はじめまして。気候ネットワークの京都事務所、インターンの加藤愛奈と申します。9月24日に東アジア気候フォーラム2016に参加しました。フォーラムに先立ち、23日にはフォーラム参加者とともに美山ツアーにも参加しました。今回はこの報告をさせていただきます。
【日中韓の市民交流と東アジア気候フォーラム】
2010年に第一回東アジア気候フォーラムが韓国の光州市で開催されました。その後は、東京、中国杭州市、韓国光州市と続き、昨年は中国の天津で開催され、各国の気候変動対策や地域での取り組みなどが話し合われました。
9月23日 本当のエコツーリズムを実感 in 美山
花園会館(参加者宿泊先)を出発し、市民協働発電所の視察、田歌舎での低炭素な生活体験、そして日本の原風景を見学しました。ツアーには、韓国から18名、中国から8名、台湾から1名、日本から4人が参加しました。
市民参加による太陽光発電施設の見学へ ~道の駅 ウッディ京北~
一般社団法人「市民エネルギー京都」は京都市等と連携し、4箇所の市民参加による太陽光発電施設を設置していて、その中の1つであるウッディ京北の見学に行きました。気候ネットワークの田浦さんから参加者に、京都におけるおひさま発電所の現状や、市民協働太陽光発電の設置にあたり自治体とどのようにして話を進めたのかについての紹介がありました。市民出資の仕組みや、15年経つと返済が終わること、そして銀行が未だ実績のない団体に対し融資をするのは前例がないことなど勉強になりました。
太陽光発電施設の見学の後は自由時間が設けられました。道の駅には地域の林業や農業を生かしたものが売られているため、たくさん買い物をする方がいました。韓国の新聞記者の方は熱心に市民協働発電所について田浦さんに質問していました。資金調達の問題や自治体とのやり取りに関することなど、より具体的な質問が投げかけられていました。「韓国でも同様の活動ができないか?」という思いが感じられました。
日本の低炭素な生活を体感!! ~田歌舎~
まず代表の藤原さんから田歌舎についての紹介がありました。田歌舎では低炭素で持続可能な暮らしを実践しています。都会は「遊び」が少ないため、遊びをコーディネートすることが仕事として必要であると考えたそうです。衣食住ではなく遊食住をコンセプトに、およそ30種以上のプランがあります。今回は「食」と触れ合う機会を設けていただきました。
着いてすぐご飯の準備がされていて、釜炊きのご飯と味噌汁にも参加者の方々は興味津々でした。早速、藤原さんから献立の紹介がありました。本日は「天然舞茸ごはん・どんこ入り味噌汁・自家製の漬物・冬瓜のたいたん・芋茎のさっぱり煮・なすとみょうがの和物」でした。いつもは鹿肉や猪肉を多く使った料理が多いそうですが今回は野菜中心で用意してくださいました。野菜は味が濃く甘味がとても強いと感じました。「どんこ」とは猪の子を意味するそうです。臭みはなくてとても柔らかく、美味しくいただきました。飲み物はお茶でしたが変わった味がしました。聞くと「そのへんの薬草茶」と言われ驚きました。
食後は田歌舎の探索に行きました。田歌舎では動物と生活していました。「雑草はヤギに食べてもらい少しでも除草する労力を軽減できるようにしている。」「猟犬を数匹飼っており、狩りの時に働いてもらっている。」「合鴨農法をとっているため、無農薬の米を作っている。その後、鴨は肉として食べる」等をしていると教えていただきました。
また、田歌舎で育てられている様々な作物を紹介していただきました。いちじくを食べたり、「ほうきたけ」という珍しいきのこを採ったりしました。山道は険しく苦戦している参加者が多く見られました。藤原さんから、日本は間伐材の利用が下手であるが、田歌舎では薪として利用していると教えていただきました。
近年、自然と触れ合うエコツーリズムの人気が高まっていますが、今回のような体験が本当のエコツーリズムであると思いました。
自然との共生を感じさせる、美山かやぶきの里
時間に余裕があったので日本の原風景が残る「美山かやぶきの里」に寄ることになりました。ここは重要伝統的建造物群保全地区に指定されています。地区内に現存する民家の約4割は江戸時代に建築されたものだそうです。台湾からの参加者の方は江戸時代に建てられたと知りとても感激していました。
民家の周辺を散策していると住人の方にお話を聞くことができました。観光客が最近増えてきているそうです。美山地域は医者やコンビニエンスストアも遠く住むには不便だとおっしゃっていました。
9月24日 東アジア気候フォーラム
~脱原発・脱化石燃料 パリ協定の実施に向けた東アジアの役割~
東アジア気候フォーラム2016のテーマは「パリ協定の実施に向けた東アジアの役割」でした。龍谷大学深草キャンパスで開催されました。中国や韓国からの参加者の方の雰囲気が前とは変わり緊張感が漂っていました。
特別報告CAN南アジアの経験 貴重なお話を聞くことができました!
