京都事務所の伊与田です。
「地球温暖化やパリ協定について、わかりやすい本は?」
最近、大学や自治体、企業や市民団体などから「地球温暖化問題やパリ協定について講演してください」と依頼をいただくことがよくあります。先日も、とあるセミナーでお話したとき、参加していた方から声をかけられました。
「自分でも少し勉強してみたいのですが、地球温暖化やパリ協定について、初心者向けのわかりやすい本はありませんか?」
そう聞かれたとき、頭に思い浮かんだのが、こちらの本です。
『地球温暖化は解決できるのか パリ協定から未来へ』
地球温暖化に人類がどのように向き合っていくか?
気候変動の科学や国連気候変動交渉とパリ協定、そして日本の気候変動・エネルギー政策の課題や、私たちにできることについて、わかりやすく書かれた一冊です。岩波ジュニア新書ですが、中高生はもちろん、大学生や、わかりやすい本を探している大人にもおすすめです(お手頃価格でもあります!)。
著者は気象予報士の小西雅子さん。パンダのロゴマークで有名な自然環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)」の日本拠点である「WWFジャパン」で気候変動・エネルギー問題に取り組んでおられます。COPなどの国連気候変動会議だけでなく、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の会議にも出席されており、科学と政策のあいだを行き来するグローバル・リーダーです。
深刻化する気候変動。パリ協定の時代の日本の気候変動・エネルギー対策は?
気象キャスターが解説する気候変動の科学
第1章は、気候変動の科学について、IPCCの最新報告をもとに、(気象キャスターとしてのご経験もあるからでしょう)とてもわかりやすくまとめられています。
気候変動交渉のドラマチックな描写
第2章のテーマは国際交渉です。小西さんらしい、臨場感のあるドラマチックな描写があり、読み物としてもおもしろいと思います。パリ協定の歴史的な意義について述べながら、「世界各国がきちんと誠実に宿題をやってこそ、パリ協定は効力を発揮できる」と訴えています。
日本のエネルギー政策の課題~石炭が最悪の選択肢~
では、日本はどうするべきでしょうか?第3章で、小西さんは、日本が世界第5位の排出国であること、日本の温室効果ガス排出の9割がエネルギー由来のCO2であることを紹介した上で、日本がどう対策すべきかについても論じています。
とりわけ、データを用いて、「石炭をこれからも使い続ける、というのが最も温暖化抑止のためには悪い選択肢」と強調していること、日本の省エネが「乾いた雑巾」とはいえず、まだまだ省エネの余地があること(しかもそれにメリットがあること)をわかりやすく説明されていることは印象的でした。
私たちに何ができるか、考えるきっかけに
第4章は、「私たちに何ができるのか?」。これまでの情報をもとに、次々と本質的な問いかけと、前向きな応援メッセージが続きます。ここにある問いについて考えていけば自然と自分の考えが整理されていきます(ワークショップとか大学のゼミとかでもそのまま教材として使えそうだと感じました)。
まとめ:パリ協定時代の気候変動の入門書としておすすめ!
というわけで、出版から半年たった今もなお、気候変動問題の入門書として、最もおすすめの一冊だと思います!解決に向けて常に前向きな熱いメッセージがあり、読んでいて勇気づけられるのもありがたいことです。
書名にもなっている「地球温暖化は解決できるのか」という問いの答えは、ぜひ本を買って実際に読んでみてください!
気候ネットワークでもいろいろな関連書籍を出していますので、こちらもよかったらぜひご覧ください(より詳しい情報を知りたい人向けです)。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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