京都事務所インターン生の鈴木です。
COP20@リマ、とうとう終了しました。会議の2週目中盤には各国から閣僚が会場入り。日本からも望月環境大臣が会場入りし、日本の気候変動対策についてスピーチをしていましたが、ニュースになりましたでしょうか?
さて、今回は現地報告の締めくくりとして「国際交渉におけるNGOの役割とは?」というテーマをインターンの視点から書いてみたいと思います。
COP20の参加者数は?~NGOも多数参加~
今回のCOP20の参加者数は、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局によれば、11,185人にのぼっているそうです。内訳は、政府関係者が6,291名、国連関係者が245名、専門機関等が197名、政府間組織が439名、NGOが3,104名、メディアが904名となっていて、NGOは政府関係者に次ぐ規模の参加者を記録しています。
参考:UNFCCC: “List of Participants(参加者のリスト)"
NGOと言っても多種多様で、環境保護関連だけでなく、研究者、産業界など様々なNGOがCOPに参加しています。気候ネットワークのインターンとして、現地入りして感じた国際交渉におけるNGOの役割をまとめてみたいと思います。
国際交渉におけるNGOの役割とは?
(1)会議で発言する
まず、限られた会議ではありますが、NGOや市民社会には国際交渉の場面で発言をすることができます。写真のように「Civil Society(市民社会)」という席がUNEP(国連環境計画)、UNICEF(国連児童基金)などの席と並列して配置してあり、オブザーバー(傍聴者)でありながら、機会が与えられたら自分たちの意見を言うことができます。
今回のCOP20では、「Ministerial Dialogue on the Durban Platform for Enhanced Action(強化された行動のためのダーバン・プラットフォームにおける閣僚級対話)」、「Ministerial Dialogue on Climate Finance(気候資金における閣僚級対話)」などの閣僚が集まる場でも自分たちの団体の主張を伝える場が用意されており、発言という直接的な方法で締約国にメッセージを伝えることができます。
(2)専門知識をフォローし、分かりやすく市民へ情報発信をする
COPでは、気候変動対策を議論しますが、その会議では専門的な用語が多く飛び交います。「ADP(ダーバン・プラットフォーム特別作業部会)」「TEMs(技術専門家会合)」「Adaptation(適応)」「Mitigation(緩和)」などの用語をみなさんご存知でしょうか?わたしも含めて、普段生活している分には聞き慣れない言葉で、その意味が分かる人はほとんどいないのではないでしょうか?
NGOとして会議に参加することは、気候変動分野の「専門家」として国際交渉の最前線を絶えずフォローすることが求められます。一般市民が理解しにくい専門的な知識をフォローし、それをわかりやすく市民に発信する役割があると思います。
気候ネットワークでも、COP20の国際交渉の様子を伝える会議場通信”Kiko”を発信しています。ぜひ読んでみて下さい!
(3)メディアに情報提供する
国内に国際交渉の現状を伝え、気候変動政策を後押しする流れをつくるために、NGOはメディア記者への情報提供も行っています。メディアを通して日々の交渉の中で重要なポイントやNGOのメッセージをより多くの人に伝えることで、影響力を行使します。
例えば、気候ネットワークも参加している、気候変動NGOの国際的なネットワーク「Climate Action Network(CAN: 気候行動ネットワーク)」は毎日のように会議場内で記者会見を開いています。
CANの記者会見はウェブサイトで視聴できます(英語です)。例えば、12月3日の記者会見では、冒頭のスピーカーから、去年のCOP19で日本政府が温室効果ガス排出削減目標を引き下げたことをさして「backsliding(後退)」と指摘しているのを聞くことができます。
例えば次の記事は、COP20に関連して、気候ネットワークが登場している報道です。ぜひご覧ください。
(4)パフォーマンスをして、会議参加者に訴えかける
パフォーマンスをして、会議参加者に訴えかけることもNGOのひとつの役割です。例えば、COP20会場の広場では毎日、CAN Internationalが「本日の化石賞(Fossil of the Day Award)」というパフォーマンスを行っています。
これは日々の国際交渉において、一番、気候変動対策に後ろ向きだった国を皮肉を込めて表彰する、不名誉な賞です。日本も不名誉なことにCOP20期間中に2度の「化石賞」をもらいました。例えば、最初の化石賞は、温暖化対策の「気候資金」を使って、途上国で温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電を支援していることが受賞理由でした。
このようなパフォーマンスを行うと、多くの聴衆が集まります。この聴衆がSNSなどを通じて情報発信をする、メディアの報道に取り上げられる、新たな行動を起こすなどで各国政府にその情報が入り、影響を与える可能性も少なからずあります。
事実、緑の気候基金(Green Climate Fund)に対して資金拠出の意思表明をしていなかったオーストラリア、ベルギーなどが12月1日に「本日の化石賞」として表彰された後、9日には両国とも資金拠出を表明しています。もちろん両国の行動のすべてがNGOによるパフォーマンスによる結果とは断定できませんが、影響を与えている可能性も否定できないのではないでしょうか。
- CAN-International (12月1日)“Missing Money for the Green Climate Fund earns first Fossil from Lima Climate Talks(「緑の気候基金」への拠出表明の無い国がリマで化石賞を授与される)”
- Green Climate Fund:Press Release (12月9日)“Green Climate Fund hits USD 10 billion threshold(緑の気候基金が100億ドルを突破)”
(5)政府代表団に意見を伝える
気候変動対策が少しでも前に進むように、NGOとして日本政府代表団に意見を述べる場があります。現在の交渉において、日本はどのように行動すべきなのか、気候変動問題を解決するために日本はどのような政策を講ずべきなのかなどを直接伝えます。
COP20日本政府代表団のツイートより
12日、NGOとの2回目の意見交換会を開催しました。 pic.twitter.com/MFZkdEmrFo
— COP20日本政府代表団 (@COP20_MofaJapan) 2014, 12月 13
各国の前向きな行動を引き出し、気候変動問題の解決へ
以上の5点がCOP20にインターンとして参加して感じたNGOの役割です。その他にも色々と役割があると思いますが、すべての役割に共通していることはNGOが行動することによって、少しでも各締約国(日本政府も含め)が国際交渉において前向きに行動し、気候変動問題が解決に向かうことです。
以上で、3回続きましたCOP20@リマのインターン活動報告を終わります。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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