こんにちは、インターン生の大友です。
12月に京都市にある蹴上発電所の見学会に参加してきました。見学会を通して、学んだことや実際に見てきた様子をお伝えしたいと思います。
水力発電発祥の地とその歴史
蹴上発電所は琵琶湖疎水(そすい)で得られる水力の有効活用の目的で、疎水建設の土木技術者として採用された田邉朔郎の提言のもと建設され、明治24年(1891年)5月に発電機2台で運転を開始しました。琵琶湖疎水とは、明治維新後の京都での人口減少を受けて、都市再生のために建設された京都と大津を結ぶ水路です。第3代京都府知事の北垣邦道の計画のもと建設が進められ、疎水の水は多くの目的に使用され人々の暮らしを支えました。水力発電もその一つであり、蹴上発電所は日本における水力発電事業発祥の地となりました。
そして、さらなる発電出力の増加を実現させるために、第2期蹴上発電所、続いて第3期蹴上発電所が建設されました。1942年には京都市から関西電力の前身である関西配電株式会社へ引き継がれ、100年以上たった今なお稼働しています。蹴上発電所では水路式を採用しています。水路式とは川の上流に小さな堤を作って水を取り、落差があるところまで水を導き、その落差を利用して発電する方式です。発電量が川の水量によって左右されるのが特徴です。
蹴上発電所の今と昔
地下鉄東西線蹴上駅から徒歩で5分ほどの距離にある蹴上発電所に到着し、発電所の門をくぐると大きな杉の木が私たちを出迎えてくれました。この日は少し雨が降り、あいにくの天気ではありましたが、見学の半分ほどが室内でしたので安心でした。
見学会には私たち以外にも2組ほどいて、一緒に見学を進めました。蹴上発電所では毎週金曜日の午前と午後の2回に分けて見学会を実施しているとのことで、新型コロナウイルスの感染拡大からは人足は落ち着いているようですが、以前は多くの方が見学に来られていたそうです。
見学者全員が集合し、まずは現在も稼働する第3期蹴上発電所の中の一室に入り、蹴上発電所の関西電力の職員の方から、発電所の概要をビデオやスライドを使いながら説明していただきました。
当時の写真をたくさん見せていただき、発電事業の規模の大きさと尽力された人々の偉業に感心しました。土木技術者として大きく貢献した田邉朔郎さんの当時の年齢は私とほとんど変わらず、若くして活躍していた田邉さんの姿を見て、私も気候アクションを頑張っていこうという思いが高まりました。
その後ヘルメットを装着し、職員さんの誘導のもと、発電所内の制御装置を見せていただきました。
現在、制御室は無人で、京都給電制御所より遠隔で操作を行っているそうです。
続いて、発電機を実際に見せていただきました。最初に上から見たのですが、発電所全体に響き渡る大きな音と初めて見る大きな発電機に驚きました。
うり二つの発電機が2機あり、写真(下)右側の発電機は現在もなお稼働しています。写真左側のもう一機は、現在は稼働しておらず、稼働停止後は練習機としても使われたことがあるそうですが、今は使用されていないようです。
そして実際に発電機に近づき、内部まで見ることができました。水力発電について詳しくなかったため、今回の見学を計画してから少し勉強をしたのですが、以前は大きな発電機の見た目とイメージから内部は細かい機器がたくさんあるのだろうなと思っていました。しかし内部はほとんど空洞で写真中央にある鉄の棒が回転して下の水車を回転させているということで、それを実際に見ることができて良い経験になりました。
室内での見学を終了し、かつて稼働していた第2期蹴上発電所(旧発電所)へと移動しました。この旧発電所は明治45年(1912年)に竣工した発電所だそうです。赤茶色のレンガ造りの建物が印象的で、アーチ状のデザインがとても可愛らしくおしゃれでした。正面中央に見える「功天亮(てんこうをたすく)」という文字が気になると思うのですが、この文字は当時の皇族である久邇宮邦彦王の櫃によるものだそうです。そして「水力エネルギーという自然の恵みを、人々の暮らしに生かす事こそ、天の意思に叶うものである」という会社の思いが込められているようです。
個人的に「自然の恵みを人々の暮らしに生かす」という言葉が印象的で、今も昔も変わらず、再エネの拡大を実現させていくうえでのキーワードだと感じました。
さらに移動するとアーチ型の放水口があり、こちらの放水口では発電に使用した水を放水しています。見学当時にも一番奥の放水口から大量の水が放出されていました。
蹴上には以前観光で訪れたことがあったのですが、その時は発電事業に関しては全く意識していなかったので、今回水力発電事業発祥の地ということを踏まえたうえで蹴上の地を見てみると、当時の痕跡が多く存在していてとても興味深かったです。蹴上には蹴上発電所のほかにも琵琶湖疎水記念館や疎水分線に水を通すために作られた、南禅寺境内を横断する水道橋である水路閣、船を通航させるために敷設された傾斜鉄道の蹴上インクライン疎水事業の足跡をたどることができます。
今回は時間の関係上見て回ることはできなかったので、また今回の見学で学んだことを思い出しながら訪れてみたいと思います。
せっかく京都という土地にいるのだから、京都になじみのある発電所、しかも水力発電発祥の地である蹴上発電所のことを詳しく知りたいという思いで見学を計画しました。蹴上発電所は稼働当初から人々の生活のそばにあり、今もなお京都の街に電気を送り続け人々の生活を支えているという水力発電事業の歴史を学び、実際に目で見てみて感じることができました。
インターンを終了して
今回の発電所見学をもってインターン活動は終了となります。短い間でできたことは少なかったですが、様々な場所に実際に足を運び、作業などに関わることで、本や講義だけでは得られないたくさんのことを学ぶことができました。そして日々アクションを起こしている素敵な人々と出会い、とても刺激を受け背中を押されました。インターン活動の経験を生かして、これからもアクションを続けていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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