みなさん、こんにちは!
気候ネットワークでインターンをしています、大同です。
2025年11月、ブラジルで開催されていたCOP30が閉幕しました。
今年のCOP30は、「Nature COP」「Indigenous COP」「Implementation COP」「Forest COP」など、様々な別名でも注目されていました。
今回は、その中でもAFOLU(農業・林業およびその他の土地利用)に関連するCOP30でのイベントや出来事をまとめました。
TFFFの発足
COP30が開催される直前、 2025年 11月6日、7日に行われた世界リーダーズ・サミット(首脳級会合)で、「Tropical Forests Forever Facility(TFFF)」の立ち上げが宣言されました。これは、COP28でブラジルが構想を発表したところから始まりました。その後、FCLP1というイニシアティブによって主導され、実現したメカニズムです。
TFFFとは?
TFFFは熱帯林の損失を止め、さらに増やす(ネイチャーポジティブを実現する)ためのファイナンスモデルです。
国などの公的資金と、企業などからの民間資金を集めた資金を利用します。
目標総額は125億米ドル(約1兆9700億円)で、そのうち公的資金25億米ドル(約3900億円)と、民間資金100億米ドル(約1兆5700億円)という、1:4の比率の構造を目指しています。
対象国は、衛星によるモニタリング技術を使用することによって、樹冠被覆率や森林破壊、森林劣化の状況を確認され、その回復度合いの成果に応じて、決められた金額を受け取ることができます。
具体的な指標として、熱帯林国は森林破壊率0.5%以下という数字を基準として、森林保全・回復に対して約4ドル/ ha を受領することができる予定となっています。さらに、今回の決定の大きなポイントとして、熱帯林国は、支払いの20%以上を先住民族やそのローカルコミュニティに配分することが含まれました。
各国の資金拠出の程度は?
COP30が終了した時点でTFFFに賛同した国は64ヵ国で、日本もそのひとつです。しかし、今回のCOPの期間中に決定した各国の資金拠出の金額は、上記の目標に届くものではありませんでした。
実際の資金目標1250億ドルに対し、今回決まったのは、僅か67億米ドルにとどまりました。
実際に資金拠出を表明した国や団体は次の通りです。
日本は宣言には賛同したもののプレッジに対しては明確な金額は発表しませんでした。
今回のCOP30で発足したばかりの仕組みであり、今後、各国や企業などがどのように対応していくのかが注目されています。
| 資金拠出を表明した国 | 金額 |
| ブラジル | 10億米ドル |
| インドネシア | 10億米ドル |
| ノルウェー | 今後10年間で30億米ドル |
| ドイツ | 今後10年間で10億ユーロ |
| フランス | 500万ユーロ(条件付き) |
| オランダ | 500万米ドル(事務局向け) |
| ポルトガル | 100万米ドル |
| Minderoo Foundation (オーストラリア慈善団体) | 1000万ドルの投資 |
TFFF の特徴とは?
大きな特徴としては3つあげられます。
➀ 成果報酬型である
TFFFは、上述の通り、はじめに資金を提供するのではなく、科学的に測定された成果に基づいて資金が渡されます。これまでのカーボンクレジットやREDD+2などのように、炭素量に基づく仕組みではなく、森林の樹木の変化に基づく、いわば生態学に基づいて、その成果を測ります。また、REDD+は森林伐採や劣化の防止のみを対象としていましたが、こちらでは、保全して増加した森林面積に対しても、資金が支払われるほか、減少・劣化させてしまった場合には、所定の金額が差し引かれます。
② 民間の投資を組み合わせる新しいファイナンスモデル
TFFFは、公的資金だけに頼るのではなく、民間投資や金融市場からのリターンを活用しているため、基金を永続的に運用できるような体制を目指しています。一方で、投資のガイドラインについては、厳格なESG投資基準を採用するなど、不適切な投資が起こらないような対応が求められています。
③ 先住民族や地域社会の支援も枠組みに組み込まれている
上述したように、支払われた資金の20%はその地域の先住民族に支払われる仕組みになっています。COP30では、多くの先住民の方が参加されていたり、会場周辺で声をあげていたりしました。森林は、私たちが利用する資源、そして炭素を吸収する資源としてだけでなく、地域コミュニティ、そしてそこに住む先住民の大切な生活の場所でもあります。今回の決定は、排出量の減少、森林の回復だけでなく、地域社会の支援も含まれたものとなりました。
グローバル・ムラチオ決定
COP30の最終段階で採択された一連の決定文書、Belém Political Package(ベレン・ポリティカル・パッケージ)の中心をしめるのが、グローバル・ムラチオ決定です。「ムラチオ」とはポルトガル語で共同作業、協働を意味します。
最終的に、森林に関する決定事項として、生態系の保全・保護・回復の重要性が協調され、2030年までに森林の減少・劣化を停止させ、好転させる取り組みの強化という内容が盛り込まれました。
しかし、草案の段階では記載のあった、「化石燃料脱却のロードマップ」と「森林破壊をとめて逆転させるためのロードマップ」の策定については合意に至らず、最終的には合意文書に盛り込まれることはありませんでした。
これらは、次回のCOP31以降に残された課題となります。議長国であるブラジルは、COPの枠外で議論を重ね、ロードマップ作成を進めていく旨を約束しました。
日本は新たに2つのイニシアティブを承認
日本政府は、TFFFに加えて、COP30の開催期間中に2つのイニシアティブに賛同し、承認しました。
