こんにちは、東京事務所インターンの三笠です。
去る8月28日に衆議院議員会館にて第三回野党エネルギー政策実務者会議が開催され、私も傍聴で参加することができました。
この会議は、野党各党のエネルギー担当議員が集まり、各党の共通項を見出し、提言をまとめていくために開催されているとのことです。民主党国会対策副委員長の田嶋要議員、日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会責任者の笠井亮議員、結いの党政策調査会長代理の小池政就議員、社民党副党首の福島みずほ議員らが出席されていました。
今回、はじめての外部ゲストとして気候ネットワークが招かれ、理事の平田仁子さんから「忘れ去られた気候変動(地球温暖化)問題」と題して、脱原発と地球温暖化対策との両立を含めた今後のエネルギー政策の在り方について発表されました。そして、その内容に基づき議論が交わされていましたのでご報告したいと思います。
気候変動対策とその遅れについて
冒頭、各出席者から挨拶があった後、平田さんから現在の気候変動対策の内容及び問題点について報告がありました。
「忘れられた気候変動問題」とのタイトルからもわかるように、現在当面のCO2削減目標は掲げられておらず、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づく地球温暖化対策計画も未だ作成されておらず、気候変動(地球温暖化)対策として企業や個人が取り組む制度的枠組みが存在しないとのことです。
そして、3・11後の今、「原発を再稼働しない場合に被る経済的ダメージは甚大」「原発停止による化石燃料調達費増加額は3兆円」「石炭は低コスト化石燃料」「再生エネルギー投資はコストパフォーマンスが悪い」等の誤った言説があり、それが気候変動対策について新たな視点を取り入れる際の障害となっているようです。
気候変動が進行するにつれて、海面上昇による沿岸部での高潮被害、熱波による都市部での疫病蔓延、気温上昇と干ばつによる食料の世界規模での争奪、水資源不足と農業生産減少による農村部への経済的打撃、気温上昇による沿岸海域における海洋生態系の損失等のリスクが顕在化してくるため、気候変動対策は喫緊の課題と言えます。
どれもわたしたちの生活に密接に関連してくる問題なので、興味がないとか知らないではすまされない重要な問題だと思いました。
脱原発と地球温暖化対策の両立について
原発は気候変動対策の一環として推進されてきた側面があります。京都議定書目標達成計画(2008年3月改正)の中で、「発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電については、地球温暖化対策推進の上で極めて重要な位置を占めるものである。」とされ、原発はCO2削減に寄与する発電設備と位置付けられています。
しかし、以下のデータが示す通り原発設備容量とCO2排出量は正の相関関係(下図参照)にあり、原発推進→CO2削減→地球温暖化対策との因果関係が存在すると考えるのは早計です。
むしろ、原発に依存する政策こそが気候変動対策を遅らせる主たる原因となっているのが現状です。つまり、原発を推進することにより再生可能エネルギーの促進や省エネ対策は限定的なものとなっているのです。
原発依存から脱却し、気候変動対策をすすめていくことが肝心であるにもかかわらず、政府は気候変動対策を目的に原発を推進しています。これは循環論法であるとともに、気候変動対策を原発再稼働の口実にしているにすぎません。
石炭火力発電の問題点
気候変動対策として避けて通れないのは石炭火力発電問題です。なぜなら、石炭火力発電は天然ガス発電と比較してCO2排出量が約2倍もあるからです。
それにもかかわらず、電力会社は石炭火力発電を推進すべく火力電源の入札募集数を増加させています。
石炭火力発電を推進した場合、長期にわたる大量のCO2排出を固定することとなります。その結果2050年に温室効果ガス80%削減目標(閣議決定)達成が困難となります。
石炭火力発電を推進することは大量のCO2を排出することから気候変動対策として望ましくありません。アメリカではオバマ大統領が国内の既存・新規の石炭火力発電所のCO2規制及び石炭火力の諸外国への輸出停止を決定しています。北欧5か国、イギリス、オランダも同様の方針を決定しています。
日本の石炭火力発電の推進政策は先進国の中でも特異なケースで世界の潮流に逆行しているといえます。
鋭い質疑応答にも。
報告終了後、平田さんは出席各議員からの質問を受けて気候ネットワークとしての立場からの意見を理路整然と回答していました。
ドイツが脱原発を宣言したにもかかわらず石炭火力発電を推進していることなども話題になりました。ドイツは産炭国であることから石炭資源が豊富であることも関係しているようです。これに対して、平田さんはドイツではCO2を40%削減するという目標も下げていないことや、市民運動が非常に盛り上がり、気候変動問題に対しての意識も変わっていないことなどを指摘していました。
国会議員からの鋭く、かつ、厳しい質問に対して的確に回答している平田さんをみて、平田さんの環境問題に対する知識、見識の深さを実感しました。
この記事を書いた人
- 気候ネットワークに所属されていた方々、インターンの方々が執筆者となっております。
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