こんにちは。環境教育/デザイン担当の岡本です。
京都は雨が降ったりやんだり晴れたり変な天候が続いていましたが、それでも少し暖かくなってきたようですね。
先月の全国シンポジウムの後風邪を引いてしまい、寝ても覚めても咳と頭痛に悩まされていたのですが、2月27日・28日で、第11回京都・環境教育ミーティングが無事終了しました。
第11回京都・環境教育ミーティングとは
京都環境教育ミーティングというのは、環境教育や環境保全活動に携わっている市民をはじめ、学生、NGO/NPO、事業者、教育・行政関係者、環境学習施設関係者が京都に集い、語り合い、課題解決に向けたネットワークを拡げ、これまで出会わなかった人や団体、取り組みなどと繋がり日本や世界を元気にする場づくりを目指して実施してきたものです。
これまで過去10年間にわたって開催してきた「京都・環境教育ミーティング」では、多くの参加者が集い、事例発表やワークショップを通して新たな人や団体、取組とつながる「交流の場」を生み出してきました。
今回は、環境教育の実践者が集い交流するだけでなく、ESDの視点も含め環境教育の現状と課題について議論し、環境教育をより良くしていくための新しい場について考えます。
というのが今回の趣旨。
2日間にわたるプログラムの1日目は、次の3時間ワークショップの二本立てでした。
①環境教育を深め拡げる視点〜日本的自然観〜
②これから求める温暖化防止教育〜評価がもつ可能性〜
この②を私が企画・担当させていただいたので、少し報告を兼ねて現状をお伝えします。
「これから求める温暖化防止教育」とはどういうことか
過日の気候ネットワーク全国シンポジウムの分科会のひとつで、環境教育と消費者教育との連携を取り上げました。→
現状、温暖化防止教育は、「全国で実施されている」というには程遠く、環境学習についても地域ごとに大きな差があり発展途上です。その中、全国で温暖化防止教育が進められるよう制度が出来つつあります。
ひとつはこの「消費者教育としての環境学習」。
消費者教育推進法が出来て、これから消費者教育推進という観点から学校へのアプローチが出来るのではないかという可能性が見えます。
消費者教育実践者の課題は、これまで消費者教育があまりに狭い範囲で捉えられているということからの広がりのなさで、今回この推進法ができたことにより、消費者教育の幅が目に見えて広がりました。
今回このワークショップの中では、気候ネットワークが委託で実施している京都市立小学校全校(166校/2014年度)を対象とした温暖化防止教育「こどもエコライフチャレンジ」、京都府地球温暖化防止活動推進センターが実施している「親子省エネチャレンジ」、そして大阪府枚方市で実施されているS-EMS(School Environmental Management System)の実施に関する報告など、3事例を通して新たな視点や、これからの可能性を探るというものでした。
小学校での温暖化防止教育の違いは?
この3つに共通するのが小学校での教育ということ。
京都市のプログラムの特徴は、担い手が学び手と相互すること。教える側や、一緒に参加するボランティア、又は学校の先生が学び手となったり、児童はこの学習を通じて伝え手となる。運営はパートナーシップによって行われていて、行政、NPO/NGO、教育委員会と学校がひとつのプログラムを運営しているというところ。
省エネチャレンジは、範囲が広がり府という単位で実施していて、実施するのはそれぞれ任意の学校を通じて親子での取り組みとなっている。
枚方市の取り組みは、環境管理の中で学校の先生を対象に研修を行い、それぞれのプログラムの中にどう組み込んでいくかという話をするというものでした。
評価することがなにを意味するのか
今回このワークショップで意図していたことは、温暖化防止教育がもっと全国で広がる可能性が溢れているということ。しかし現状は即しておらず、地域コミュニティーやNPOといった担い手はこれまで進まなかった過去の経験から動けずにいるということへの気づき。
そして、この「評価」によって、この気づきがあるのではないかという提案でした。
ただ、今回参加者の方は、学校教育というものへの意見が違ったものが多かったり、温暖化防止教育そのものに対して意見したい方々が多く、なかなか思ったようには進みませんでした。
それでも出た意見が面白かったので紹介。
・温暖化教育より国際教育が先だ。
・年寄りは現状をみて失敗したとおもっている。
・「今からしっかりやります!」といっても負の遺産を残したのになにを今更。
などなど、流石環境教育ミーティングの場に集まる人たちの意見。報告なので、ここは嘘をつかずにこういった課題もあるということ、真摯に受け止めたいと思います。そしてこの「評価する」ことによる課題の継続的な模索と解決に向けて今学校が変わる機会があることに注目していくことは必須です。
今回は「環境教育について、環境教育の場について話し合い、議論する」というテーマだった為、色々分かったこともありました。
ESDの視点をふまえる
2日目です。1日目を受けて、これから環境教育の場を考えるにあたり、ESDの視点もふまえて考えるということで、NPO法人ESD-J理事/中部環境パートナーシップオフィスの新海洋子さんからESDの話を聞きました。
皆さん「ESD」はご存知?
