こんにちは。東京事務所の桃井です。
さて、今日はいつか書こう、書こうと思っていたことの一つについて書きたいと思います。
自然冷媒の業界専門誌「ACCELERATE(アクセレレート)」
世の中には、ごく普通に生活しているとほとんど知る機会がない、特定の分野の人に向けた専門誌というのが結構たくさんあります。今から紹介する専門誌「ACCELERATE」も、超ニッチな「自然冷媒」という話題だけでほぼ全ての記事が構成されるレアな冊子です。この「ACCELERATE」、もともとはヨーロッパとアメリカで先行されていましたが、昨年から日本語版がつくられるようになりました。私がここでオススメしたいと思ったのは、昨年「フロン排出抑制法」が全面施行となり、フロン対策をなんとかしていかないといけないと思っている全ての企業の方にはぜひ読む価値があると思っているからです。
今、地球温暖化対策としてHFC対策が進められる中、フロンではなく自然冷媒を選択する企業が増えています。そんな事例がかなり細やかにインタビューをした上で紹介されています。この冊子の目的は明確で、自然冷媒を導入する企業や仲間を加速度的に増やすことを目指しています。つまり、私が長年取り組んできたフロン問題への解決策が、この冊子に凝縮されているのです。
日本での自然冷媒のリーディングカンパニーは?
ということで、「ACCELERATE」を読めば、日本の企業の中で、どこがリーディングカンパニーになのかもよくわかります。
まずは、日本版第一号の表紙を飾ったローソンは、間違いなく国内第一位の自然冷媒導入企業だと言えるでしょう。コンビニのショーケースの冷媒をすべてCO2冷媒にすることを目指し、導入数は「世界一になる」とも断言しています。そのローソンの目標の実現に向けてメーカーとして機器を供給しているのが、Panasonicです。競合他社が未だ安いHFC機器を作り続ける中で、がんばっています。この他にも、自然冷媒と言えば前川製作所というくらい、産業用部門での自然冷媒機器を世界的に展開している企業もあります。
一般にも広げたい「自然冷媒」の知識と情報
随分広がりがあるように見える自然冷媒ですが、実は、未だHFCの方がコスト、制度、技術的に有利な状況です。その構造は、化石燃料と自然エネルギーの関係にも良く似ているところがあります。いずれは全部自然冷媒にする必要があると思いますが、そこに向かうには高い壁がつくられてしまっているのが現状です。なので、私たち市民は、自然冷媒を選択する企業を応援し、広めていくことが大事だと思っています。
ニッチな話題とはいえ、私たちの生活に大きく関わり、私たちの行動が、フロン問題の解決の大きなカギを握っているのだと思っています。つい最近では、ストップ・フロン全国連絡会が次のようなアニメーション動画を作成しました。
めざせ「ノンフロン」の世界 ~すすめよう!ナチュラルファイブ~
この動画で言わんとすることは、ACCELERATEの、2016年5月/6月版に私の寄稿でもご紹介していますので、以下に寄稿文も転載しておきたいと思います。もしお時間がありましたら、お読みください。
それでは、また近いうちにブログ更新するようにしたいと思います!
❏歴史に学び、自然冷媒へとカエル飛びしよう!私がフロンによる環境問題に取り組み始めめてから20年もの歳月が流れた。当時はオゾン層破壊が加速していた時期で、モントリオール議定書のもとCFCは全廃され、HCFCも段階的削減の対象とされた。当時、フロンは機器の廃棄時などにその全量が放出され、制度上の措置もなく野放しだった。市民感覚で見ると全量放出が野放しにされている状況はおかしい、と回収破壊を義務づける法制化を求める運動が巻き起こり、そこに参画したことが私の活動のはじまりだった。 一方、その当時のフロン問題に対する日本政府の方針といえば、オゾン層破壊物質の生産規制実施のために、代替物質への転換を強力に推奨していた。洗浄剤やスプレーでは「脱フロン」が進む一方、冷媒では「自然冷媒」ではなくHFCへの転換が推進された。HFCが強力な温室効果ガスであることは当時から明白だったが、カーエアコンや冷蔵庫はHFC134aへ、エアコンはHFC410Aへといった具合で「代替フロン」へと急速に転換が進められた。HFC134aの冷媒を使った冷蔵庫などは、地球のことを両手でつつんで守るようなマークが貼り付けられ、「代替フロンは環境によい」と印象づけられてきた。当時、欧州でグリーンフリーズが登場して脚光を浴びたが、日本では家庭用冷蔵庫の使用冷媒が自然冷媒に切り替わったのは欧州での発売から10年後のことだった。 今、オゾン層破壊の問題が完全に解決したとは言いがたいが、オゾン破壊の危機的な状況は回避できたとされ、モントリオール議定書の成果として語られている。