こんにちは、東京事務所の稲葉です。気候ネットワークの職員となり1年がたちました。初めてブログを投稿いたします。
アスリートやスポーツファンとして気候危機を回避するために何ができるだろうか。そんな想いを胸に、今回は、トレイルランを楽しみながら環境保全や気候変動活動をされている二人のアスリート、新坂志保里さんとルイ・ブルツさんにインタビューしました。
志保里さんはコミュニティー・デザイナー、ルイさんはスペース・ロボティクス・エンジニアとして、新潟県十日町市松代でリモートワークをしながら、トレイルランナーやイベント企画・運営の活動をしています。
お二人は、今年6月に新潟県で開催されるトレイルランイベント「越後まつだい春の陣 トレイルランニング」の主催者、コースデザイナーでもあります。
スポーツ繋がりで出会い新潟に移住して、トレイルランを楽しみ、低カーボンフットプリント生活価値を創出
志保里さんは8年前までロードランナーでしたが、夏にトレイルランをしてみて、走りながら自然を楽しむ、その素晴らしさに魅せられたそうです。ルイさんは、子供のころから北米でサッカーやフットサルに夢中。大学卒業後は仕事で日本へ来て、スポーツ繋がりで交友を広げ、トレイルランのFacebookグループに行き着きました。そこで志保里さんと出会ったとのことです。
お二人は、自然の中で夏にトレイルラン冬にはスキー、良い仕事、住みやすい家と良い地域を求め、新潟に拠点を移しました。
志保里さんは、移住して地方での生活それ自体がとても良いと感じました。すべてが愛おしく、そして、カーボンフットプリントが少ないと言います。
ルイさんは、もっと多くの人たちが地方にきて日本全体のカーボンフットプリントが少なくなると良いなと思うそうです。地方でのリモートワークを是非考えて欲しい、きっと気に入ると思いますと。自然や、気候変動に興味をお持ちであれば、なおさら。地方に移住すれば、自分の健康に良いばかりか、地球の健康にも最高です、と熱い想いを語りました。
トレイルラン活動を通じ気候変動を意識
志保里さんは、新潟に移り住んでみて初めて、20数年前と比べると大違い、あたりに雪がなく地球温暖化がどんどん進んでいる、と感じたそうです。
ルイさんは、トレイルランのコース設計の際に現地を調べてみると、古地図にある小径が地滑りなどで跡形もなくなっていることに気がつくそうです。豪雨や台風などによるものですが、異常気象も気候変動の影響です。また、道路建設や採掘などで人為的に樹木を倒し、その後の雨や雪により、地盤が浸食されているとも。
また、ルイさんは大学時代に宇宙の研究をされていた際に、衛星観測データによりわずか2,3年間の前後の気候変動の影響などによる地形の変化も見ることができたと言います。
アスリートにとっての気候変動とは
志保里さんは、日本のトレイルラン人口は年々増加し、多くの新しいレースが開催されるようになり、とてもうれしいことと言います。一方で、多くのレースでは滅多に着ることのない大量のTシャツが配られ、多くのプラステック製コースマークが使われるなど大量のゴミを出している、と嘆いています。
トレイルランは自然の中でのレースなので、そのことを良く考える必要がある。スポーツの場を保護するには何をすべきか、レースにおいて実践するちょっとしたことが大切だと言います。トレイルランイベントは、多くの人が集まる場なので、「私たちはトレイルランナー、自然を愛し、故に自然を守るべき」と発信する良い機会とも。
ルイさんは、新しいレースでコースを選ぶ時、新しい道を作らずに、既にある小径をそのまま使うようにしているそうです。その際、環境汚染に関連する多くのゴミや廃棄物があることに気づき、コース設計の際にこれらの場所を特定しているとも。地域のコミュニティにおいて、どうやってこの問題意識を高揚させるかが重要だとお話しされました。
気候変動の取組みはチームワークと協調
ルイさんは、アスリートとして、生活者として、困難に立ち向かう時にいつも助けになったのは、チームワークと周りの人たちとの協力関係だったと言います。スポーツでも、生活でも、気候変動でも同じ、それはチームワークだと。
志保里さんも同じ考え。一人の力は限られているが、人が集まり協力すれば大きなことを成し遂げられると話します。
気候変動を意識し行動するのは面白い、完璧を目指さず第一歩を踏み出そう
気候変動を止めるためには、何か特別な行動を起こすことではなく、日々の生活の中で気候変動を意識することが大切と志保里さんは話します。それは、大変つらいことではない、何かをやめること。そして、それは面白い。マインドセットを変えること、視点を変えてみることだと話します。
ルイさんは、完璧を目指すより、行動を起こし第一歩を踏み出すことが大事とも。
インタビューを終えて
約1時間に渡るインタビュー。その間、お二人の環境保全や気候変動を意識したトレイルランや地方での生活への熱い想いが、ひしひしと伝わってきました。
我が身を振り返ると、筆者は先日の東京マラソンに出走したアスリートの端くれですが、お二人のようなグリーンアスリートには全くなっていないと、自省の念です。
東京マラソンでは、38,000人の参加者を始め、多くの大会運営者やボランティア、沿道で応援いただいた多くの方々が、化石燃料で走る交通機関を使って東京に集結しました。海外からの参加者も数千人規模で、膨大なCO2を排出する航空機で東京に来ています。レース当日は、スタート付近の両側には防寒用ビニールコートが無数脱ぎ捨てられゴミの山、レース後はポリエステル製の派手で立派な防寒ポンチョが配られ、「これは相当なCO2を排出して作られたものだな」と感じました。皆さん、帰宅の際にこれを1回だけ使うかどうか。私は、防寒着を持っていたので、1度も袖を通していません。私も含めた東京マラソン参加者が、それぞれ多くのカーボンフットプリントを残し、マラソンを楽しみました。少々複雑な気持ちです。
改めて、志保里さんの「Tシャツのゴミ」の問題意識に共感すると共に、お二人が、低カーボンフットプリント価値を求め、地方で生活し、アスリート活動をし、イベント運営をして、環境保全や気候変動活動を行っている、なんて素晴らしいことだろうと思うばかりです。
スポーツも生活もそして気候変動も、目標に向かって活動することは、つらいことではなく面白い。それらを楽しむこと、そして完璧を目指さない。
このことを今回のインタビューでお二人から教えていただきました。
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