持続可能な開発の為の教育(ESD:Education for Sustainable Development)ということで、まずはこれを皆さんの言葉で置き換えて下さいという新海さん。皆それぞれに書きました。
その中で、新海さんは、社会の抱える問題を自分の生い立ちを通して語ります。
平和活動を見て育った幼少時代、途上国への支援、支援、延々と続く支援の中で、いつになったらこの支援が終わるのかという感覚の中で、新海さんは教育が変わらなければ、ということに至ったといいます。
けれど文科省は、要項になければ入れることはできないという中、環境省で働くうちESDという新たな学校へのアプローチを見いだしました。
これはもう、ESDしかない。そう思い、これまで活動を繋いできたという新海さんに、皆聞き入っていました。
ESDは昨年10年を迎え、岡山で世界大会が開かれました。そのサイドイベントで、愛知県、名古屋ではこども会議が開かれ、全国から選ばれた小学生が集い、ESDの中にある文化、防災、生物多様性、エネルギーなどの現地学習で、様々なことを学び、これからの社会がどうあってほしいかを自分たちで考えました。
その最後に発表されたスピーチがこれです。
私たちが考える「持続可能な社会」は、「未来を考え、お互いを思いやり、人間だけでなくすべての生き物が共に、幸せに生きる社会」です。
差別も不安もなく、平和で安全に、楽しく生活できる社会にしたいです。
しかし、今、私たちが生きている社会は、資源やエネルギーを無駄づかいし、自然環境を破壊しています。
世界のどこかで戦争がおこっています。
地域の伝統文化を伝えることが難しくなっています。
防災対策をしている人が限られています。
たくさんの問題があって、「持続可能な社会」とは言えません。
そして、こういった問題は、すべて、人とつながっていることがわかりました。
「持続可能な社会」づくりを難しくしているのは、とどまることを知らない人間の欲、自分勝手さ、わがままな気持ち、人々の意識や関心が低く、知識が少ないことなのです。
いろいろな問題の原因をつくっているのは人間ですが、それを解決していくのも人間です。
「持続可能な社会」をつくるために、私たちは、次のことを実行します。
・まだ知らないことがあるので、もっと現状を学びます。調べ、考え、参加します。
・たくさんの人に知ってもらう必要があるので、ESD を学校や地域の人に伝えます。
・身近に出来ることは提案し、行動し、実行します。
・命を大切にし、人と人とのつながりを深め、交流します。
ここで、子ども会議から、大人のみなさんに、次のことを提案します。
・戦争をしないでください。武力で解決しようとしないでください。
・世界の人々が協力して、どの国の人も教育が受けられる環境をつくってください。
・子ども会議のような、学び、考え、話せる場をもっとつくってください。大人もESDに興味を持って参加してください。
・知識も経験もある大人が、もっと私たちに教えてください。
・多くの人にESDを広めてください。ESDの考え方を広めて、今ある法律を変えてください。
・地域の人たちともっと交流をしてください。
・未来に目を向けて考えてください。当たり前のことを大切にしてほしいのです。 子どもができて大人にできないわけがないと思います。
子ども会議の私たちが考える「ESD」とは、「未来を考えて、行動すること」です。 みんながESDの主人公となって、今、これから、未来に向かって、ESDに取り組んでいきます。
ぼくは、リオ・サミットのセバン・スズキさんのスピーチを見ました。 これを見てぼくは、22年前と今が何も変わっていないじゃないか、ということを思いました。
私たちは本気です。
大人のみなさんも、本気になってESDに取り組んでください。ESDは、この世界の未来にとって一番大切なものなのではないでしょうか。
2014年11月12日
ESDあいち・なごや子ども会議
スピーチ(原稿):
http://www.esd-aichi-nagoya.jp/event/event/child/pdf/speech-j.pdf
子供達は純粋に、この学習を受けて必死に訴えかけをしたんだと思います。スピーチを聴いていて泣きそうになりましたが、子供達がすごいからではなく、今まで大人も言えなかったことを改めて子供の立場で代弁させているような気がしてなりませんでした。
大人が出来る議論・私たちに必要な場とは?
もちろん今回の環境教育ミーティングのテーマはESDではなく、ESDの視点もふまえての場についての議論。
集まった40人程の大人がワークショップをテーマで分かれて議論しました。
分かれたテーマは「2030年に環境教育はこうなっていて欲しい」というのをそれぞれが思い思いに書き、自分たちで似た意見の実行委員の元へ集まり話し合いに。
私の出した紙には「誰もが受けることができる環境教育。担い手も、受け手も楽しい環境教育」
ここに集まったのは年代もバラバラ20代学生から70代までの多様な人々。女性は私だけでしたが。
ファシリテーターをしながら私も話に参加して、このメンバーで初めに出てきた意見の多くは学校に関してでしたが、話をよく聞いていくと、課題は学校教育に今教育が集中しているという懸念が心の奥底にありました。
教育が「学校教育」だけでなく「地域教育」、「家庭教育」、「社会教育」と4つの車輪で動いていくもので、「環境教育」はその駆動である。というような視点を皆で見つけました。
そのバランスが今崩れている。バランスが崩れた理由として、世代間のギャップがあり、このギャップは今の若者が年上に対して感じているだけでなく、これからもずっと続いていく。
そういう観点から、世代間での対話と、話し合える機会やきっかけが必要ということで私たちのグループは場について考えました。
教育の四輪駆動ね。実際1日目大きな話に広がってしまった分、2日目の話し合いでものすごく良い場が持てたんではないかと個人的にすごく良い教育機会が持てたと思いました。
「誰もが受けることができる環境教育。担い手も、受け手も楽しい環境教育」の場がそこにはあったんじゃないか。
これから、環境教育ミーティングの実行委員も私たちが必要にしている場はどんな場なのか、これからどうすれば環境教育が広まり、理解しあえる社会になるのか考える為に、議論は続きます。
もし、環境教育ミーティングに関するご意見や、参加したい!という声があればぜひ実行委員に届けて下さいね。
それでは長くなりましたがこの辺で。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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