はじめまして。2015度の気候ネットワーク・インターン生のY.Aと申します。
私はCSOラーニング制度を通じて、気候ネットワークで温暖化防止教育事業「こどもエコライフチャレンジ」を中心に活動に参加させて頂いています。CSOラーニング制度とは、損保ジャパン日本興亜環境財団が環境系NPO/NGOと学生をマッチングして長期インターンシップの場を提供する制度です。
さて、8月5日に京都事務所で行なわれた、気候ネットワーク・ボランティアによる「国際交渉勉強会”Road to Paris”」に初参加してきました。決められたテーマで2人の担当者さんが発表し、討議するという形式です。今回はその内容を紹介します。
京都議定書について
まず、インターン生の津田さんの発表。「京都議定書」というテーマで、初心者でも理解できるように説明してくれました。
地球温暖化が問題になっているので対策しなければならない→温暖化対策の大まかな方向性を共有するために枠組条約を作ろう→国連気候変動枠組条約の採択・発効→次に具体的な目標や方法を議定書で定めよう→京都議定書の採択・発効、という流れをはじめに詳しい図で示してくれました。
京都議定書とは
特徴として「先進国の排出削減義務目標」・「京都メカニズム」・「森林吸収」があります。「先進国の排出削減義務目標」について、先進国全体で、1990年比で2008年から2012年の5年間に温室効果ガスを5%削減という数値目標を掲げました。日本は-6%、アメリカは-7%、EUは全体で-8%という目標だったのですが、同じEU内でもドイツだと-21%、フランスだと+-0%、ギリシャだと+25%とかなりバラつきがあるのが印象的でした(EU各国の経済発展などを考慮し、公平にしようという意識が強かったからだそうです。ちなみに、現在のEU加盟国数は28ヶ国ですが、京都議定書採択当時は15ヶ国でした)。
京都議定書の抜け穴
気になったのは「京都メカニズム」関してです。「京都メカニズム」には(1)排出量取引、(2)共同実施、(3)クリーン開発メカニズム(CDM)の3種類あり、自国の数値目標達成のために他国との間で温室効果ガスの排出枠を売買したり、他国で実施した対策による削減分を自国の削減とすることができる仕組みです。この仕組みは費用対効果の大きなところからの削減を促し、世界全体として低コストで温暖化対策を実施するには効果的な方法ですが、国内での対策を緩めることにつながるため「京都議定書の抜け穴」と批判されています。このような「抜け穴」が出来てしまった理由は、(1)温室効果ガスの排出量に関して、始めに高い目標を設定してしまったから、(2)このような帳尻合わせがあると京都議定書に消極的な国からも合意を得やすいから、だそうです。
京都議定書第1約束期間(2008~2012年)の結果は、世界全体で見ると目標が達成され、日本でも目標の-6%を上回る-8.4%でした。しかし日本の場合、京都メカニズムや森林吸収を含めないと、+1.4%になるそうです。ここだけ見ていると、地球温暖化を食い止めようという目標は上辺だけで、約束を遵守するために(←約束の遵守に拘束力があるところに、京都議定書の意義があります)数値稼ぎをしているように思えてしまいます…。パリ合意では、もっと改善してほしいです。
今年のパリ合意に向けて
教訓として津田さんは、京都議定書では先進国のみでアメリカは離脱していたので、全ての国の参加が必要だとおっしゃっていました。ただし「参加」という言葉の本質を間違えてはいけないそうです(低い努力目標での全ての「参加」は実効的とは言えない、など)。この辺りはややこしくて混乱してしまいましたが、全体の話は大まかに掴めました。
津田さんの発表は、レジュメが書き込み式になっていたり、他の人の発言の場を設けたりと工夫がされていて、分かりやすい発表だったと思います。
エネルギーミックスについて
次に、インターン生の廣田さんの発表。エネルギーミックスを切り口にしたテーマでした。エネルギーミックスとは様々な発電設備の特性を踏まえ、経済性・環境性・供給安定性など各観点から電源構成を最適化することを指すとされています。
政府による電源構成案
今年6月1日の総合資源エネルギー委員会での大筋合意や後の正式決定された文面を見ると、二酸化炭素排出抑制のためには再生可能エネルギーを拡大し石炭火力を抑制することが必要であり、コスト削減のためには再生可能エネルギーを抑制し石炭火力を拡大する必要があると述べられています。また、政府は原発の安全性に疑問を持つ世論に配慮して震災前よりは依存度を少し減らしつつ、その運転延長を織り込んだりしています。
様々な“反原発”の立場
エネルギー政策については様々な見解があります。廣田さんが例としてあげたのは、長期的にみれば反原発・再生可能エネルギー推進は正しいが、資源の可採年数や土地有効利用の観点から反原発・火力推進を唱える木本氏の主張でした。
また、ムラー氏(米カリフォルニア大学教授)は、反原発・天然ガス推進を主張しています。天然ガスはアメリカでは日本に比べてコストが低いからだそうです。
廣田さんは、このまま原発に頼るのはよくないし、天然ガスなどに移行していくのがよいのでは?とムラー氏の意見を推されました。
一方、気候ネットワークは脱原発と温暖化対策の両立という立場から、自然エネルギー中心の社会を目指しています。自然エネルギーは安全性、環境性だけでなく、運用コストや雇用創出、地域活性化といった経済性の面からも、優位なエネルギーであると主張しています。
よりよい発表のためには
質疑応答では気候ネットワークも含め色々な説と比較して、具体的な数量を示すとさらに良かったのでは、という意見がありました。例えば、東日本大震災前の時点において、原発の占める割合は電力だと3割だが、一次エネルギーで見ると1割程度であることを考慮すると、原発によるエネルギーの必要性も変わってくるかと思います。
また、それぞれ異なる多様な主張がある中で、客観的でバランスの良い資料集めをするにはどうしたら良いか?という質問もありました。これに対しては、どうしても主観的になる、厳密な意味で「客観的でバランスのとれた意見」はなかなかない(ある人が、ある特定の意見を「客観的でバランスの
とれた意見だ」と評価すること自体も主観的なこと)、とにかくたくさんの異なる主観的な意見を見聞きし、それらを比較し、自分の頭で考える必要があるのではないか、という議論がありました。
廣田さんの発表は、今まで全然知らなかった説も聞けて、勉強になったので良かったと思います。
みなさんもぜひ勉強会にご参加を
今回初めてボランティア勉強会に参加させて頂いて、有意義な時間が過ごせました。このブログを読んで、少しでも興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたら、ぜひボランティア勉強会に参加してみてください!
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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