こんにちは!気候ネットワークインターン生の田上真衣です。

 自然エネルギー学校・京都2024の第3と第4回が9月に開催されました。

 第3回は「EVによる脱炭素化を広げよう!」をテーマに、塩畑真里子さん(国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 気候・エネルギー担当)から交通分野の脱炭素化に向けたEVに関する最新情報や将来的な潮流について、伊東真吾さん(一般社団法人市民エネルギー京都 専務理事)から日常生活での体験事例も含めながらEVの利用についての講演が行われました。

 第4回は「脱炭素化に向けた地域活動に参画しよう!」をテーマに、小畑あかねさん(特定非営利活動法人気候ネットワーク プログラムコーディネーター)と藤川まゆみさん(特定非営利活動法人上田市民エネルギー 理事長)から地域の脱炭素化を実現するための市民による取り組みについて学びました。

第3回「EVによる脱炭素化を広げよう!」

塩畑さんによる講義

 自動車、交通部門と気候変動の関係に近年注目が集まっています。

 2015年に採択されたパリ協定では、今世紀末までに地球の平均気温上昇を産業革命前と比べて2°Cより十分低く保ち、1.5°Cに抑える努力を追求するという長期目標が掲げられました。各国で脱炭素化が強く求められる中、日本の運輸部門の二酸化炭素排出量は全体の約18%を占め、そのうち86%は自動車によるものです。特にコロナ禍以降、経済活動の回復に伴って運輸部門の排出量も再び増加傾向にあります。

 そんな中、電気自動車(EV)の普及が進むことで運輸部門の脱炭素化が期待されています。しかし、EVの生産・使用過程全体での環境負荷を評価するためには、温室効果ガス排出プロトコルの上流から下流までを踏まえた評価や、燃料採掘から車両走行を含めたLCA(ライフサイクルアセスメント)の評価が重要です。

 また、グリーン・エネルギーへの移行に際して、脱炭素(風力タービン、ソーラーパネル、電気自動車、蓄電設備など)のために必要になる鉱物の需要の増加に伴い、環境や社会への負の影響も懸念されています。

 気候変動対応のためEVの普及は重要ですが、それと並行して再生可能エネルギーの普及拡大が進められるべきです。鉱物資源を始め、EV製造、使用自体にも環境上の課題は深刻であり、公共交通機関や徒歩・自転車など持続可能なモビリティの実現を目指すことが重要になるでしょう。

伊東さんによる事例報告

 伊東さんは、実際にご自身がEVに乗っている体験談を、バッテリー、航続距離、充電ポイント、コストの観点から紹介しました。

 まずバッテリーに関しては、近年自動車メーカーが発表しているEVにはコバルトやニッケルを含まないLFPバッテリーが搭載されており、EVのバッテリー寿命は格段に改善されています。

 航続距離に関しては、化石燃料車の場合暖房はエンジンの排熱を利用しているためそれほど追加的エネルギーを必要としませんが、EVにはエンジン排熱はないので追加的なエネルギーが必要になります。また、外気温が低い冬には、バッテリー温度を上げてやらないと高出力急速充電ができないという課題もあります。

 充電ポイントに関しては、EVの普及に伴い急速に整備が進んでいます。充電には、日常的に使用する基礎充電、自宅や目的地で行う目的地充電、長距離移動のための経路充電の三種類があり、目的に応じた充電器の設置が重要です。日本では宿泊施設や道の駅での充電設備が増加しています。

 コストに関しては、EVは初期費用が高いものの、ランニングコストまで含めるとそれほど割高にはなりません。また、中古車市場には安価なモデルも存在するため、初期費用のハードルは年々下がっています。

 以上を踏まえて、自宅に駐車場がありコンセント設置できる人、太陽光発電があり昼間充電できるなどの条件を満たす人はEV保有に向いています。自身の目的や条件に応じて脱炭素に向けた選択をすることが求められています。

第4回「脱炭素化に向けた地域活動に参画しよう!」

小畑さんの話題提供

 小畑さんは市民の立場から地域の脱炭素化に取り組むために、自然エネルギーを「使う」「設置する」「応援する」の3つのアプローチを紹介しました。

 「使う」に関しては、自然エネルギーを増やすためには電力の選択が重要です。パワーシフトキャンペーンは、電力会社選びを通じて自然エネルギーの普及を支援する取り組みのことです。ウェブサイトで各地域の再エネ電源を重視している電力会社が紹介されています。

 また、自然エネルギーの利用をさらに進めるために、自宅や地域に太陽光パネルを「設置する」方法もあります。個人での設置はコスト面でハードルが高いと思われがちですが、「ゼロ円ソーラー」などの初期費用ゼロでのパネル設置プログラムを利用すると、経済的負担を抑えながら太陽光パネルを設置することが可能です。また、自治体などのプログラムを通じ地域で共同購入をすることで、導入コストを抑えることができます。

 自然エネルギーを「応援する」方法もあります。具体的には、再エネ関連のファンドやプロジェクトへの出資、地域や市民による共同発電所の運営に参加する方法があります。また、自然エネルギーの普及を求める意思表示をするための署名活動や、政府の「基本政策分科会」への意見送付によっても自然エネルギーの普及を応援することができます。

 このような取り組みを通して、市民の立場から地域の脱炭素に貢献することができるでしょう。

藤川さんの事例報告

 藤川さんは地域の取り組みとして、相乗りくん、教室断熱ワークショップ、上田リバース会議の3つについてご紹介いただきました。

 相乗りくんは、パネルオーナー(太陽光パネルを持つ人)と屋根オーナー(屋根を提供できる人)をつなげるマッチングサービスです。初期投資などの太陽光発電を始めるためのハードルを、みんなの力を合わせて乗り越えることができる仕組みです。今日までに77ヵ所で導入され、約1MWの太陽光発電パネルを設置しました。

 教室断熱ワークショップは、2019年に建築家の竹内氏と高校生を引き合わせ、高校で断熱ワークショップを開催したことから始まりました。参加者は実際に断熱材を取り付け効果を実感することで、断熱への関心が高まります。このワークショップは他の高校でも実施され、地域の共創のきっかけとなっています。

 上田リバース会議は、高齢化や人口減少、公共交通の衰退などに直面する中で「上田をReverse(逆転)させてRebirth(再生)させよう!」という声から、立場の垣根を超えた学びと対話の会として始まりました。2021年から24回開催し、これまでに2000人以上が参加しました。この会議を通じて、多くの参加者が立場を超えて意識の変容がおき共感が高まり、さらにこれを行政職員と一緒に経験することで実際の行動と成果につながっています。

最後に

 自然エネルギー学校第3回では、「EVによる脱炭素化を広げよう!」をテーマに交通分野の脱炭素化に向けたEVに関する最新情報や将来的な展望や日常生活での体験事例について理解を深めました。そして、自然エネルギー学校第4回では、「脱炭素化に向けた地域活動に参画しよう!」をテーマに地域の脱炭素化を実現するための市民による取り組みについて学びました。

 これらの学びを通して、私たち1人ひとりが地域や社会全体の脱炭素化にどのように貢献できるのか考え、具体的な行動に起こしていくことの大切さを実感しました。日常生活の中で実践できる積み重ねも必要ですが、個人として社会システムの転換を後押しすることと合わせて、地域と連携しながら脱炭素社会の実現に向けて取り組んでいきたいと思います。

この記事を書いた人

気候ネットワーク
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気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。