こんにちは! 8月から気候ネットワークでインターンをしております、佐野栞です。9月12日に、自然エネルギー学校・京都2020の第4回「地域でできる?!自然エネルギー100%」がオンラインで開催されました。講師は京都大学の諸富徹さんと株式会社イー・コンザルの榎原友樹さんです。今回もそれぞれの講師による講演、質疑応答、少人数での交流会というプログラムで行われました。この会のもようを、初めて参加した一学生の視点から記してみます。

1.地域密着のエネルギー会社「シュタットベルケ」

 開会直後に始まった諸富さんの講演、その内容は、前半が日本の地方の抱える課題と解決の方向性について、後半がドイツの「シュタットベルケ」というエネルギー会社の紹介と日本の地域新電力の取り組みについてというものでした。

 地方は現在、そしてこれから、急速な人口減少とインフラ老朽化という課題に悩まされることとなります。財政難、さらには人・お金の流出という課題から地方を救うための解決策の一つとして登場したのが、自然エネルギーです。自然エネルギーはどこにでもあり、小規模での運営ができることから、域内資源でお金を作り出し、回し(この循環構造を地域経済循環と呼びます)、地域に貢献する可能性を持っているのです。

 ドイツでの成功例として、シュタットベルケが紹介されました。シュタットベルケとは、地域のサービスを提供する事業体(日本で言えば地方公営企業)ですが、発電・送配電・電力小売りを中心の事業として、交通や市民プールといった市民サービス事業も手がける点が特徴です。生活を支えるインフラ事業は、収益性の高い電力部門の利益で回っているのだそうです。

 日本でも、シュタットベルケをモデルとした電力企業が、地域住民の手でいくつも生まれてきています。それらは地域新電力というカテゴリーに入ります。記事を読まれている方も、我が家での地域新電力との契約を検討したことはあるでしょうか? 収益で地域の課題解決を目指す会社もあるので、地域貢献という道から、電力会社を選びなおしてみるのも良いかもしれません。私の下宿や実家のエリアにも供給がされているようなので、家族で検討してみます。

2.社会・自治体・企業が動き出している

 続いて、環境・エネルギー分野のコンサルティング会社および地域新電力を立ち上げた榎原さんに講演していただきました。榎原さんは日本各地の先進的な取り組みなど、実際の動きを主に紹介してくださいました。

 コロナ禍からのグリーンリカバリーの話題も耳にしますが、社会全体で脱炭素化への動きが段々と大きくなってきています。自然エネルギーへの転換は、CO2ゼロ社会に必須だと榎原さんは言います。

 「2050年までにCO2排出ゼロ」を宣言する日本の自治体が増えてきましたが、具体的に行動に移せている地域はまだ少ないのが現状です。先進事例である長野県が「気候危機突破方針」でプランを示したように[1]、取り組みを進めるためには、まず大まかでも目指すところを決め、見えるようにすることが大事であるのかなと感じました。

 ベンチャー企業は様々な先進的取り組みを行っており、自然エネルギーを利用した電力会社、発電所と消費者をつなぐハブ企業、榎原さんの関わる地域新電力「能勢・豊能まちづくり」での挑戦などについて教えていただきました。

3.質疑応答と交流会

 質疑応答が活発に行われた後、地域ごとに4~5人のグループで感想や自分にできることを語り合いました。

 私の参加したグループでは、質疑応答の時間でも明らかになった、自然エネルギー設備導入のハードルの低さと課題の両方について話しました。自然エネルギー電力の導入を検討されている団体の方、個人の方などがいらっしゃり、各人の立場でできることや、もっと普及させるための方法を洞察しておられました。経験豊富な人に囲まれて萎縮しかけた私のまとまらない話を、うんうんと聞いてくださる優しい方々でした。

4.まとめ

 気候変動を止めるため活動する気候ネットワークですが、この第4回では、分散型発電の「地域の経済・社会に貢献する」という面が一貫して強調されていました。なんのために自然エネルギーを使うのか、様々な目的がありうるのですね。じつは、気候変動対策よりも、地域の活性化を目的として自然エネルギーを推進する自治体の方が、具体的な事業化の段階により早く至っているという調査結果もあります[2]。事業への住民の協力が集まることが、自然エネルギー普及のために大切なようです。

 最後に、受講者の方々と交流した私の感想は、「この分野に詳しい方や、実際に携わっている方がこんなにいるのか!」というものでした。第3回に参加したインターン仲間たちに、ハイレベルに学べる会だと聞いていたのですが、予想以上で圧倒されたりワクワクしたりしたものです。

 正しい知識も人のつながりも、行動を支えます。いつまでも学びが足りることはないようですね。

 次回は西粟倉村の白籏佳三さんを講師にお招きして、9月26日に第5回が開催されます。

参考

[1]長野県気候非常事態宣言・気候危機突破方針 

[2]山下英俊, 藤井康平. 「日本の地方自治体における再生可能エネルギーに対する取り組みの現状と課題」サステイナビリティ研究, 6, pp.57-70, 2015.