スポーツの世界でも、気候変動の影響が無視できなくなっています。2021年開催の東京オリンピックでは、マラソンや競歩の開催地が暑さを避けて札幌に移ったほか、テニスの試合中に暑さで苦しむ選手が、「死んだら誰が責任を取るのか」と審判に問いただす場面もありました。

より身近なスポーツの場面でも、猛暑や豪雨等の自然災害による試合の中止や延期、練習時間の制限、降雪量の減少によるウィンタースポーツのシーズン短縮など、気候変動による影響が顕著になってきています。

このままでは、スポーツが楽しめなくなってしまうかもしれない。

スポーツに取り組む中で気候変動に対する危機感を感じたアスリートたちが、気候変動を止めるために動き出しています。

気候ネットワークでは、スポーツを通じて気候変動への理解を広げる活動や、スポーツの脱炭素化に取り組むアスリートの声を、SNS等を通じて発信するプロジェクトを開始しました。

今回の記事では、気候変動問題や環境保護に取り組むアスリートのチーム「グリーン・アスリート」で活動する登山家・耐久レースアスリートのキャロル・フークスさんと、トレイルランナーの中野沙知さんについて紹介します。

「グリーン・アスリート」を発足したキャロル・フークスさん

 

最初に紹介するのは、日本で活動するフランス出身の登山家・耐久レースアスリートのキャロル・フークスさんです。

キャロルさんは、エベレスト山をはじめ世界最高峰の山々に登頂する中で、地球のエコシステムの異変に気付くようになりました。雪山で起きている変化の背景には気候変動があると知り、気候変動に関心を持つようになったといいます。


日本で暮らし始めてからは、日本ではメディアによる気候変動の報道が不十分で、問題への関心が低いことも気になったといいます。

そこで彼女はアスリートの仲間と共に、「グリーン・アスリート」というスポーツコミュニティを立ち上げました。競技活動のカーボンフットプリント(※)の削減など、気候変動を止めるためにアスリートとしてできることを考え、アスリートの立場から気候変動に関する情報発信を続けていきたいといいます。

また、キャロルさんは「Feel Running」というスポーツウェアのブランドを立ち上げ、スポーツウェア製造で使用されるプラスチックの削減にも取り組んでいます。

グリーン・アスリートの活動はまだ始まったばかりですが、これからの取組にご注目ください。

グリーン・アスリート https://www.feelrun.com/ja/about-2

グリーン・アスリートは、アスリートが気候変動を止めるためにできることを考え、アスリートの立場から気候変動に関する情報発信を行うコミュニティです。今後、ウェブサイトのリニューアルも予定しているとのことです。

※カーボンフットプリントとは、商品やサービスがライフサイクル全体で排出する温室効果ガスの量をCO2に換算して示したものです。商品やサービスの原材料調達、生産、輸送、使用、廃棄の各過程で出される温室効果ガスが含まれます。スポーツの競技活動のカーボンフットプリントには、スポーツウェアの生産、試合や練習場所への交通手段などからの温室効果ガス排出が含まれます。

「スポーツを今後も楽しむために、気候変動への関心を広げたい」―中野沙知さん

 

次に紹介するのは、キャロルさんが始めたグリーン・アスリートの活動にも参加しているトレイルランナーの中野沙知さんです。

学生時代から陸上競技やマラソンを続けてきた中野さんは、昔と比べて暑さが厳しくなったことで、運動のパフォーマンスや練習時間に影響が出るようになったと感じています。

涼しい時間を選んで運動する、水分や塩分の補給に気を付けるなど、走る速さだけでなく、暑さへの対策が選手の競技力に関わるようになってきました。

また中野さんは、お仕事で子どもと関わる中でも、夏に危険な高温の日が増え、子どもたちの外遊びを自由にさせてあげられないなど、環境の変化を感じているといいます。

中野さんが取り組んでいるトレイルランは、自然と向き合いながら走るスポーツ。競技時間が長く、気温上昇など気候変動の影響を受けやすい競技でもあります。

「スポーツを今後も楽しむために、気候変動について学び、多くの選手にも関心を広げていきたい」

そう話す中野さんは、仲間が立ち上げたアスリートのコミュニティ「グリーン・アスリート」が、気候変動への関心を広げる場になることに期待を寄せています。

気候変動に関心を持ち、行動を始めたアスリートたちへのインタビューは、気候ネットワークのFacebookInstagramでも紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。

この記事を書いた人

森山 拓也
森山 拓也
気候ネットワーク東京事務所職員。