたい」という子どもたちの夢を実現できる未来を守るために始まった気候アクションを、サッカーを取り巻く環境変化とともに紹介します。

サッカーはもはや気候危機を無視できない
2025年9月、英国の非営利団体が「フットボール・フォー・フューチャー(Football for the Future)」(※1参照)という報告書を発表しました。その中には、ワールドカップ杯開催都市別に、2025年夏にWBGT(暑さ指数)(※2参照)が35以上になった日が何日あったかを調べた結果が報告されています。
ワールドカップ杯開催16都市のうち、一度もWBGT35以上にならなかったのが5都市。そして、最多はヒューストンの51日、2番目がダラスの33日、次いでカンザスシティの17日、モンテレイ(メキシコ)とアトランタの9日という結果となっています。猛暑の中の試合では、出場選手だけでなく、スタジアムで応援する観客やクルーなど数万人の健康も考えなければならず、もはやサッカーは気候危機を無視することはできません。
(※1)報告書は、サッカーのクラブチームなどと連携し、気候変動対策を進める非営利団体「フットボール・フォー・フューチャー」(英)や気候リスク分析会社「ジュピター・インテリジェンス」(米)などがまとめた。
(※2)WBGT(暑さ指数)

2026年Jリーグは大きな変化を迎えた
日本では、1993年のJリーグ創設以降、開幕試合を2月~3月に、閉幕試合を11月~12月に開催する形の「春秋制」が導入されています。2026年は、2月より”シーズン移行期の特別大会(Jリーグ百年構想リーグ)”が行われ、6月~7月は閉幕し、8月からは、欧州スタイルの「秋春制」へ完全移行します。”ワールドカップ杯の時期”や、”選手の移籍のタイミング”などいくつかある移行のメリットのうち、”猛暑下での試合数を減らすことができる”という点に注目をしてみました。移行前のシーズンでは、国内で猛暑となる6月~9月にかけてほぼ毎週のように試合が行われてきましたが、2026年以降は6月~7月にかけてシーズンオフになることから、選手への負担が減り、試合のパフォーマンス低下を防ぐことにつながると考えることができます。また、今後ますます深刻化する暑さや、試合が中止になるほどの豪雨の影響を考えると、選手だけでなく、クルーや応援するサポーターの安全対策にもつながります。
”サッカーを通じて地域に根ざし、100年続く愛されるクラブを創る”というJリーグの理念を表現している「100年構想リーグ」のネーミングからは、Jリーグの力強い思いが伝わってきます。100年先もサッカーやスポーツができる未来を約束するためにも、気候変動問題への取組は、大きなテーマになっていることに間違いありません。
地域の社会課題に取組むJクラブ
Jリーグのクラブは全国の41都道府県に60クラブあり、クラブの活動の2大柱は、安全や、フェアプレーの徹底を目指した試合運営と地域密着型の活動です。例えば、ホームタウン活動や社会貢献、環境配慮、パートナーシップを通じた社会課題解決などに取り組んでいます。また、Jリーグは、未来の子どもたちが安全にスポーツを楽しむことができる地球環境をめざし、気候変動の問題解決に向けた「気候アクション」の一環として2025年4月、国際的なイニシアチブ「Sport Positive League(SPL)」に参画すること発表していて、今回紹介する京都サンガF.C.の環境教育はクラブの取組の一つとして位置づけられています。取組は、様々な地域で活発に行われていて、クラブ間で事例を共有して高めあう取組もされているようです。
茨城県で活動している水戸ホーリーホックの取組などもその一つとして挙げられます。動画で紹介されているので、ご覧ください。
【Jリーグ気候アクション】水戸ホーリーホックの"もうひとつの挑戦"「電気も 野菜も 育てるクラブへ」
サンガF.C.の環境教育
ここからは、気候ネットワークと協働で進めた京都サンガF.C.の取組を紹介します。
まず最初に、環境学習の実施に向けて、子どもたちが学習した後も、効果的・継続的に学校や家庭で深めていくことを目的に、冊子『エコ・パスポート』を作成することとなりました。制作にあたっては、京都サンガF.C.のスタッフの方が中心となり、京都府総合政策環境部脱炭素社会推進課、京都市環境政策局地球温暖化対策室が参加され、気候ネットワークが監修するパートナーシップの形で進めていきました。それぞれの立場から意見を出し合い、分かり易い表現や、興味深い内容にとどまらず、子どもたちがより身近に感じることができるよう、京都で実践されている脱炭素の取組事例の紹介にも挑戦しました。冊子は、A5サイズ全14ページで構成され、その内容は、次の通りです。
⚽エコ・パスポートの内容
- 地球温暖化の学び
- Jリーグの取組紹介
- クイズ(Jリーグの取組、再エネ、CO2が少ない移動方法、飲み物容器から考えるライフサイクル、家電から考える家庭での省エネ、快適な住まい環境(断熱)、生物多様性)
- わたしのアクション
- 地域の脱炭素事例
- サンガからのメッセージ(裏表紙)
裏表紙に表現された『京都サンガF.C.からのメッセージ』には、気候アクションにかけた思いが表現されていて、「ともに未来を変えていきましょう」と結ばれています。冊子『サンガ エコ・パスポート』は、ホームページでも紹介されているので、是非ご覧ください。
京都サンガF.C. 冊子『サンガ エコ・パスポート』
環境学習に取り組む学校での実施

