東京事務所の平田です。
この度、2021年のゴールドマン環境賞の受賞に際し、たくさんのお祝いや激励のメッセージをいただき、また7月4日に開催した受賞記念のシンポジウムにも、多くの方にご視聴いただきまして、ありがとうございました。
この賞は、過去30年にわたって、自らを危険に晒して環境保護のために行動してきた人や、先頭に立って先駆的な活動を展開してきた人など、世界各地で素晴らしい功績を成し遂げた方々が受賞をしてきました。私よりもこの賞に相応しい人は他に大勢いるとも思っていますので、正直なところ、個人としての受賞については、戸惑いもあります。
それでも、受賞がとてもありがたいのは、気候ネットワークとしての気候変動を防ぐためのNGOの仕事はとても重要なものだと確信しており、ゴールドマン環境賞がその仕事に評価を与えてくれたことには大きな意味があると考えるからです。
気候ネットワークの二十数年のあゆみは、日本の気候政策や温室効果ガス排出の実態に長い間十分な改善が見られず、気候変動問題の解決という観点からはむしろ状況が悪化していることからすれば、十分な成果をあげられていないというべきなのかもしれません。しかし私たちは、活動を止めることなく、粘り強く、問題解決のための行動を重ねてきました。今回の賞では、その活動の中でも、石炭火力発電所の多数の建設計画に対して、これを問題化し、地域や他の団体・専門家とともに声を上げ、動きを作ってきたこと、そして50基の計画のうち今日までに17基(ゴールドマン受賞決定時には13基)が中止になったことに対し、大きな成果だと評価しています。実際には、さまざまな要因やアクターの動きによるものであることは事実ですが、NGOの活動は多くの場合見過ごされがちなので、きちんと認められ、その成果が評価されるということは、実はあまりないことだったのかなと思います。
その意味で、今回の賞は、石炭火力発電問題に取り組んできた、気候ネットワーク関係者全員に対するものであり、日本のNGOや市民活動に携わる人々が、限られた人材や予算の中で、苦難や孤独や重圧や苛立ちなどを抱えながらも奮闘してきたことへの激励だと受け止めています。これまでの皆様のご支援・ご協力に、感謝の気持ちでいっぱいです。
今回の賞で、初めて気候ネットワークを知る方もいらっしゃると思います。今、願うのは、これを機に、さらなる支援・協力・参加が拡大すること、そして気候変動に取り組む市民のうねりが大きく広がることです。
ここまでの石炭火力の取り組みは、「増やさないこと」に力を注いできたことに留まります。石炭火力を「減らすこと」を実現し、脱炭素社会を作っていくのはまさにこれからの仕事です。今後もこの人類史上の大きな問題の解決に挑んでいく所存です。引き続きのご指導・ご協力をよろしくお願い申し上げます。
参考リンク
平田仁子の受賞についての日本語プレスリリース(気候ネットワーク)
*2021年8月、成文堂より、平田仁子著『気候変動と政治』が出版されます。こちらもご注目ください。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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