こんにちは、3月から気候ネットワーク東京事務所でインターンをしていますエバデ・ダン愛琳です。まだまだ日は浅いですが、早速重要な問題について深く考える機会に触れました。今回は3月24日に文京シビックセンターで開催された、インドネシア住民ら3名と現地NGO代表者1名を招いたセミナー「村の生活と環境を壊す石炭火力への援助支援を止めて!:インドラマユから日本のODAを問い直す」を中心に、インドネシアで何が起きているのか、来日の真意について報告します。
そもそも何が起きている?
インドネシアの西ジャワ州にあるインドラマユという地域では、すでに中国のバックアップによって建てられた石炭火力発電所(330MW×3基)が既に稼働しています。それに加えて日本国際協力機構(JICA)は、日本政府が推進するインフラ輸出の一環として、同地域への新たな石炭火力発電所建設のための円借款を検討しようとしています。
住民の生活スタイルを脅かす石炭火力発電所
既存の発電所から2km圏内に住んでおり、養殖の傍ら中学校で教員もしているサルジャニさんは、既存の石炭火力発電所が彼らの従来の生活スタイルを脅かしていることを訴えました。インドラマユという地域がいかに豊かであったか、農業や漁業のためにいかに重要であったかはほかの話者からも伝わってきました。
漁民が語る、石炭火力発電所の水質汚染
漁民であるミスカさんは、既存の石炭火力発電所からの排水や石炭を運ぶ船による水質の汚染によって漁場が制限されていることについて語りました。それによって収入が減り、中学生であるミスカさんの子どもが進学をあきらめざるを得ない状況であったという話は衝撃的でした。水質が汚染されるということは、単に漁民の生活に影響が出るだけではなく、仲買人、卸業者、飲食店から一般家庭まで、すべてのサプライチェーンに影を落とすことになるのだ、と述べました。
農民が語る、石炭火力発電所のための土地収用被害
農民のスルミさんは、土地収用の被害について憤りを示しました。住民らは抗議活動を行い、これまでインドネシア政府はもちろんJICA宛にも要請書を提出してきました。それらへの回答は一切得られず、建設予定地の土地収用が始まったのです。
スルミさんはそれによって土地を失った、すなわち生活の糧を失った多くのインドラマユ住民の一人です。それまで300畑(約0.5ヘクタール)×2の土地を借りて耕作をし、年間2000万ルピアほどの収入を得ていました。高値で取引される赤たまねぎを植えた時にはその収入は年1億ルピア近くでした。しかし建設用地の範囲に適用されてしまいもう以前のように耕作することができない、何度も「悔しい」と静かに繰り返しました。
電力はすでに余剰がある
3人の住民らの話の後に、インドネシア環境フォーラムWALHIのワヒュ・ウィディアントさんから、さらに詳しい現状についての話がありました。
参加者からの質問の中に、「なぜ新規に建設をするのか」というものがありました。提示された資料では、ジャワ=バリ系統ですでに31%の余剰発電量があることが示されています(2016-2025年電力供給事業計画(RUPTL)参照)。
それなのになぜ新たに建設をするのか。インドネシア大統領の意見は、今後のGDP成長率を見込んで新たに電力が必要になるから、となっています。
ウィディアントさんは、昨年締結されたパリ協定について言及し、経済的な成長と環境・人への配慮の重要性とそれを順守する意義について述べました。また、空間計画や土地収用など政府による様々な違法行為についても述べ、そのような実態の建設計画に、円借款を募ろうとしている日本政府・JICAに対して早急な融資検討の見直しを求めました。
関係省庁、JICA、JBICへの要請書提出
住民ら3人とウィディアントさんは、今回の来日中に、外務省、JICA、財務省、経産省(郵送)、JBICに新たな要請書を提出しました。
先述のように、世界は今パリ協定の内容実施に向け動き出しています。そんな中、いくら高効率を謳っても温暖化の主原因であるCO2を大量に排出する石炭火力発電所を建設する計画に対して融資を行うということは、まさにこの流れに逆行しているものといえるでしょう。その影響は、近隣住民はもちろん、世界中に及ぶということは言うまでもありません。その点についてもう一度よく考え、融資を中止すべきである、という文言です。
さらにその要請書には、世界47ヵ国268団体からの署名も添えられました。提出後も署名の数は増えており、問題の重要性がよくわかります。
日本のわたしたちはどのようにして向き合うべきなのか
彼らがはるばるインドネシアからやってきて、自らの声で現状の危急性を訴えたという事実に、わたしたちはどのようにして向き合うべきなのか。
「日本の人々が払っている税金でインドラマユの環境を破壊すること、そしてそれによってそこの人々の未来が失われることに同意しますか?」
サルジャニさんが最後に添えた言葉が胸に刺さります。
参考資料
FoE Japan 『インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業』(アクセス日2017/3/24)
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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