こんにちは!インターン生の田上真衣です。
6月22日に自然エネルギー学校・京都2024の第1回が開催されました。
今回は特定非営利活動法人気候ネットワーク上席研究員の豊田陽介さんによる「自然エネルギーに関する世界の潮流と日本の現状」の講演内容についてご紹介します。
自然エネルギー学校・京都とは?
2023年は世界の平均気温が産業革命前と比較して1.5℃近く上昇し、史上最も気温が高い一年となり、グテーレス国連事務総長はこの状況を「地球沸騰化」と表現しました。COP28では2030年までのエネルギー効率2倍・再エネ3倍が世界の目標として合意され、化石燃料からのエネルギー転換の重要性が強調されました。脱炭素化に向けた動きを加速する必要がある中、自然エネルギーを軸とした脱炭素社会の担い手が求められています。
自然エネルギー学校・京都は、1999年以来600名以上に参加いただいてきた体験型の連続講座です。2024年は全5回の講座を通して、自然エネルギーに関する最新情報及び基礎知識、実践経験などを学び、自然エネルギーを普及・啓発するための担い手となることを目指しています。
講演:「自然エネルギーに関する世界の潮流と日本の現状」
「自然エネルギーの最新動向を知ろう!」をテーマに、特定非営利活動法人気候ネットワーク上席研究員の豊田陽介さんが講演を行いました。豊田さんの講演では、世界の自然エネルギーの進展状況や日本の現状、さらに今後の課題について詳しく解説されました。
ここからは、豊田さんによる講演の内容を紹介します。
気候変動政策・対策の強化が必須
2016年に発効したパリ協定では、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としており、それ以降、日本も2030年には46%以上削減、2050年には実質ゼロを目指すようになりました。この目標を達成するためには、省エネだけでなく、化石燃料から自然エネルギーへの転換が必要です。COP28では、日本を含む118カ国が2030年までに世界の自然エネルギー容量を3倍に拡大し、エネルギー効率を2倍にすることに賛同しました。日本は2030年までに再生可能エネルギーの電力比率を50%程度に引き上げる必要がありますが、現行目標では36-38%にとどまり、政策・対策が不十分であることが明らかになっています。
自然エネルギーとは?
自然エネルギーは再生可能エネルギーとも呼ばれ、太陽光・熱、風力、水力、バイオマス、地熱などを含みます。これらのエネルギーは、自然による循環から生まれるエネルギーを有効活用するため、枯渇せず、大気汚染物質や発電時に温室効果ガスを排出しないため、環境負荷が非常に少ないのが特徴です。そのため、自然エネルギーの普及を進めていくことが気候変動対策としては有効です。
世界の潮流と日本の現状
日本では依然として石炭火力発電が電力構成の多くを占めていますが、世界の電力消費の約1/3はすでに自然エネルギーです。特に北欧では、2022年時点で自然エネルギー比率が60-80%に達してる国もあります。それに対して、日本は2022年時点で自然エネルギーの比率が21.7%にとどまり、天然ガス火力(33.8%)や石炭火力(30.8%)と比べても主要なエネルギー源とは程遠い現状です。同じアジア圏の中国でも、すでに30%以上が自然エネルギーであり、自然エネルギーの導入において日本は遅れをとっています。
再エネポテンシャルは電力供給量の2倍、コストは激減
自然エネルギーのポテンシャルと費用は、自然エネルギーの課題としてよく取り上げられるテーマです。しかし、日本では十分な自然エネルギーのポテンシャルが確認されており、環境省の試算によると、日本には電力供給量の最大2倍の自然エネルギーのポテンシャルが存在します。また、自然エネルギーのコストは、技術の進歩により急激に低下しており、太陽光発電のコストは2010年から2022年にかけて89%減少、陸上風力発電のコストは同期間で69%減少しています。
自然エネルギー普及の課題
日本で自然エネルギーを普及させる上での課題は何でしょうか?豊田さんは、自然エネルギーの普及を阻害する制度の見直しや、導入加速のための政策誘導・産業政策が必要だと指摘します。例えば、電力供給が需要を上回る場合、優先給電ルールに従って、自然エネルギーが抑制されています。しかし、このルールは自然エネルギーの無制限の出力抑制の可能性を含んでおり、自然エネルギー供給による利益が減ることが考えられます。結果的に将来の収益予測が難しくなることで、資金調達が困難になる可能性があります。自然エネルギーの普及には、このような制度の見直しが不可欠です。
また、世界的に自然エネルギーへの投資が増大する中で、日本には世界をリードする環境産業・環境技術を有しているため、産業政策として脱炭素・再エネを推進していくことが重要です。それによって排出量削減につながるだけでなく、経済の活性化や雇用の創出にも繋がります。
地域の発展につながる自然エネルギー
豊田さんは、地域資源である自然エネルギーを活用することで、地域のエネルギー自給や地域経済の活性化につながる可能性についても強調しました。化石燃料の輸入費用として、多い年には年間30兆円以上が海外に流出していますが、その費用を地域の省エネや自然エネルギーに活用することで、地域の資源供給者やエネルギー生産者はもちろん、メンテナンス業者や地方銀行にも還流し、地域内経済循環につなげることができます。また、地域の再エネ事業や省エネ事業は、雇用を分散させ地域にさまざまな職を生み出します。このように、自然エネルギーの推進は地域の課題解決にもつながる可能性があります。
最後に
今回の自然エネルギー学校では、多くの方々にご参加いただき、自然エネルギーの現状や課題、そしてその可能性について深く学ぶことができました。豊田さんの講演を通じて、日本が直面している課題とその解決策について理解を深めることができたと思います。
次回以降の自然エネルギー学校では、具体的な実践例や先進事例を紹介し、実際の取り組みに役立つ情報を提供していく予定です。また、参加者同士のネットワーク作りを通じて、共に学び合い、支え合うコミュニティの形成を目指しています。
皆さんの積極的な参加をお待ちしております。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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