こんにちは、東京事務所の江刺家です。
3月13~18日に宮城県仙台市で開催された国連防災会議。期間中、市の中心部は防災会議一色といっても過言ではなく、あちこちで展示やセミナーが催され、大変な盛り上がりを見せました。
さて、「防災」と「気候変動」…あまり耳慣れない組みあわせですが、実は結びつきの深いものです。「防災」というと地震や津波などの大規模災害をイメージしがちですが、気候変動によって洪水や豪雨の頻度が高まってきた今、こうした日常的に起こりうる災害に対して個人や社会がどのように備えていくのかが問われています。
ということで、市民向け企画「市民防災世界会議」の1つとして、気候ネットワークとピースボート災害ボランティアセンターが共同でシンポジウム「防災・減災をシフトする。~気候変動と社会の変化~」を開催。国内外からゲストを迎え、参加者の皆さんと一緒にこれからの防災を考えました。
気候変動への適応策はますます重要に
枝廣淳子さんのお話のキーワードは「レジリエンス」。気候変動の影響があらわになりつつあるなか、途上国ばかりでなく先進国でも適応策の重要性は高まっています。イギリスなど各国が適応策を進めるかたわら、日本は今夏の適応計画策定に向けてまだ検討をしている段階で、遅れが鮮明になっています。また、各地域や組織、企業が適応策の重要性を認識し、計画をつくることも重要です。政府にはそれを後押しする政策がもとめられます。
地域が抱えるリスクは、気候変動の影響のほかにもエネルギーコストの上昇や財政難、高齢化などさまざま。こうしたリスクに備え、対処するしなやかな力=レジリエンスをつけていくことが必要です。
社会的課題と密接にかかわる「災害」
つづいて長年(50年以上!)防災分野に携わり、バングラデシュを代表する第一人者であるサイドゥル・ラーマンさん。1991年、バングラデシュを襲った風速240km/時の台風では13万8千人以上が犠牲となりました。これに対して1992年にアメリカを襲ったもっと強い台風(風速270km/時)では犠牲者は15人という事例を紹介。
被害の大きさは、災害の強さよりも社会的、経済的、政治的要因によって決まる部分が大きく、国はおろか同じ地域に住んでいても豊かさによって被害の程度が違います。
貧困層は災害の被害を受けやすく、災害に対して脆弱だと貧困からの脱け出すことも難しいという悪循環がくり返されます。だから「防災」「減災」を考えるときには、「貧困」という社会的課題の解決が欠かせません。サイドゥルさんは、市民社会は社会的・政治的な面で地域が力をつけることを後押しし、災害に強くなる支援をすることが重要だと強く訴えます。
地域の課題を地域で解決する
2013年に大島を襲った台風26号は、痛ましく甚大な被害を残しました。鈴木祐介さん(大島社会福祉協議会)からは、家屋の泥だしやガレキの撤去のような災害直後の緊急支援、相談援助活動や被災者と支援者のマッチングのように被災者に寄り添う生活支援など、被害から立ち直るために地域が取組んできた支援を紹介していただきました。社会福祉協議会のミッションは「地域の住民の参加を得て、地域住民自身が、地域ぐるみで、地域の課題・問題を解決すること」。支援には行政、ソーシャルワーカー、臨床心理士、保健師、弁護士、 NPO、ボランティア団体、地域の小・中・高等学校など多様な主体との協働が欠かせません。
「気候変動の影響に、そなえていますか?」
合田茂広さん(ピースボート災害ボランティアセンター)は、気候変動の影響によって災害のかたちが変わる一方、地域は高齢化し、消防団のようなこれまでの防災組織のかたちも変化することを余儀なくされていると問題提起。災害や社会のかたちが変われば、防災・減災のあり方も当然変えていかなければいけません。
その後の質疑応答ではスピーカーから参加者の皆さんへこんな質問も。「温暖化の影響は現れていると思いますか?」「ではその備えをしている人は?」
皆さんの回答はいかがでしたか?会場では、一つ目の質問には大半の方が手を挙げましたが、2つ目にはほんの数人です。この質問にはっとした人は、きっと私だけではないはずです。枝廣さんは「意識と行動のギャップを埋めることが重要。関心がある人でも必ずしも行動に結びついているわけではなく、関心がない人ならなおさら。」と指摘します。
「ギャップがある」と自覚することは、行動を起こしていくために必要なステップだと思います(ちょっとショック療法?)。個人や地域、企業、そして国には、どんな備えが必要なのか。のんびりと考えている時間はありません。一刻も早く具体的な行動にうつしていくことが必要です。
<当日の映像はこちらからご覧下さい>
2015/3/14 防災・減災をシフトする。~気候変動と社会の変化~
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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