2020年12月にスタートした気候キッズセミナー「未来のための気候の話」には、これまでに全国から200名以上の小中学生が参加しました。
第4回「コンセントの向こう側を考えてみよう」では、私たちがつかう電気がどこで作られ運ばれてくるのか、家のコンセントを起点に暮らしとエネルギーのつながりについて考えました。このブログではセミナーを通して得られたこどもたちの気付きに着目しお伝えします。
毎日つかう電気はどこから来ている?
地図を見て、「海沿いに発電所がたくさんあるから、電気は遠くで作られ、送られてきている」というこどもの発言がありました。日本の発電の実情を知り「発電所では石炭や石油、天然ガスをたくさん燃やして大量のCO2が出ている」「化石燃料のほとんどを外国からの輸入に頼っている」「化石燃料は使い続けるといずれなくなってしまう」という問題点にも気付きました。
日本のエネルギー自給率は7.4%と外国に比べとても低いことには「化石燃料が輸入できなくなったらどうなるんだろう」との不安の声が上がりました。
未来のためには、
どんなエネルギーを選べばいい?
日本が抱えているエネルギー問題を解決するために、「再生可能エネルギーをどんどん使えばいい」という意見が出ました。その気付きの通り、日本は風力、水力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーにとても恵まれています。再生可能エネルギーが国内で多く使われるようになると温暖化対策になるだけではなく、化石燃料を輸入するためのお金(2019年は19兆円)が日本国内で使えるようになる、仕事が増える、などたくさんの利点があるのです。
電気をきりかえるのは、とても簡単
セミナーのまとめでパワーシフトついて話し、家庭の電気を再生可能エネルギーをたくさん使っている電力会社にきりかえようと提案しました。実は、電力会社をきりかえる手続きは携帯電話を変えるよりずっと簡単なのです。
❏パワーシフト 未来をつくる"電気"のえらびか方
https://power-shift.org/
セミナー中は読むのが追いつかないほど多くのチャットメッセージが寄せられ、気候変動問題への関心の高さや危機感が伝わってきました。こどもたちからの質問は「このままではだめだ、なんとかしたい」という強い思いが込められていると感じます。ここにいくつか紹介しますので、こどもたちの声にぜひ耳を傾けてみてください。
温暖化を止めるために小学1年生でもできることはなんですか。それを何人に伝えたらいいですか?(小1)
回答:大人の人たちに「行動してください」と伝えていくことが大事だと思います。例えば家族に「いっしょにこんなことをやってみよう」と声をかけることも大事です。イギリスBBCの調査によると、3.5%の人たちが行動を変えれば社会が変わると言われています。100人のうち4人が行動を変えたら温暖化は止められるということです。30人のクラスだと1人2人が行動を変えるだけで大きな力になります。
行動する人をふやすことがとても大事です。まずは自分からはじめて行動する、そして周りの人にやろうと声をかける、特に大人に伝えることは重要だと思います。
CCSは害がないのか知りたいです(小5)
回答:CCSは「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれています。石炭火力発電所では石炭を燃やすとCO2が出てきます。CCSとは、燃やしたあとにでてくるCO2を他の気体と分離してつかまえて、大気に放出されないようにして、CO2を通さない(逃さない)地中深くに埋めるという方法です。
石炭火力発電所で炭素をつかまえる技術CCSを同時に使えばCO2をゼロにできるのではないかと期待されています。しかし、残念ながらまだ技術は確立されていなくて実験されているレベルです。これが実現できるようになるにはあと数十年かかります。開発されるまで待っているだけだと、温暖化は止められません。
CCSにはたくさんのコストがかかり、お金が多く必要となります。さらにCCSを利用するのにもエネルギーが必要で、今はつかまえられる炭素の量よりも使うエネルギーのほうが多いと言われています。つまりCCSをやればやるほどにCO2がでるような状況なのです。まだCCSだけでどうにかできるという段階ではなく50年くらい先の技術になるのではなかと思います。
地熱発電を続けたら地球の熱がなくなりますか?
回答:マグマの熱がすぐになくなることはありません。また地熱発電を行うと近くの温泉に影響を与えるという指摘もありますが、事前にしっかりとした調査を行って、利用していけば問題ありません。最近では九州の雲仙や九重などの温泉地で、温泉組合やホテルなどが温泉の熱を利用した温泉発電に取り組む事例も増えてきています。
パワーシフトをすれば、電力会社は化石燃料をやめてくれますか?
回答:その通りだと思います。使っている人が原発や化石燃料を使いたくないと意思表示をするのがパワーシフトです。例えば、原発や化石燃料を使っている電力会社は選ばれないと、その会社の売上がどんどん落ちて経営していくことができなくなります。だから会社は選ばれるために、再生可能エネルギーに経営方針を変えるのです。実際にドイツではそういう電力会社が増えてきています。みんなが原発や石炭を使っている電力会社ではなく、再生可能エネルギーを使う会社を選ぶようになってきて、大きな会社でも方向転換をするということが起こってきているのです。みんなが選べば社会は変えられるということです。
パワーシフトをするとき、よいか悪いかの区別は?
回答:電力会社がどんな電気を調達しているのかを確認することが重要です。例えば、供給している電気のうち何割が再生可能エネルギー(FIT電気含む)なのか、原発や石炭火力発電からの割合などを見て、できるだけ再生可能エネルギーの割合の高い電力会社を選ぶのがいいと思います。電気の内訳は、電力会社のHPなどで確認できます。中には環境に配慮していますという宣伝をしているにもかかわらず、電気の内訳を公表していない会社もあるので、そういった会社は選ばないようにしましょう。
「これまで知らなかったことを学べてよかった。」
「やはり、行動することが1番だとわかりました。」
「再生可能エネルギーを自分でも発見したいです。」
「なるべく電気を使わない。」
「パワーシフトの会社に変えたいです。」
セミナー後に寄せられたこれらの気付きは、これからの脱炭素社会に向けての大きな原動力となることでしょう。
こどもたちが大人になる頃も暮らしやすい地球であり続けるために、これからも「未来のための気候の話」をたくさんの人に伝えていきたいと思います。
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