しかしながら、人類が直面する最大の危機である“気候変動”が現実のものとなって迫ってきている。もはや決して将来世代の問題ではなく、今現実に起きている問題である。地球の平均気温はここ数年、毎年のように記録を更新し、科学者の予測を上回る勢いで北極海氷が融解し、グリーンランドをはじめとする氷河の減少、熱波や干ばつ、集中豪雨などの異常気象も世界各地で次々と報告されるようになった。小島嶼国は海面上昇によって国自体の存続が危ぶまれ、各地で続く異常気象の影響は経済全体にも影響を及ぼし、さらには例えばシリアで起きているような紛争の引き金になっていたりもする(シリアでは2006年から2010年に大干ばつに見舞われ、農業に大打撃を与えた)。 地球温暖化の要因は人間活動によるもので、その大部分は化石燃料を燃やすことによるCO2の排出である。そしてHFCもCO2の数千倍もの温室効果がある。ここで考えなければならないのは、かつて国内政策としてオゾン層保護のためにHFCへの転換が推奨されたことは果たして良いことだったのかということである。HFCに切り替えずに一足飛びに自然冷媒への転換を目指していれば、気候変動への影響をわずかながらでも回避できたのではないだろうか。 また、現在、HFCが強力な温室効果ガスであることから、段階的に削減していく、というのが世界の潮流だ。オゾン層保護のためのモントリオール議定書締約国会合では、2009年に米国・カナダ・メキシコの共同提案として「HFCの段階的削減」が提出された(北米提案)。この時は中国やインドなどの強力な反対で合意には至らなかったが、2013年には米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席の米中会談でHFC規制の合意に至っている。日本のメディアではほとんど話題にされなかったが、の間では極めて明るいニュースとして受け止められた。さらにEUでは2013年にFガス規制を強化しHFCの段階的削減を導入、日本でも「フロン回収破壊法」の大改正で「フロン排出抑制法」が成立し、HFC規制に対応している。オゾン層保護対策が終わったら次はHFC規制へとめまぐるしく変化するフロン対策に、ユーザーは振り回されてきた。 少し話は飛ぶが、つい先日にあたる2016年5月に富山市で開催されたG7環境大臣サミットの結果として、日本の大手新聞社は「HFC規制で合意」などと大々的に報じたが、既定路線を改めて確認した程度のものと私は受け止めている。2009年の「北米提案」や2013年の「米中会談でのHFC規制合意」の方が遥かに意義深いが、これらを報じなかった大手各紙が、「G7環境大臣会合」の“成果”として報道するのは、気候変動政策の本丸である「パリ協定」の実施に向けた温室効果ガス削減目標の深掘りや再エネ・省エネなどエネルギー分野に関連したトピックスで成果を挙げられなかったことの裏返しだと感じている。 さらに言えば、実際のところ、今の日本政府や業界団体のHFC削減強化の方針としてとられているのは、エアコンの冷媒をHFC410AからHFC32へ、カーエアコンはHFC134aからHFC1234yfへと「よりGWP値の低い物質」への転換だ。2014年4月に全面施行となった「フロン排出抑制法」も基本的にはこの動きをとして昨年決定した「フロンラベル制度」は、GWP10以下程度であれば、HFCであっても自然冷媒と同じ扱いで「ノンフロン」と表示ができる。今度は、低GWPのHFCが「環境に良いもの」であるかのような印象を消費者に与えかねない措置である。 自然冷媒とHFC1234yfのような低GWPのFガスでは明らかに性質が違う。前者は自然界にも存在する物質だが、後者は人工的に作られた化学物質で燃焼すればフッ酸など毒ガスを発生する。また、分解後のフッ素化合物による人体への健康影響や環境影響などのリスク分析が充分に行われているとはいえず、さらなる環境問題を引き起こしかねないリスクが多分に考えられる。 ここで思い起こしたいのは、先にオゾン層保護対策としてHFCへの転換を促した結果、気候変動のリスクを加速化させ、そしてビジネスに二重投資を迫っているという現実である。だからこそ今、HFC削減強化のチャンスを活かし、自然冷媒へと向かう方が環境影響を低減させるだけでなく、経済面においても低減するなど長期的なメリットは大きいはずだ。 近年、sheccoが活動しているように自然冷媒ビジネスを後押しする動きが生まれ、自然冷媒導入の事例が増え、そのネットワークが拡大していることを心から歓迎し、引き続き同じ方向を目指していきたいと考えている。(了) |
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