京都事務所の山本です。この間、京都は猛暑に襲われており、連続猛暑日は、12日間を記録しました。祇園祭・花傘巡行も暑さで中止となるほどです。温暖化の深刻さを実感します。
電力小売全面自由化。大阪ガス・東京ガスは脱原発か?
2016年4月に電力小売全面自由化がスタートしました。その際、脱原発のためにはまず「脱・東京電力」「脱・関西電力」をしようとの訴えが多くありました。あれから2年が経過しましたが、現状はどうでしょうか。
電力自由化で大手ガス会社に流れる顧客
関電管内では自由化前の顧客の約15%にあたる168万件が新電力へ移行しました。それらの最大の受け皿となったのが大阪ガスです。
約61万件が大阪ガスへシフトしました。脱原発や持続可能な地球社会の実現のことを考えると、果たして、本当にこれで良かったのでしょうか?先日、そんなことを考えさせられる報道がありました。
日本ガス協会会長が「原発の再稼働は必要」と明言
日本ガス協会の会長である広瀬道明氏(東京ガス社長)は、就任の記者会見において「原子力発電所の再稼働は必要だ」と話したと報じられました(2018.6.14日経新聞)。
その理由として、2011年の東日本大震災における経験をあげ、
「国内の原発が停止し、天然ガス火力発電で代替するため、日本の液化天然ガス輸入量が急増し、価格が急騰したため調達に苦労したことから、ガス会社にとっても原発は再稼働してもらう必要がある」
との見解が示されました(日本ガス協会の副会長は、大阪ガス社長の本荘武宏氏です)。
これは、第5次エネルギー基本計画(案)が最終段階に入ったタイミングで、政府の原発維持方針を後押しすることを意識し、ガス業界を代表する立場として発言したものと受け止められます。これまでのガス会社の「クリーン」なイメージが、変わったという方もいるのではないでしょうか。
クリーンなフリして、実は汚い?原発と石炭を進める大阪ガス・東京ガス
原発に固執する既存の大手電力会社に対する市民の怒りは当然のことです。
しかし、その感情をガス会社は巧みに利用し、「原発フリー、クリーンな天然ガス火力と再エネを推進」ととれるようなメッセージを全面に展開し、顧客獲得をしてきました。しかし、先日のガス協会会長の発言を聞く限り、実際には原発推進だったというわけです。
しかも、ガス会社の狡猾なイメージ戦略は、これだけに留まりません。これまで「ガスは石炭・石油と比べてクリーン」と宣伝してきているにもかかわらず、裏では、環境負荷が極めて高い、石炭火力発電所も推進しているのです。
大阪ガスが進める石炭火力発電所
例えば、大阪ガスはすでに自社の子会社が石炭火力発電所を所有、新たな建設計画も2基あり、うち1基は稼働に入りました。まだ環境アセスメントの手続き段階にある、山口県宇部市に計画されているもの(60万kW×2基)に対して、市民が脱石炭を求める声を上げていくことが重要です。複数の市民団体が、大阪ガスの社長に、石炭火力建設計画からの撤退を要請する手紙を送っています。
もし、脱原発・クリーンなエネルギーのためにと思って大阪ガスへパワーシフトしたという方は、大阪ガスからのパワーシフトを検討されてはいかがでしょうか。また、はがきアクション等を通じてガス会社にその声を伝え、脱原発・脱石炭への方針転換を求めてはいかがでしょうか。
(参考)
東京ガス・大阪ガスが進める石炭火力発電計画をウォッチ
東京ガスが進める石炭火力発電所計画:東京湾
一方、東京ガスは、出光興産、九州電力と手を組み、千葉県袖ケ浦市に合計200万kWもの巨大な石炭火力発電所を建設しようとしています。千葉県沿岸には、すでに多数の火力発電所が立地しており、大気汚染や温排水による海への影響もあることから、さらなる火力発電所の立地に地元住民らは反対の声をあげています。
そこで、東京ガスの社長に対して、建設計画を見直すように手紙を送るキャンペーンを実施しています。このような効果があったのか、東京ガスの広瀬社長は「計画を慎重に検討する」とメディアの取材に答えています。市民が声をあげることが重要です。
脱原発と脱石炭をセットですすめよう!
1990年以降、政府は、温暖化対策として原発を低炭素電源とし、設備容量を増やす傍ら、燃料費が安く、高炭素な電源である石炭火力の設備増強を進めてきました。しかし、ご存知の通り、原発は政府の想定通りには増えず、稼働することも殆どありませんでした。むしろ、国全体のエネルギー消費が増える中、バックアップする石炭火力の稼働増により、原発による排出削減を相殺する結果となり、日本の温室効果ガス排出はなかなか減ることはありませんでした。
状況が変わったのは2014年です。再生可能エネルギーと省エネの進展により、原発稼働ゼロにもかかわらず、温室効果ガスの排出が前年比減少しました。実に皮肉な結果であると共に、私たちが目指す方向も明確になったのではないでしょうか。
エネルギー政策の転換、パリ協定の目標達成は、一朝一夕には実現することができません。電力の小売り全面自由化に続き、都市ガス自由化も始まりました。しかし、これらは変化の入り口です。これからも引き続き、コンセントの向こう側を見つめ、市民が厳しい目で冷静に見ていくことが重要です。
※ぐりふぁんLetter Vol.36 2018.7より一部加筆、掲載
【参考】
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