京都サンガF.C.環境教育では、子どもたちが授業を通して気候変動の現状や原因を学び、身近な行動変容を促すことを目的としています。授業は小学校4~6年生を対象に、京都サンガF.C.の現役選手が「Jリーグ気候アクションアンバサダー」として先生役を担い、オリジナル授業を行います。「Jリーグ気候アクションアンバサダー」はJリーグ全体で数十名が登録され、各クラブが取り組む気候アクション、環境問題に関わる取組のアイコン役となって活動をしています。
最初に学習会を実施した小学校は、サンガスタジアムのすぐそばにある亀岡市立亀岡小学校の4年生でした。亀岡市では2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指しており、市内の小学校では地域を流れる保津川でエコラフティングにチャレンジし、自然と触れ合ったり、川ごみの現状を調べたり学んだりする体験型の環境学習が行われています。学習の中では、飲み物容器のライフサイクルを考える場面で、ごみ問題に取り組んだ経験を活かし、考えた理由を熱心に説明する児童の姿が特に印象的でした。学習会は、ディフェンダー(DF)を務める永田倖大選手が先生役を担い、気候ネットワークがそのサポートを行いました。選手から伝えられた体験談では、暑さが年々過酷になってきていて、熱中症対策のため練習時間を早朝にしたり、日没後にしたりして体調管理をしていることや、質の良い睡眠をとれるよう、就寝1時間半前にはスマホなどの光が目に入らないようアロマキャンドルなどを使って工夫していることが伝えられました。学習会の様子は、当日、地元のテレビ局KBS京都の夕方のニュースで報じられ、子どもたちが家庭で学んだことを話題にするきっかけとなりました。
次に、京都市立七条小学校の4年生の学習を実施しました。京都市主催で気候ネットワークが全校を対象に実施している「こどもエコライフチャレンジ」に取り組んだ子どもたちとの学習会となりました。七条小学校の4年生の児童たちは、これまで学んできた気候変動問題やエコライフについて振返りつつ、現役のサッカー選手を前に目を輝かせ、グループで話し合う時間には、選手を交えて真剣に考えている姿が印象的でした。児童たちからは、温暖化を止めて、安心して暮らせる未来にしたい。そのために電気の使い方や、ごみにならないような物の選び方をし、家族とも環境の話をしてみんなで一緒に取り組んでいきたいという力強い発言がありました。学習後の選手への質問タイムに、児童の一人から「サッカーをやっていて一番うれしかったことは何ですか?」と問われ、先生役を担ったミッドフィルダー(MF)を務める中野瑠馬選手は、「チームが一つになって、自分のところにボールが来て、初ゴールを決められたことです。ゴールを決めるのは一人が決めるけれど、それはパスをつなぐチームメンバーやチームを支えてくれる人や応援してくれるサポーターの方たちの心が一つになることで実現できるので、それが本番の試合で実際にできたことは、本当にうれしかった。」と、その時の感情をかみしめるように伝える場面がありました。その内容は、みんなが協力して困難や苦労を乗り越えた先に見えてくるものがどのようなものなのかを想像させられる場面となりました。リアルな体験談を通して伝えられた言葉が、子どもたちの心に響いたことは間違いありません。
最後は、京都府南部に位置する城陽市立久世小学校で120名の4年生の児童との学習会でした。先生役を担ったのはディフェンダー(DF)を務める飯田陸斗選手でした。12月の体育館での学習会でしたが、寒さを吹き飛ばすほどの熱量で、飯田選手の問いかけに子どもたちは積極的に手を挙げて考えたことを発表していました。先生たちもそんな児童たちの様子を温かく見守ってくださっていて、今日学んだことをもとに、5年生の郊外学習に位置付けている環境学習にも活かしていきたいとおっしゃっていました。学習の最後に飯田選手が「今日の気づきを大切にして、電気を消すとか、暮らしの中でちょっとでも気にかけてくだいね」と、一生懸命言葉を選びながら伝えた場面からは、アンバサダーとしての使命感が伝わってきました。
🎤参加した児童は終了後、地元のテレビ局のインタビューに次のように感想を伝え、学びを発信しました。
児童A:「暖房とかクーラーを使う夏や冬には、早く寝たりしたら、使う時間が減るから、CO2を出す量が少なくなるんじゃないかと思いました」
児童B:「出かけるときは、CO2がたくさん出る乗り物をそんなに使わないようにしたいです」
児童C:「なるべくお母さんの車とかに乗らずに自分の自転車や歩いたりして近くのところに行きたいなと思いました」
さらに、飯田選手は今回の授業で経験したことを次のように振り返っていました。
「まだ学ぶ側だとずっと思っていたんですけど、こうやって自分より下の世代に自分が伝えることが大事だと改めて思いました。なんて言ったら楽しく聞いてくれるんだろうとか、チョウ監督が(普段の練習などで)工夫してくださっている考え方は改めてすごいことだと思いました。」
内容は、2025年の年末に放映され、多くの地域の方々へ発信されました。
授業の様子(京都サンガF.C.のHP)
それぞれの学習会後は、選手と子どもたち一人一人と触れ合う時間もあり、全員にエコ・パスポートが配布されました。手に取った児童たちは早速読んでみたり、書き込んだりしていました。エコ・パスポートが家庭での話題作りのきっかけになり、今後の気候アクションへつなげていくことに期待が膨らみました。
市民と交流する試合前の気候アクション

