2004年12月18日
気候ネットワ−ク
京都議定書の発効を2ヶ月前に控えて、議定書の発効を歓迎する声がこだまするなかで、COP10の成果は、米国と産油国の強い妨害によって、小さな前進にとどまった。最も緊急の課題であるLDC(後発開発途上国)基金問題はCOP11に先送りされ、途上国に大きな失望感を残して閉幕した。このように、COP10での前進は乏しかったが、将来世代に安全な地球に気候を安定化させるために、私たちは、ここでの進展も踏まえ、京都議定書をしっかりと守り、あらゆる取組を進めていかなければならない。
COP10の焦点は、排出削減の将来枠組みについてCOPに位置づけられたセミナーの開催を通して具体的一歩を進めることと、途上国の適応対策の具体化にあった。
セミナーについては、最終日の翌日にかかる長い交渉の結果、2005年5月に開催し、議事録を締約国に提供することになったが、次期約束期間の約束の交渉を開くものではないことに言及したもので、COPへの報告も盛り込まれなかった。
途上国の適応問題については、ブエノスアイレス適応作業計画を策定することになったが、まだまだ気候変動枠組条約や京都議定書に設けた基金の活用の具体化には遠い。気候変動の悪影響を最も強く受けているLDC(後発開発途上国)基金の優先的取扱いが途上国から強く求められたが、なお基準が不十分とする先進国との間の対立がとけず、次回に持ち越しとなった。途上国の適応問題、とりわけ後発開発途上国について早期の対応は緊急の課題である。
殆どの国が京都議定書の発効を歓迎し、気候変動問題は国際・国内での大きな政治課題となってきたこと、途上国における適応のための資金と技術の移転の具体化が急務であること、同時に、緩和なくして適応も困難であり、緩和が不可欠であることを強調し、時間を無駄にできないことに言及してきた。しかしながら、最後の全体会合でも、これらの基本的問題について議論の応酬が続き、わずかの前進しか得られなかったのは、京都議定書の死をなお目論む米国が将来枠組みについての国際社会の議論を前進させることに抵抗し続け、サウジアラビアなど産油国が補償を要求して交渉を妨害し続けたためである。今後も、こうした障害のもとで、世界のどの国でも既に現実の脅威となっている温暖化問題への国際交渉が続き、これを乗り越えていかなければならない。
しかしながら、COP10において、国際世論の流れは、京都議定書に定める第1約束期間の目標を確実に実施すべきこと、京都議定書の上に、2012年以降の次期約束期間の目標などの枠組みを早期に構築し、資金と技術を支援し、CDMなどを活用して、途上国での取組を推進していこうとすることにあることがより明確になった。北極海でこれまでの予測の2倍の速度で温暖化が進行し、北極に住む人々の生活を脅かしている。これは、地球規模の将来の羅針盤である。日本は今回のCOPでの膠着した状況を打開するために十分貢献したとはいえない。京都議定書の議長国として期待されている役割は大きい。そのために、京都議定書の目標を達成し、次期約束期間にはさらに削減を実施するために、炭素税の導入など社会的経済的基盤を直ちに整え、京都議定書の上に気温上昇を2℃未満に抑制していくための将来枠組みの構築に貢献すべきである。