気候キッズセミナー「未来のための気候の話」では博報堂のコピーライター井口雄大さんを講師にお招きし、SDGs日本語版の目標が作られるまでの経緯やSDGsへの思い、伝えるときに大切なことなどお話ししていただきました。井口さんの話を聴いてこどもたちが考えた「SDGsを広める呼びかけ」もこのブログで紹介します。ぜひ、その声に耳を傾けてみてください。
-自己紹介をお願いします。
井口さん:コピーライターで、普段は広告、テレビのコマーシャルのアイデアを考えたり、言葉を考えたり、駅などに貼ってあるポスターの言葉を考える仕事をしています。
-SDGs17の目標を初めて聞いた時、どのように思いましたか?
井口さん:僕が子供の頃から飢餓や貧困をなくしたいと言われていたけれど、今も状況が変わっていないことにショックを受けました。
しかし、もう少し詳しく話を聞くと、大きな目標は一緒だけど小さな目標が少しずつ変わっていることに気づきました。
例えば水の話、安全でおいしい水が飲めたらいいなということは30、40年前からも言われていて、その問題はこれまでに少しずつ解消されてきています。しかし、トイレや排水についてもっと取り組まないときれいな環境で暮らせないということが今では課題になっています。だったら、そこがもっと進むように「トイレ」という言葉を日本語の目標に入れました。
-日本語版のSDGs目標を作って、おもしろかったことは何ですか?
井口さん:自分が知らない世界を知れたことです。僕は「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」についてそれまで知りませんでした。みんなもごみの分別のことや、最近ゲリラ豪雨がふえていること、気候の変化の問題など、知っていることもあれば知らないこともあると思います。まずは知ることが大事ですね。
-苦労したことはありましたか?
井口さん:やらないといけないとみんながわかっていることが難しいと思いました。
例えば、みんなが「宿題をやりなさい」「ご飯を食べなさい」と言われてもやりたいと思えない時があると思います。それと同じで、SDGsの目標についても、みんなやらなければならないこととわかっていても、なかなかやらない。やらせるではなく、みんながやりたくなるようにするにはどうしたらいいのかなと考えました。だから英語から日本語にするときは、目標は「○○しよう」と呼びかける言葉にしました。
みんながやりたくなるためには「これをやらなきゃいけないよ」ではなくて、「一緒にやろう」という呼びかけ方にしています。
-日本語版のSDGs目標が作られるときに、どのような話し合いがありましたか?
井口さん:最初は僕が英語を見て、みんながやりたくなるような日本語を考えました。それを国連、NPO、外務省や環境省の人に見てもらいました。みんなの目標にするために、どうしたら一緒にやるって言ってもらえるようになるのか、いろんな人から意見をもらって、少しずつ言葉を変えながら最終的に今のものになりました。
-英語と日本語で言い方が変わった目標などありますか?
井口さん:「働きがいも経済成長も」(原文:Decent Work and Economic Growth)です。ディーセントワーク(意味:働きがいのある人間らしい仕事)という言葉はいろんな専門家の人たちの間ではキーワードになっているので、その言葉を使いたいと言われました。しかし、ディーセントワークという言葉だときっと日本の半分以上の人がわからないだろうと思って、「働きがいも経済成長も」という今の言葉になりました。
-井口さんはどのようにすればSDGsの目標が達成できると思いますか?
井口さん:これはみんなでやらなければいけないということだと思います。一人ではできないし、クラスが集まっても学校だけでもできない。本当に世界中の人がやって、ちょっとずつ前に進んでいくものだと思っています。気づいたときにやる、自分にできることをやる、続けられることをやる、そういったことの積み重ねなのかなあと思います。
-小学生・中学生の参加者のみんなに質問です。SDGsのことを家の人や学校の人にどのように伝えたらいいかな?
●小中学生からの回答
・SDGsに興味ある?と声をかけてみる
・学校全体で取り組む
・クイズ形式で勉強する
・マザーテレサの本を読む
・友達とマーチをして、ほっぺにペイントする
・楽しいこととセットでやるのがいい
・ビーチクリーンをやるときに誘ってみる
・「一緒に」という言葉を強調する
井口さん:なにかを人にやってもらいたいとき「やって」と言うとその人が一人ぼっちになってしまいます。「自分も一緒にやるよ」と言うと「じゃあ一緒にやってみようかなあ」と思ってもらえるし、その方が優しい言い方になります。人に伝えるときには優しさは大事です。
●小中学生からの回答
・身近なところにSDGsのマークをはる
・地球の面白さを伝えながら、その地球が危ないことを伝える
・壁新聞を作る
・「○○さんも誘わない?」とみんなでやる
・月に1回、学校でみんなで話し合いをする
・毎日45分話し合う
井口さん:具体的にすることは大事ですね。例えば「勉強をしなさい」と言われるよりも、「算数をやらない?」と言われるほうが「算数ならやっていいかなあ」と思えるかも知れません。言い方を具体的にするのはいい方法ですね。
●小中学生からの回答
・学校でSDGsやってみよう委員会をつくる
・地域にチラシをつくる
井口さん:地域も仲間だから、地域やクラスの人たちと一緒にやるのは良いと思います。
-最後に、チラシを作るときに何に気をつければよいかを教えてください。
井口さん:相手の立場に立って考えることが大事です。「これをやって」ではなく「一緒にやろう」と優しさを加えて言葉を選びましょう。
■■■おわりに■■■
井口さんが発せられた一言一言から、優しいお人柄やあたたかさが伝わってきました。伝えるときには、相手の立場に立って考えること、そして一緒にやろうということ、何よりも優しさが大事、というコメントが印象的でした。
今回のセミナーで出てきたように、SDGsを達成するためには、一人ひとりがSDGsをよく知り、広げていくことが大切です。それに加えて、SDGsの達成に大きな責任を持っている政府や企業が、問題の解決を本気で進めているか、しっかりチェックをしていくことも大切でしょう。石炭火力発電所を使い続けることを止めずに「目標13:気候変動に具体的な対策を」を達成することができるのか、大人たちは今一度考える必要があるのではないでしょうか。
気候ネットワークでは、これから未来を担うこどもたちの立場に立って、優しさをもって、脱炭素社会の実現にむけこれからも活動を続けて参ります。
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