こんにちは。東京事務所の桃井です。
日本の温室効果ガス削減目標最終調整
2020年以降の温室効果ガス削減目標案(INDCs)の国連への提出が遅れている日本ですが、先週から政府が2030年の目標案を調整しているという報道が飛び交っています。主要新聞のタイトルを並べてみると次のとおりです。
- <朝日新聞>温室効果ガス削減、25%程度で調整 2030年の目標(2015年4月24日)
- <産経新聞>温室効果ガス削減目標、政府が25%程度で調整(2015年4月24日)
- <毎日新聞>温室効果ガス削減:「約25%」案 欧州水準、遠く及ばず(2015年4月25日)
- <読売新聞>温室ガス30年度26%減目標…EU上回る水準(2015年4月25日)
朝日新聞と毎日新聞には基準年が書いていませんが、読売新聞は2013年から26%程度しています。2005年比でみると25%程度ということでしょうか。これを、読売新聞の見出しでは「EUを上回る水準」などとしていますが、1990年比で少なくとも40%削減するというEUと比べて「上回る」とするのは完全にミスリードです。90年比でみると日本のこの目標値は17~18%減に相当します。つまり、毎日新聞の「欧州水準、遠く及ばず」の方が正確な評価でしょう。
気候ネットワークでも、24 日にエネルギーミックスの割合についての問題とともに指摘するプレスリリース「意欲のない温室効果ガス削減目標は受け入れられない 原発ゼロで温暖化対策の深掘りをすべき」を発表し、エネ庁の意見箱にも提出しました。たくさんの意見を多くの人たちからどんどん出していきましょう
欧州加盟国駐日大使からの日本へのメッセージ
ところで、昨年10月には2025年の削減目標を発表し、国連にもINDCsを先行して提出したEUですが、去る4月21日に、駐日欧州連合(EU)代表部とEU加盟国大使館の主催で、COP21に向けたセミナーが開催されて、大変興味深い議論が展開されていました。
セミナーでは、EU各国が取り組んでいる気候変動政策についての紹介や「気候変動への対応が経済に悪影響を及ぼすのか」という内容で2部構成で行われました。特記しておきたいのは、出席した駐日大使(ドイツ、デンマーク、フランス、スウェーデン、英国)からは、いずれも日本が省エネ技術など削減に貢献できるポテンシャルが高いにも関わらず、気候変動対策が後退していることに対して、早期に野心的な目標を掲げるべきだという投げかけがあったことです。
また、欧州ではビジネスに長期的な削減目標をかかげることで、ビジネス界でも温室効果ガス削減に向けて大きく変革し、経済成長とCO2削減が切り分けられていることが強調されていました。何よりも政治的な長期的ビジョンをかかげたポジティブなシグナルが重要であるということだと思います。
気候変動の危機や原発リスクの危機を共有することなく、2030年にも原発石炭に大きく依存している今のような政府の方向性は、ビジネス界に対するシグナルとしても混乱を与えるだけではないでしょうか。
出演者など
欧州代表部による報告ページもご覧になってください。
<パネルI> EU加盟国における気候政策の実施状況
- 駐日ドイツ連邦共和国大使 ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン氏
- 駐日デンマーク大使 A.カーステン・ダムスゴー氏
- 駐日フランス大使 ティエリ-・ダナ氏
- 駐日スウェーデン大使 マグヌス・ローバック氏
- 駐日英国大使 T.M.ヒッチンズ氏
- モデレーター:駐日欧州連合代表部通商部一等書記官 ウリ・ヴィエンリッヒ氏
<パネルII> 気候変動対策:業界にとっての新たなビジネスチャンス
- 日産自動車株式会社取締役 志賀俊之氏
- リコー株式会社サステナビリティ推進本部顧問 則武祐二氏
- ユニリーバ ジャパンCEO兼社長 フルヴィオ・ブアルネリ氏
- ロイヤル・ダッチ・シェル オランダ社長、ガス市場開発副社長 ディック・ベンショップ氏
- モデレーター:共同通信社環境・開発・エネルギー問題担当・論説委員 井田徹治氏
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