京都府宇治市にあるウトロ平和祈念館では、市民再エネプロジェクトin京都と協力し、9.3kWの太陽光発電設備が設置されました。4月30日にそのお披露目会である点灯式が行われ、気候ネットワークのスタッフと、ボランティア2名が参加しました。

ウトロは、戦時中に京都飛行場建設に集められた在日朝鮮人労働者たちの飯場跡に形成された集落で、戦後もここに残らざるを得ず、日本社会から置き去りにされたウトロの住民は、貧困や土地問題、差別など、さまざまな困難と闘い歩んできた歴史があります。

平和祈念館は「人権と平和の大切さ、共に生きることの意味を伝えていける場所」として建設され、その開館1周年の式典と合わせて、今回の点灯式も行われました。観客の拍手とともに「おひさま発電所」と大きく書かれた看板と、発電量などを表示するEMSパネルが披露されました。

その後、発電設備の見学ツアーが行われ、屋上に設置された太陽光パネルを見に行きました(490Wが19枚、計9.3kW)。架台には、平らな屋根にも適しアンカーを打ち込む必要がない、低重心架台が使用されていました。地上には7kWhの蓄電池を2台備えており、災害などの停電時にも電気を使うことができます。

きょうとグリーンファンド」による市民参加型「おひさま発電所」は、2001年から始まり、これまで京都府内の保育園・幼稚園、福祉施設などに設置され、これで25か所目で、総発電規模は200㎾以上となりました。今回のウトロでの設置費用は、市民からの寄付、市民再エネプロジェクト基金、一般財団法人ウトロ民間基金財団の資金等でまかなわれ、寄付額は210万円以上に及びました。発電設備の見学にも多くの人が参加し、人々の関心が高いことが伺えました。

気候変動と人権

午後には、“ウトロで考える「環境問題と人権」”というテーマで座談会が開かれ、スタッフの延藤が気候変動についてのインプットトークを行いました。気候変動の原因や影響を説明し、省エネや再エネなど、気候変動を抑える取り組みを取り上げながら、市民発電所の意義を伝えることができました。


そして、ウトロ平和祈念館のスタッフ、安さんからは、気候変動と人権の密接な関係についてお話がありました。一部の人々が地球の資源を大量に消費してきたことで世代間・地域間での不公平が生まれていることや、資源調達や消費の観点でいまだ植民地主義的構造が残っており、気候正義の観点が非常に重要となってくると説明いただきました。問題解決のために地域からできることはたくさんあり、ウトロからできることとして、エネルギーの地産地消を進める、地域から差別や不公平を乗り越える、という2点を挙げられました。

ウトロ地区では昨年夏に偏見・嫌悪感に基づく放火があり、複数の建物が焼けてしまいました。私たちは皆、身の回りに潜む差別や不条理と向き合う必要があります。そのような中、「より広い想像力で差別や搾取のない世界を選ぶこと」が大事である、という安さんの言葉が心に残っています。

そこで、「見ないふりをする、知らない...など、気候変動と差別問題の根っこは同じ」と、ウトロ平和祈念館の阿部事務局長が式典のスピーチで仰られていたことを思い出しました。人間は素直に受け入れがたい情報を意図的に排除したり、無意識に避けたりしがちですが、正しい事実を多くの人たちに知ってもらうことが大切だと強く感じました。

座談会の最後に「気候変動でも社会問題でも、取り組むうえで、みんなが安心できる場所があることが大事」とFridays For Future Kyotoの進藤さんが仰っていたことも、とても重要な視点であると再認識しました。

ウトロ平和祈念館×おひさま発電のように、さまざまな人々が集まり、安心できる、そして課題に共に向き合える場所が全国に広まっていってほしいと思います。

この記事を書いた人

菅原 怜
菅原 怜
気候ネットワーク京都事務所スタッフ