こんにちは!気候ネットワークでインターンをしています、田上 真衣です。
気候変動は、私たちの未来に深刻な影響を与える重大な問題です。
この課題に立ち向かうため、毎年開催される気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties:COP)は、各国が気候変動対策に向けて合意を形成する重要な場となっています。昨年度のCOP28ではいくつかの重要な合意が得られましたが、依然として解決すべき問題は多く残っています。2024年11月11日から22日まで開催されるCOP29では、さらに進んだ議論と成果が期待されることから、国際社会の関心が高まっています。
今回は、前回の続きとして、気候ネットワークで国際交渉を担当する田中さんとギャッチさんにCOPにおける気候ネットワークの役割と日本の役割についてお話を伺います。
――気候ネットワークは今年のCOP29で具体的にどのような役割を果たしていますか?
田中さん:
COPに参加するNGOは、会議にオブザーバーとして参加し、各国がどのような発言をしているかや交渉の流れを観察しています。特に、交渉を遅らせている国があれば、NGOとしての意見を伝えることもあります。市民社会の声を政府代表団に届けるため、スタンディングやアクションを通じてメッセージを伝えたり、自ら企画したイベントなどを行うNGOもあります。NGOの大きな役割は、脆弱な立場にいる人々の声を代弁し、彼らの被害がこれ以上拡大しないよう、会議に参加し合意形成に向けて働きかけることだと思っています。気候ネットワークは現地で国内・海外NGOと連携しながら政策提言をおこなったり、交渉会議の様子を日本に伝えています。
――政治と国際交渉の関連について質問させてください。今後のアメリカ大統領選挙が気候変動対策に与える影響についてどう考えていますか?
ギャッチさん:
アメリカの大統領選挙は11月に行われますが、結果次第で気候変動対策に大きな影響があると思います。バイデン大統領が現職でいる間はアメリカのスタンスは大きく変わらないかもしれませんが、トランプ氏が勝った場合、前回のようにパリ協定からの離脱を再度試みる可能性もあります。もしトランプ氏が再び当選すれば、他国も同様に気候変動対策から手を引く恐れがあります。
――前回のトランプ政権時に、アメリカがパリ協定から離脱した際の影響はどうでしたか?
ギャッチさん:
確かに前回アメリカが離脱した後、国際的なプレッシャーが弱まったと感じました。ただ、今回は1.5℃目標の達成が迫っているため、アメリカなしでは進めないという認識があると思います。アメリカが離脱した場合、アメリカの協力なしで1.5℃目標をどう実現するかという難しい議論になるでしょう。
今回も、アメリカが途上国への資金提供に否定的な姿勢を示すと、他国にも影響が及ぶことは間違いありません。特に日本は先進国としてアメリカの動きに影響されているため、アメリカが資金を提供しない場合、日本も積極的に支援しない可能性があります。なので、私たちもCOP29での交渉の行方と、アメリカ大統領選挙の結果が今後の気候変動対策にどのように影響するのかに注目しています。
――日本はCOP29でどのような役割を果たしていますか?
ギャッチさん:
日本は先進国グループであるアンブレラグループ1の一員であり、アメリカを含む交渉団の中でも資金の定義や技術的なサポートにおいて重要な役割を担っていますが、交渉の場では目立たず発言を控える場面が多い印象です。また、日本は他国に追従する姿勢を取っており、自主的な取り組みを見せることが少ないようにも感じます。
海外のNGOからは、日本の立場が見えにくいとの指摘もあります。ただし、交渉以外の場では、技術的なイニシアチブに積極的に取り組んでいます。
田中さん:
たしかに日本はパリ協定の第6条の交渉や早期警戒システムの普及などの分野でリードしている部分もありますが、化石燃料の削減に関する議論など会議の中心となるような重要な話題では国際的な存在感が薄いと言わざるを得ません。去年のCOPでも化石燃料からの脱却が主要な話題だったのに対し、日本は異なる視点から話をしていた印象が強いです。
日本は、例えば水素やアンモニア混焼などのイニシアチブには力を入れているものの、1.5℃目標に向けた重要な話題でリーダーシップを発揮できていないのが現状です。日本がCOPの場でしっかりとしたメッセージを発信しない場合、国際社会からの信頼が揺らぐかもしれません。改めてまっとうな1.5℃目標に向けた道筋に対してのリーダーシップをとってもらいたいですね。
まとめ
今回のインタビューでは、気候ネットワークの国際交渉担当者である田中さんとギャッチさんに、気候ネットワークの役割と日本の役割についてお話を伺いました。気候ネットワークはオブザーバーとして各国の発言や交渉の流れを観察しながら、市民の声を代弁して合意形成に向けて働きかけています。また、メディアを通じて交渉の動向を外部に伝えることで、国際社会からの関心やプレッシャーを生む役割も果たしています。
日本は先進国グループにおいて重要な役割を担っているものの、化石燃料削減など重要な課題では存在感が薄いという指摘もあり、政治的なリーダーシップが改めて求められています。COP29では、国際社会が掲げる1.5℃目標に向けたリーダーシップを日本がどれだけ発揮できるかが、今後の気候変動対策において重要な鍵となるでしょう。
気候ネットワークでは、会議期間中、国際会議の現場より、交渉内容や日本政府の交渉姿勢、環境NGOのメッセージを盛り込んだ「会議場通信”Kiko”」を発行しています。
ぜひご覧ください!
脚注
- アンブレラグループ:EU以外の西側先進国と旧ソ連のグループ。アイスランド、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ノルウェー、ロシア、ウクライナおよび日本の9カ国。 ↩︎
- 化石賞:環境NGO「Climate Action Network(CAN)」が、気候変動対策に対して足を引っ張った国に与える賞のこと。 ↩︎
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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