京都サンガスタジアムの最大集客人数は21,623名だそうです。一同に試合を観戦し、サポーターがチームの大きなフラッグを翻して応援する様子は迫力があります。サンガスタジアムでの応援にはほとんどの人が、マイボトルを持参しています。ごみの回収も徹底されていて、ボランティアの方々が丁寧にごみの分別のサポートを行い、観戦席周辺でごみが散乱していることは全くありません。サンガスタジアム内で販売されている食べ物を入れる容器は全て紙で、スプーンやフォークなどのプラスチック類は全く見かけることはありませんでした。

気候ネットワークは、2025年12月、2026年2月の2回にわたり、サンガのホームゲームの試合前に気候アクションブースで市民ボランティアさんと一緒に来場者と環境問題を考える機会をいただきました。ブースには、通算約300名以上の方々にお立ち寄りいただくことができました。「将来サッカーをやりたい!」という子どもたちのコメントから、気候アクションについての会話を広げることができる場面もありました。また、親御さんからの「子どもの夢をかなえさせてやりたい」という言葉に触れることもできました。協力してくださったボランティアのみなさんも、私たちの説明や会話を見聞きしながら、気候変動問題に興味を示され、気づけば熱心に来場者に声掛けや説明などをされておられ、ボアランティアさん同士で熱く語り合っておられたのが印象的でした。
2026年2月の気候アクションブースの一角では、未来の夢を参加者に書いてもらって完成させる「わたしの夢の木」のワークを実施しました。好きな色の付箋氏に、ペンや、木炭鉛筆などで将来の夢を書いて模造紙に貼っていただきました。紙袋や梱包材などの廃材を活用して気候ネットワークのインターン生が作った模造紙の木の根元には、子どもたちが今取り組んでいるエコライフを表現し、気候アクションが夢の実現のための取組の一つであることを見える化しました。

日常の風景を守ること
スポーツは、健康維持や子供たちの成長にプラスの影響を与えるだけではなく、他者との交流にもつながり、また、未来のスポーツ選手を産み出す基盤にもなっています。地域でスポーツを楽しむ人々の声や風景が、心を豊かにしてくれることもあります。市民にとってかけがえのない風景を守るためにも、地域密着型の取組をこれからも応援していきます。

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