「統合的火災管理及び山火事レジリエンスに関する行動要請」
ブラジル政府が主導する国際イニシアティブで、日本を含む49ヵ国と4つの国連機関が参加を表明しました。
目的は、火災管理の拡大を通して、山火事リスクを軽減することと、回復を強化することです。近年、気候変動の影響で各地で発生しやすくなっている山火事に対して、国家間での協力・ネットワークの強化の重要性が述べられています。この行動要請を通して、これまでの火災の抑制中心の対応から、生態学的な観点からの火災の予防、管理が期待されます。
「責任ある木造建築の原則」
COP27で発足したイニシアティブ、FCLPを通じてできた枠組みで、日本を含む11ヵ国と300を超える企業が参加を表明しました。
森林から建築まで、環境に責任をもって木材を利用することを目的に設立され、気候・自然・人々への利益の最大化、持続可能な森林経営、建築環境の変革、活力あるバイオマスエコノミーの実現を目指すものです。
ここでは下記のように5つの視点から取り組むべきことが述べられており、上流から下流まで、あらゆるセクターが持続可能な木材の利用を促進することが求められています。
- 既存住宅の長寿命化
- 上流から下流までのライフサイクル全体の排出量の算定
- 持続可能な森林経営の確保
- 木材の炭素貯蔵ポテンシャルの最大化
- 木造建築バイオエコノミーの促進(あらゆるステークホルダーに情報、教育、研修を提供する)
まだ決まったばかりの枠組みであるため、これから日本や企業がどのように対応していくのかについては、今後注目して見ていきたいひとつです。
TNFDの開示に関する基準の作成が進む
最後はCOP外での動きとはなりますが、Nature COPといわれたこともあり、COP30に合わせて新たな進展が見られました。
ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)がTNFDを基盤とする動きを発表しました。TNFDとは、企業が自然資本や生物多様性への依存・影響・リスク・機会を評価し、財務情報として開示するための国際的な枠組みです。
今回の発表では、現在の算定フレームワークに含まれていない「自然関連リスク・機会」について新たな開示要件を作成するプロセスを進める計画が示されています。
この作業は、2026年10月にアルメニアで開催予定の生物多様性条約COP17までに公開草案を出すという目標となっています。
おわりに
今回は、私が専攻している森林科学に関連したテーマでCOP30を振り返りましたが、いかがでしたでしょうか?
交渉内外で森林に関する様々な動きが見られ、TFFFのような大きな決定もなされました。
また、新たなイニシアティブへの参加を表明し、森林面積の多い日本における国内の動きも注目されます。
このCOP30をきっかけに、気候変動と生物多様性の2分野がより連携しながら、グローバルの規模での地球環境問題の解決が進んでいくのではないかと、今後の動きにも注目していきたいと思います。
脚注
- COP27の森林・気候のリーダーズサミットにて立ち上がった、森林気候リーダーズ・パートナーシップ(Forest and Climate Leaders’ Partnership)。2030年までに森林の消失と土地の劣化を食い止め、その状況を好転させることを目的としている ↩︎
- 森林減少・劣化の抑制により温室効果ガス排出量を減少させた場合や、保全により森林の炭素蓄積量を維持、増加させた場合に、先進国が途上国への経済的支援(資金支援等)を実施するメカニズム ↩︎
参考
グローバル・ムチラオ決定
https://unfccc.int/sites/default/files/resource/cma2025_L24_adv.pdf
COP30議長国ウェブサイト:Over USD 5.5 billion Announced for Tropical Forest Forever Facility as 53 Countries Endorse the Historic TFFF Launch Declaration
https://cop30.br/en/news-about-cop30/over-usd-5-5-billion-announced-for-tropical-forest-forever-facility-as-53-countries-endorse-the-historic-tfff-launch-declaration
農林水産省ウェブサイト:「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)」の結果(農林水産省関係)について
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/251128.html
Carbon Brief:COP30: Key outcomes for food, forests, land and nature at the UN climate talks in Belém
https://www.carbonbrief.org/cop30-key-outcomes-for-food-forests-land-and-nature-at-the-un-climate-talks-in-belem/
オルタナ:COP30は「森林COP」: ネイチャーポジティブ経済の時代の幕開けに
https://www.alterna.co.jp/164215/
この記事を書いた人

- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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