特別報告としてCAN南アジアの方から、気温の上昇や海面上昇、食物生産システムについての現状報告がありました。特に気温上昇においては、このまま何もしなければ21世紀半ばまでに1年の平均気温が2℃以上上昇し、干ばつ等の被害が拡大することが強調されました。そして、質疑応答では、政府だけでなく多様な主体が気候変動防止のアクターとして、積極的に関わっていくことが大切であるということが話題に上がりました。
セッションスタート! 各国の報告と質疑応答は発見の連続
セッション1ではパリ協定の実施に向けた東アジアの役割についてそれぞれの国レベルでの現状や政策の報告がありました。韓国では原子力発電や石炭火力発電を増やすという政府の意向があり、日本と状況が類似していることがわかりました。パリ協定のめざす2℃・1.5℃のためには、まず脱原発・脱化石燃料への意向を各国だけでなく東アジア全体で掲げていく必要があると思いました。
セッション2では、各国の具体的な地域での取組について報告されました。日本からは家庭の住宅断熱について説明され、市民の立場でCO2削減をすることの可能性について提示されました。中国からは、低炭素住宅の実験的な試みの紹介がありました。スマート家電コントロールシステムの導入や太陽光温水器の導入等、住宅を省エネ住宅に改造するために補助金を投入しました。その結果エネルギー使用量が従来よりも大幅に削減したそうです。そして韓国からは済州島での取り組みが紹介されました。各国の取り組みをシェアし、各地の成功モデルを全国、そして東アジア全体で共有していきたいと思いました。質疑応答の時間には、ひのでやエコライフ研究所に対して、どのように利益を上げているのかという質問がありました。それに対し、地方自治体のコンサル業務を請け負ったり、町家のリフォーム提案をしたりして利益を上げているという回答でした。地域の特徴を反映する政策を提案していることがわかりました。
セッション3では東アジアにおける脱原発・脱化石燃料に向けてという議題で話し合われました。この回では、各国のエネルギー政策の状況が述べられました。韓国の石炭輸入量がアメリカや中国よりも多いことや、台湾では化石燃料の補助金が多いことなど初めて知ることができました。質疑応答では各国のエネルギー問題についての疑問が多く投げかけられました。エネルギー問題には補助金に関する政策が深く関係していると感じました。原発にも化石燃料にも頼らずエネルギーを確保する方向に、政府の意向を変えることが課題であると思いました。
また、韓国ではPM2.5は中国から飛来しているという認識が一般的かという質問に対し、孫さんは多くの韓国人が信じていた全てのPM2.5が中国から飛来するという見解は誤りだと科学的に証明されたと回答していました。そしてPM2.5の原因は石炭火力発電所であることが知れ渡り、周辺住民により議論やSNSでの問題提起が急増したそうです。日本や韓国では産業界の力が強く、石炭火力を減らさない政策がとられています。私たちひとりひとりの訴えと他国との連携によって脱原発・脱石炭火力の政策に転換して欲しいと思いました。
懇親会スタート! 注目は数十年物の韓国の梅酒!!
フォーラム後は懇親会がありました。参加者の方は朝から夕方まで続いたフォーラムで少し疲れが出ているように見えましたが、会話をしながらお酒と食事を楽しんでいました。参加者の方の中にはビーガンの方もいらっしゃったようです。韓国の参加者が数十年物の梅酒をご持参してくださいました。少し味見をしてみましたが、日本の梅酒とは異なり梅の香りがほのかに香った後、アルコールが鼻にくるという印象を受けました。
今回のフォーラムでは中国や韓国の温暖化対策等を知ることができました。今後は世界各国の温暖化対策にも注目をし、国際的な視点をもって日本の温暖化対策を評価していきたいと思います。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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