こんにちは、気候ネットワーク京都事務所インターンの塚本です。普段は大学院生です。

この度、気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)に、気候ネットワークインターンとして2週間参加してきました。

COP25マドリード会議期間(12月2日〜13日(会議が延長したので実質15日まで))中、現地では、Fridays For Future(未来のための金曜日)や、その他さまざまな市民グループによる気候アクションが行われていました。

私もCOP25での気候アクションに参加してきましたので、写真付きで報告していきます。

*Fridays For Future:スウェーデンの気候活動家であるグレタ・トゥーンベリさんが、スウェーデンの国会前で毎週金曜に座り込みを続けたことをきっかけに広がった、世界中の若者が気候変動対策を求める社会運動/そのネットワークのことです。

 

世界中に広がる若者の社会運動

マドリードで50万人の気候マーチ

COP1週目には、スペインの首都マドリードのプラド美術館付近で50万人(主催者発表)規模の気候マーチが実施されました。

これには日本を含む世界各地のFridays For Futureのメンバーが参加しました。グレタさんも参加して歩いたそうです。彼女が歩く様子をカメラにおさめようと試みましたが、なにぶん参加者が多く難しかったです。

写真:各々の想いが込もったプラカードを掲げながら行進する若者達(筆者撮影)

COP会議場の内外で気候アクション

COPの2週目には、COP25会場内外で対策の強化を求める気候アクションが行われました。

写真:会議場内で座り込みをする若者(筆者撮影)

写真:会議場の外でビジネスパーソン(に扮した若者)が地球を破壊するアクション(筆者撮影)

 

若者が気候アクションで訴えたメッセージ

若者によるマーチやアクションを通じて、様々なメッセージが飛び交いました。そこで、主なメッセージを以下にまとめてみました。

若者による主なメッセージ
①1.5℃目標に沿った温室効果ガス排出削減目標の更新・強化を打ち出すこと
②2030年より早期段階での脱石炭の宣言
③自然エネルギー100%目標の策定
④気候変動の影響に脆弱な国・地域に住む人々(一次産業従事者・女性・先住民等)の人権を守ること

上記のメッセージについて、簡単に説明します。

①1.5℃目標

パリ協定の目標の一つである、今世紀末までに世界の平均気温の上昇を2度/1.5度に抑えるという目標があります。既に被害を受けている国々(海面上昇の被害が顕著な太平洋島嶼国が代表的)や温暖化対策に熱心な国々(EU加盟国や北欧諸国等)は、2度ではなく、1.5度というより野心的な目標を求めています。

②脱石炭

①で説明した1.5目標を達成するには、次の段落で説明するIPCCの特別報告書の科学的知見を受け、2030年までの脱石炭が求められます。

③自然エネルギー100%

1.5度目標を達成するために、2050年よりも早期段階で脱炭素社会を実現する必要があります。そのためには、電力・熱・輸送等の全セクターが自然エネルギー100%実現するためのロードマップ・目標年を設定する必要があります。

④人権を守ること

気温上昇や洪水等の気候災害による被害を受けやすく、また被害を受けてもすぐには回復できない国々のことを、気候脆弱国と呼びます。

若者のメッセージ;その理由とは

さて、なぜ若者たちによってこのようなメッセージが叫ばれたのでしょうか。

それは、パリ協定のルールに関する交渉が難航しているからという理由だけではありません。各国の温室効果ガス排出削減目標が不十分であり、既に気候変動による影響を受け、苦しんでいる人々がいるからです。

また、気候変動による影響の将来予測について学び、今行動しなければ、安全な未来を生きられないことを、私達若者は気付いているからです。

 

目標を引き上げなければ、未来世代に禍根を残す

特に温室効果ガス排出削減目標の引き上げに関して、2℃目標を達成した場合と、1.5℃目標を達成した場合では、地球環境に与える影響が大きく変わります(IPCC: 1.5℃の地球温暖化)。

1.5℃未満に抑えられなかった場合の影響予測として、洪水や高潮の頻度が高まり、台風は極大化し、水不足の問題がより深刻化するなど、枚挙にいとまがありません。

そうなれば、気候変動影響に特に脆弱な国・地域に住む人々(インフラが未整備であったり、海抜が低いため海面上昇の影響を受けやすい等)や、まだ生まれていない未来世代に、大きな禍根を残すことになります。

そういった事態を、気候政策に関わる政策決定者や、温室効果ガスの大排出源である大企業は、真に理解しているのでしょうか。

各国のリーダーが、自国や地球環境を安全で安心な状態にするため、最新の科学的知見に基づいた政策決定を行うことは当然でしょう。また政策決定において、気候変動による損失や被害を既に受けている人々の顔を、思い浮かべてみてはどうでしょうか。

さらに、気候変動をサボってきた上の世代のツケを払う若者の、必死な声を聴き入れた上で政策決定を行う必要があるのではないでしょうか。

若者が気候アクションをしなくてもすむ社会に

若者によるFridays For Futureの活動は、世界の気候政策が十分なレベルにまで達し、またそれが実行されるまで止まることはないでしょう。それは、若者がそうしなければならないだけの危機が現実のものになっているからです。

私たちは、本当は、若いうちにも学校でたくさん勉強したいと思っています。しかし、はっきり言って、今は安心して勉強できるような状況ではありません。だからこそ、Fridays For Futureとして活動をし、声をあげています。

やむにやまれずFridays For Futureに取り組むことで、勉強できるはずだった多くの時間が奪われています。Fridays For Futureのために、どれだけの覚悟と行動が必要か、皆さんは想像したことがありますか?

日本、そして世界中の国々は、いち早く気候変動対策の野心を引き上げてください。若者が、シュプレヒコールで疲れ果てたりなんかせず、勉学や遊びに集中できるように。

終わり。

 

と見せかけて、最後に。

同世代の若いみなさんへ。選挙に行きませんか?

僕と同世代の若い人たちへ。

政治や経済を変えるには、個人の生活を変えることはもちろん大切です。足下で行動できない人は、より大きなことを変えることなんてできないでしょうし、周囲からの信頼も得られないでしょう。

若い皆さん、まずその足掛かりとして、選挙にいきませんか?

現在、日本の若者の投票率は、OECD諸国の中でも最低レベルと言われています。

日本全体の投票率が低いことは言わずもがなですが、特に若者の投票率は極めて低いです。このままでは、危険な気候変動の影響を低減するための政策を取る議員・政党が選ばれる展望はありません。

また、投票の準備として、普段から政治・経済に関する情報に触れてみませんか?

そうすると、多分不安に襲われると思います。僕は襲われています。現行の気候政策は多くの課題を抱えており、悪化の一途を辿る未来が想像できてしまうからです。

初めは、不安に苛まれて、たちすくむと思います。ただ、そこで立ち止まるのは簡単ですが、少し踏みとどまって、解決策を考えて、行動してみてはどうでしょうか。

数ある行動の中でも、やはり選挙は有効な手段の一つです。法律や政策を最終的に決めるのは、私たちが信託する政治家なのですから。

ついでに言うと、自分だけが政治リテラシーを高めて選挙に行くだけでなく、自分の家族や恋人、友人にもあなたの問題意識を伝えてみてください。

そうすれば、気候変動対策に熱心な政治を作り上げるために必要な票が、着実に積み上がっていくのですから。

塚本悠平

この記事を書いた人

気候ネットワーク
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気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。